「時間と空間の彼方」 |
ヴァン・ヴォークト短編集 |
創元推理文庫 |
1970年発行 1952(1942~48)年 |
◆偉大なエンジン
落ちていたエンジン、それを飛行機に積み込むがすぐに奪われてしまう。
それは宇宙船のエンジン。主人公はさらわれて金星へ。
戦争を知らない世界を築く為に、秘密裏に移民を運んでいた。
まあ、本当の金星は灼熱地獄だと、この頃は知られていなかったわけで。
別に金星以外でも、ドームでもかまわないからいいのだけれどね。
◆偉大な裁判官
裁判官の悪口を言っただけで死刑判決。そんな世界で死刑判決を受けた主人公エアードは、神経は伝送による人格移動を発明。それにより裁判官と入れ替わる。死刑執行の日、エアードの身体で死んだのは裁判官であった。
◆永遠の秘密
ナチスの思い上がりと破滅の原因は、ケンルーベ教授の発明した装置だった。
第2次大戦前のドイツ、原料物資を他の天体から採掘できる機械。兵器転用も可能だ。
だが、ケンルーベ教授は粛清された兄の復讐を図っていたのだった。
いくつも作り上げた設備は使えない状態となった時、ナチスはすでに引き返せない状況にあった。
◆平和樹
遥か過去、宇宙船の事故で地球に落ちたアイビス。その胞子は恐竜たちの絶滅に一役買い、その後ほとんどは回収されたが、一つだけ行方不明だった。そしてアイビスは目覚めにより第3次世界大戦は終結した。
◆第二の解決法
〈個々のアイデアや発明は、その発明者でなくてもいずれは発見されるものである。だが、そのタイミングにより歴史が変わることはある〉
エズオルは人間の心を読む。だから、彼らは自分たちを凶暴な野生動物と見せかけた。
その秘密を知った人間を殺そうとするが、共生の道があることを見つける。
◆フィルム・ライブラリー
プロジェクターが50年後のプロジェクターと何かしら繋がりを持ち、フィルムが入れ替わった。
50年後の記録フィルムを当事者は特撮と思い込む。
真相に気付きかけた理科教師はプロジェクターを分解するが、それにより繋がりは切られてしまった。
50年で記録媒体が変化することを予測できなかったか?いや、ヴォークトの確信犯的ジョークだろう。
フィルムを情報と置き換えれば、今の時代でも通用するだろう。
◆避難所
特殊な太陽放射により血と生命エネルギーを必要とするようになったドリーグ人。
銀河種族から身を隠しながら宇宙を放浪し獲物を探している。
そしてドリーグ人のジールとマーラは地球を発見。銀河種族の監視員さえ始末すれば地球は彼らのものだ。
そのために利用された地球人の新聞記者ウィリアム・リー。監視員の娘パトリシアとドリーグ人の圧倒的存在になすすべもなく操られるリーだったが、実は彼こそは地球人に成りすましていた銀河種族のエリートだった。
これは、宇宙に散らばったドリーグ人を一網打尽にする為の罠だったのだ。