「砂の王国(上下)」荻原浩 2010講談社
『小説現代』2008年03月号~2010年01月号、加筆修正
ホームレスから始めてホームレスに終わる。
展開は面白いわ。
佐藤正午と百田尚樹の良い所取りな感じかな。
荻原浩だから何でもありだろうとは思いながらも、競馬は勝つはずはないと思っていたよ。すっからかんになって、もっと違う形で何か助けが入るのかと思っていた。なのに・・・うわお。
出会い発見、幼児期の体験から意識下にあった宗教(ホームレスへの転落も(その前の離婚(届)も)実はこれによる定めだったりするかも)
中村の正体と彼の望みは?思い至らない主人公。
「木島は僕をどうしたいの?」P286
失敗の原因はそのあたりの確認と、コミュニケーションの不足か。
嘘やごまかしが破綻の原因になるとわかっていながら、それをしてしまうのは酒のせいか。
求めるものと覚悟の違いによる分断
P346 組織に不要となっているのは自分だとの気付き
読者として、それに驚きながら、この時点から組織側の見方をして、主人公を要らないものと認識し始めた。
ヒロインに助けられるのかと思ったら、彼女はヒロインではなく素晴らしい裏切り。
主人公がヒーローじゃないのだから当然か。
これはもう演出次第でサイコホラーだよ。
(登場人物のほとんどが何かしらのサイコな傷を持つ)
P388 終盤になってやっと、主人公の目的がはっきりする。
塔を作って、その壊れるところが見たかった。
造ることではなく、壊すことが目的だった。なるほど。
それは叶えられるのか・・・小銭探しは目標へ向けた前向きな行動なのか、それとも諦め?
いやたぶん諦めてはいない。