寝転んで空を見る

山高きを厭わず 海深きを厭わない

山高ければなり 山尖りて嶮しければなり

2016年12月18日 | 2016北アルプスの旅
水を補給して少し登ると、槍がその姿を見せてくれた。

ここからの急登は半端じゃないが、ここまで来て槍に登らずに帰る訳には行かない。
2016年9月2日 AM8:54に撮影 


腰が辛いが槍の肩に到着。
槍ヶ岳山荘前のベンチでしばし休憩。
(椎間板がつぶれているのを感じるなぁ~)

その後、山頂へ登る。


2016年9月2日 AM11:12に撮影

槍ヶ岳山頂から南岳方面の稜線、穂高連峰を眺めつつ
『これからこの腰で、あの先に見える南岳まで行くのか・・・』と珍しくブルーな気持ちに成る。
この大好きな場所で、こんな元気の無い『俺』は、始めてだ。
因みに、映りこんでいる赤と黄色の人は俺では無い(信号か!)




山荘前のベンチに戻り、進むか戻るか思案する。
そんな俺の足元を、妙に人馴れした『イワスズメ』がウロチョロする、それを見た女性が『可愛い!』と言いながら笑顔を向けてくるが、こっちはそれど頃じゃないので、作り笑顔を返して黙殺しておく。(余裕が無いなぁ)

ここ槍ヶ岳から南岳へは、下っては上る事を4度繰り返さなければならず、以外にシンドイのだ。
槍沢から登って来た事にプラスして、この腰には正直辛い。

だがしかし、『行ける』と判断して南岳へと向かった。

そして、南岳へ無事到着。
流石に今日は腰がヤバイ。
いつもはテントを設営したら北穂や大キレットを見に行くのだが、その元気が無い。
その証拠に写真を一枚も撮っていない。(何度も来ているせいでもあるが)
ストレッチで潰れた椎間板を伸ばした後、アミノバイタルを飲んで、テントの中で夕食までゴロゴロして過ごす。

夕食は高菜のパスタ(ママー)。これは美味かった。
明日は『腰が何処まで回復するかだな』と、思いながら就寝。



2016年9月3日、南岳のキャンプ指定地で夜明け前に起床。
カロリーメイトの朝食をとった後、テントの外に出てみる。
腰は昨日の辛さが嘘の様に回復している。
%で言えば、90%!
ここで迷う!!

キレットを越えて、穂高岳山荘のキャンプ指定地まで行くか、下山するかだ。
左膝はここまで問題は無い(正座の様に限界まで曲げると、内側靭帯に軽い痛が出るだけ)
南岳から穂高岳山荘へは、経験上、腰への負担は軽いだろうと言う予測もある。
(昨日より歩行時間が短いし、キレットは手を使って登る場所が多いので腰への負担が減る)
しかし、少しずつ蓄積している腰の痛みと、その限界が短くなっている事が不安。
また、穂高岳山荘まで行き、明日エスケープする場合、涸沢へ下りて上高地への道であるザイテングラートは人が多く、事故も多い場所。それは山荘から奥穂を登り前穂から岳沢へ下りるのと大差無いので、『だったら前穂まで行っちまえ』となる自分が想像できる。

こんなあんなで一時間位悩んでいた。
結局、『余裕がある内に下山するべきだな』と判断。


南岳から最短で上高地へ下るには『あそこ』を通る事になる。

このブログで記すのは始めてとなる槍の穂先を展望する絶景ポイント『天狗原』だ。
『天狗原を通るなら』それが奥穂や前穂を断念する事の慰めになっていて、『後ろ髪を引かれる』様な思いはあまり感じなかった。(天気も良かったし)

因みに、南岳からのルートは少し危険が伴うし、時間もかかる。安全且つ楽なのは槍沢方面から。
2016年9月3日 AM8:16分撮影

実は昨日、槍沢を登って居る時『天狗池は、もう水が無い』と聞かされていた。

『あるじゃねーか!』

8月の長雨が幸いしたのかな?

しかも風が無いので、池が鏡池に。

この場所を独り占めして、ぼーっと槍を眺めていると、おっちゃんおばちゃんの4人組が到着。
『シャッター押しますよ』と声を掛けて暫し撮影会。
お礼にと、歌舞伎揚げとプチトマトを頂いた。


2016年9月3日 AM8:22分撮影

ここからはもう『ルンルン♪』だ。

槍沢ルートで、すれ違う人達に(槍を登る前に天狗原へ行く人々)『鏡池はある?』『槍は映ってる?』と聞かると『映ってますよー』と答える俺。
天狗池の絶景が見れる事を知った人達が、笑顔になる。
それがきっと、槍へ登るあの人達の力の足しにもなるのだろう。

天狗原から見た槍に元気をもらったおかげだろうか?
南岳から上高地への長い帰路は快適で、腰も昨日ほど問題なく下山できた。
『これなら奥穂&前穂へ行けばよかった』とも思うが、この絶景を見れたのだからこれで好し!だろう。

この日は、上高地で一泊キャンプ。
翌日は松本の町をぶらぶらして帰宅。

山旅を終えた。


そうそう、帰りの『あずさ特急券のきっぷ』を松本の金券ショップで購入していた所、高校生位の男の子三人が『青春18きっぷ』が買えずに困っていた。(8月で販売終了)
信号待ちをしていたところ、その子達が『どうしよう』と相談している声が聞こえたので、声をかけ、俺の『青春18きっぷ』を譲ってあげた。
彼らは三人。俺の切符が、ちょうど三回分残っていたのも何かの縁だろう。
三回分の料金を払うと言う彼らだったが、『いいよ』と格安で譲り、『楽しんできて!』と声を掛けて別れた。
彼らは木曾へ行くのだそうな(渋い良い趣味してるな!!)

良い旅を楽しんだ、俺に出合った君達は、ラッキーだったな!  


何が故に然りしか

2016年12月08日 | 2016北アルプスの旅
今年は燕岳から槍穂縦走をしようと考えていたのだが、ジョギングし過ぎて左膝がぶっ壊れる始末。
おまけに腰の調子悪いときたもんだ…。
腰はともかく、膝の調子が良くなってきた8月下旬には、長雨続き。

腰や膝に不安があるので、燕岳からの縦走は止めて置いて、槍穂縦走に予定変更。
長雨の上がった9月1日に上高地へと向かった。



予定としては、上高地から槍ヶ岳を登り、南岳→北穂→奥穂→前穂→上高地へ下山の予定。
しかし、上記の様に左膝と腰にいまだ不安があるので、様子を見ながら登る事に。(最悪、槍を登らず引き返す事も念頭に)

こういった判断(危機察知と進むか引くか)には自信があるので、まあ問題ないだろう。
大事なのは希望的観測で判断しない事。

と言う事で、ここからは、山旅の記録。


2016年9月1日。
この夏、一乗谷に行った残りの切符(青春18きっぷ)を使い始発の電車に乗り込む。
松本駅に到着したのは9時35分。
この時間だと、上高地行きのバスが松本バスターミナルから出て居るので、駅斜め向かいの『アリオ』一階のバスターミナルへ向かう。

10時15分発の上高地行きのバスに乗り込むと、なんとこのバスには『バスガイドさん』が付いていた。(今までは無かったぞ?)
車中、サングラスをして寝る気満々だった俺だが、バスガイドさんの話に聞き入って居たせいか、上高地まで1時間半ほどの乗車時間が短く感じた。
特に『波多の西瓜』と『雀脅し』は知らなかったので、大変興味深かった。

やるじゃんアルピコ交通!(でも何を言ってるか理解できない外国人には、ストレスだったろう・・・)

12時5分に上高地到着。
ここから槍沢キャンプ地(ババ平)まで歩いていく。
地図上だと5時間半程度の道のりだが、それでは日が暮れてしまうので、急いでスタート。
腰に爆弾があるので、トレッキングポールも早速投入。


15時過ぎに槍沢キャンプ地に到着。
まず思ったのが『いつもよりテントが少ない』。
次に気が付いたのは『水場が変わってる事』蛇口とシンクが設置されてるー!
そして驚いたのは、『あのトイレが綺麗で大きくなってるー!』しかも男女別!!
『女性登山者(テント泊)に優しいテン場になったなぁ…』と感心。

さて体の調子はと言うと、初日歩いた感じは『左膝は問題なし!』だが『腰は結構重いなぁ』と言う状況。
立っていると差ほどではないのだが、椎間板が圧迫されている感じ!
腰を曲げたり座ったりすると、その後腰を伸ばすのが辛い・・・
ストレッチをして伸ばすと7割くらい回復する。
まあ、そんな感じだ。

テントを設営したら、夕食の時間。
早茹でパスタに、マ・マーの『あえるだけパスタソースぺペロンチーノ』の元をかけた物が今晩の夕食。
が、これが美味くない。
自分で作った方が美味いわ…とつぶやいて就寝。


9月2日。
夜明け前に起床し、カロリーメイトの朝食をとってからガサゴソと仕度を始める。
クッカーやバーナー、寝袋やマットをザックに詰め終る頃には外が明るくなっていた。
この日、ここで始めてテントの外に出ると人の姿は無く、みな槍を目指してスタートした後の様だ。(槍沢ロッジから登ってくる人はいるが)

腰の状態はと言うと、上高地到着時を100%とするならば、槍沢キャンプ地到着時は70%、今朝は95%と言ったところだろうか。
槍ヶ岳は登れるだろうと判断。

そこから進むか引き返すかは、槍ヶ岳で判断する事に。

テントをザックに詰め込んで、ポカリスエットを作ったらスタート。
しんどい登りが続くが、槍が見えたら元気になる自分が想像できる。
槍の穂先が見える手前の水場でキンキンに冷えた水を補給する。
『2009年の10月山旅時は雪が降って、この水場に大きななツララが出来ていたっけ…』などと思い出す。

ここで言葉を交わした御夫婦達は昨夜、槍沢のキャンプ地でワイン二本、おまけに沖縄から来た登山者と仲良くなって、焼酎を御馳走になったそうな(泡盛じゃないのか?)。
旦那さんは『二日酔になっちゃった、気持ち悪い…』と言っていた。
その人も含めここで言葉を交わした人達が『槍の穂先が見えたら、元気が出るんだよね』と言っていた事が、心に残っている。



心に浮んできたのは・・・

『やっぱり、みんなそうなんだ』という事。

改めて思う『そうじゃなきゃ山は登れない』という事だ。




                                  つづく