8月10日3:00時、テントの中で眼を醒ます。
カロリーメイトを食べながら外の様子を伺うと、昨晩程では無いが良い天気。
実は前日、南岳小屋に張り出されていた天気予報では今日の天気は「雨時々曇り」だった為に心配していたし、更に台風発生の情報も得ていたので朝の天気には、ほっとした。
日の出前、外が明るくなってきたので「大キレット」の様子を確かめに外に出る。
御来光を眺めようと人が外に出て来始めていた。
大キレットはと言うと・・・。
良いコンディションの様だ。
振り返って槍ヶ岳の方を見てみると。
南岳・中岳越しに槍が見えていた。
これならば北穂小屋の名物のテラスから「大キレットと槍の絶景」が眼に出来ると期待し、気持ちが逸るが・・・、御来光を眺める。
御来光に手を合わせ「キレット」の無事通過を祈り日々の感謝を想う。
富士山もその姿を現していた。
重い荷物をザックに押し込んでキレットへ向かうが、そこで数人の方達と話し込み時間を使ってしまった・・・(時間の浪費とは思はない)
改めて6:15分出発。
大キレット(南岳→北穂小屋)は、約3:30分のルートで毎年大小の事故が起こる。
一般登山道としては最高難度の一つとされるルート。(キレットの標高は2700m~3000m程度)
しかも俺はテント泊の重い荷物(15k以上)を背負って居る為、慎重に進む事を自分に言い聞かせ、南岳南稜の岩場を降りていく。
ガレ場の落石とスリップを注意し降りてきた。
時期もあってか、この日は人が多かったが、高齢のパーティーに遭遇したので話しかけたところ御高齢とはいえ流石に海外の山々を登られている(来月はキリマンジェロを登るそうな)ベテランの方達だった。
皆さん60歳以上で大キレットとは・・・、驚いた。
南岳を振り返って見ると良くもあんな所を降りてきたもんだと思うが、ここまではさして危険は無い。(スリップ・落石事故は起きているらしい)
この辺りからガスったり晴れたりの繰り返しで岩が濡れてきて少々嫌な感じになって来たが、まだまだ余裕。
しかしその先は幾多の命を飲み込んできた難所「長谷川ピークや飛騨泣き」が待っている。
いよいよ「大キレット」の核心部に突入する。
そして、問題の「長谷川ピーク」へ・・・↓
↑写真左側の割れ目に手や足をかけて進み、右の(飛騨側)ほぼ垂直なガケを降りていく(高さは100~200位あるだろうか?)
恐らく「長谷川ピーク」の事故は、この下りでの滑落事故が多いのではないだろうか?
垂直な壁の降りなので足掛かりが見つけづらく左足をかけるべき所で右足をかけたりすると、身動きが取れなくなってしまうので注意が必要な所だ。
残念ながらこの日はガスの為、滝谷が見れなかった。
下った所から見上げると・・・・↓
↑の写真ではHピークの全容を確認できないが落ちても200mは落ちないだろうと思う。(途中引っかかるので)
ソレでも落ちたら大怪我以上だろう・・・。
Hピークを過ぎ、A沢のコルで小休止して「飛騨泣き」へ向かう。
飛騨泣きに向けてガレ場をよじ登って居ると突然、
「ラーク!ラク!ラク!ラク!!」の声が・・・!
上を向くと俺のルート上の左2mの所を小石がパラパラと落ちてきて続いて直径25cm位の石が、「ガッ!ガツッ!」っと音を立て落ちてきた・・・。
しかし、俺は不思議な位落ち着いていて「当たらない」と、判断して壁面に体を寄せやり過ごした。
実際、当たらずに済んだが、周りの人はかなり冷や冷やしたそうだ。(あの場所では避け様にも避けれないので・・・あせってもね・・・笑)
キレットの事故はこの落石による物が一番多いのだろう。
自分が落石を落とすのだけは避けたい。落石の多いこの先は非常に気を使って登っていった。
そして「飛騨泣き」に!ここも幾多の命を飲み込んでいる難所・・・。
しかしここはステップが出来ている為に恐怖は感じない(高度感はあるが・・・、100~200m)
俺に付いて来る男性の方(50~60歳?キレットが恐いので先に進んで欲しいと言われた・・・笑)方に記念撮影のシャッターを押してもらった。
この手前の場所↓写真の方が垂直に近く高度感があり、一番スリルを感じた所だった。
この時間くらいからだったか、雨が降ったり止んだりで嫌なコンディションに成ってきた。
「飛騨泣き」の鎖やステップのあるトラバースを越え、浮石の多いルンゼを越える。
上の写真をクリックすると拡大され、『写真中央に登っている人』を確認できると思います。
こんな所を登って行くわけです。(ここは比較的安全な所でしたが、こうして見ると・・・)
大キレットのラストは北穂への岩場を直登して行くのだが、ここが一番しんどかった・・・(汗)。
危険度は低いのだが、15~16kのザックを背負い岩場をよじ登るのは大変だった。
その証拠に写真を撮る事を忘れていた・・・。
そして、無事北穂小屋に到着!
この小屋には晴天時、キレット越しに南岳や槍ヶ岳を眺望できる名物のテラスがあるのだが、ガスと雨のせいで眺望が利かず残念だった。
迫力のある景色が見れるはずが、残念・・・。
取り合えず北穂高小屋からすぐの「北穂高岳のピーク」に向かう。
北穂のピークも勿論雲の中・・・。
展望ゼロだったが、涸沢から登って来た登山者達で賑わっていた。
再び北穂高小屋のテラスに戻り雨宿りしながら(テラスには、ビニールシートの屋根がある)色々な方と話した。
中でも60代の眼鏡の男性からは、面白く為になる話を拝聴させて頂き良い時間を過ごさせて頂いた。楽しかった!
この時、警察の方が涸沢で、台風が来ている事や、今後の数日間天候が崩れるので早めに下山する様呼びかけていた事を聞いた。
俺の計画ではこの日、奥穂高岳(3190m日本3位)に向かい穂高岳山荘伯で翌日→涸沢に一泊して、のんびり北アルプスと満天の星空を満喫→横尾伯→蝶ヶ岳からの槍・穂高連峰・涸沢等々の大パノラマを眺めて帰路につくノンビリ贅沢な計画だったのだが・・・。
どうやら情報通りだと奥穂には雨の中を行く事になりそうだし展望もゼロ!涸沢では星空はおろか穂高連峰すら眺められない事は明らかになったので、残念だが予定を切り上げて下山する事に決めた・・・。
奥穂にたっぷりのに未練を感じつつ、涸沢を目指し下山を開始した。
この下山時にも多くの方と話す機会に恵まれた。
・去年秋、初めて涸沢に来て山の魅力にハマリ今回北穂を登った男性。
・「凄い日に焼けてますね」と話しかけてきた母娘で北穂から下山中の二人。
・20代前中半?で、俺が「なんで流行のスカートじゃ無いんですか?」と話しかけたら・・・(笑)
涸沢までは、「山スカートで来ましたよ~」と言って北穂の登下山はスカートだと恥ずかしい(見えちゃうから)って、俺を笑わせてくれた二人組の山ガールさん!(タイツ類はくだろうにね? 笑)
追い越す時や休憩中に楽しい会話を交わした皆さんに感謝!
皆さんとの楽しい会話がアミノ酸よりも俺に元気をくれました!
下山して行き、ガスを抜けると・・・・ ↓
色取り取りの点はテント場のテント。その奥の建物は涸沢ヒュッテ。
12時前に涸沢に到着。
北穂からの下山者を迎える位置に建つ涸沢もう一つの山小屋「涸沢小屋」に食事に行く・・・。
ここでカレーライスを注文し、外のベンチで食べたのだが・・・。
涸沢小屋の売店の女性がエライ美人で驚いた!!
その時、これは一般人では無いな・・・と思ったのだが・・・。
その正体は、現役のモデルさん!(自然に魅了され今期働かれているそうだ)
看板娘として売り上げに貢献しているのだろう・・・。また秋に行ったときは、俺も「ヒュッテ」より「小屋」選んじゃうもんな~(笑)。
そんな美女に見惚れていたせいなのか?テントを設営しようとした刹那、激しい雨が降ってきたので近くの「ヒュッテ」のテラスの売店に非難しラーメン・ビール・名物のおでんを食べながらテントを張るチャンスを伺うが・・・、雨は激しくなるばかり。
一向に止む気配が無いので土砂降りの中、仕方なくテントを設営した(設営両500円・水はただ!)。
テントの中に水溜りが出来たりしたが、自然の中を旅しているからこその経験だと思うとこれも有りだろう。
土砂降りの雨音と雷鳴の中、北穂からの下山道は何時の間にか、沢になり「ザーッ」っと音を立て流れていた。
その音を聴きながら小説「一人ならじ」を読んでいた。
19時頃、就寝。
つづく