広島市から電車で1時間。戦艦大和の建造地としても有名な呉市では、屋台を使った観光促進の試みが行われている。
夕方になると、呉駅からほど近い蔵本通り(通称、ちょうちん通り)の歩道に、ラーメン屋、おでん屋、イタリア料理、鉄板焼き、創作料理など、ユニークな屋台が十数件並ぶ。この屋台街、実は上下水道と電気を完備している。
戦後まもなく構成された屋台街だが、昭和60年代、道路の整備に伴い撤退を検討された。しかし、街の風物詩として市民らに受け入れられていた屋台街を継続し、観光促進に活かすことができないか、行政主導で検討されたという。
結果、昭和61年、道路の整備に併せ、歩道の端に上水道と電気を供給する設備と下水口を用意のうえ、行政が窓口となり、屋台の公募を実施。現在は、衛生的で女性や子供も気軽に利用できる屋台街として、夜に楽しめる呉市の観光資源になった。
【写真】歩道端に設置された上水道と電気を供給する設備(呉市で次田尚弘撮影)
広島県は世界遺産を中心に観光資源に恵まれた地域であるが、観光客の滞在時間が短いことが課題だ。夜の観光資源を生み出したことで、宿泊客の増加が期待されている。
和歌山市でも、行政や商店街、自治会などが主催する「わぁーと!手づくり市場(マーケット)」や、和歌山大学の足立ゼミが事務局を務めるオープンカフェ「カフェWith」など、中心市街地活性化を目的とした まちづくり活動が活発だ。
和歌山の観光資源として定着した和歌山ラーメンは、戦前の屋台にはじまる。中心市街地の再開発などに絡め、呉市のような屋台街を形成する素質が和歌山にはあるのではないか。
屋台街に限らないが、和歌山市にとって夜の風物詩の確立は、観光客の滞在期間延長など、観光促進や中心市街地活性化に有効であると思う。
(次田尚弘/広島)