「初心に立ち返り、愚直に生きてほしい」。11日、音楽プロデューサー・小室哲哉被告(50)に対し、執行猶予判決を選択した大阪地裁の杉田宗久裁判長は言い渡し後、こう諭した。「全身全霊をかけて音楽を作っていきたい」と、法廷で音楽への情熱を語っていた小室被告。執行猶予付きの判決に安堵(あんど)の表情を浮かべ、深々と頭を下げた。昨年11月の逮捕から半年余り。この日の判決で、切望する音楽活動再開に一歩近づいたが、その道は険しい。
□量刑後回し□
入廷した小室被告は黒のスーツ姿。杉田裁判長は午前9時45分の開廷直後、「被告人は有罪」とだけ述べ、量刑を後回しにして、判決文を読み始めた。
「その場しのぎの犯行」「栄光に満ちた日々を忘れられないまま、見通し甘く計画性のない資金繰りをするうちに自らを窮地に追い込んだ」。杉田裁判長の厳しい言葉が続く。
その一方で、杉田裁判長は被害弁済を終えていることに加え、多数のヒット曲を世に送り出し、音楽業界の内外から、将来に期待する多くの嘆願書が寄せられているなどの更生環境も評価。最後に執行猶予付きの判決を告げた。
手の先までピンと伸ばし、直立不動で聞き入っていた小室被告はその瞬間、大きくうなずき、深々と一礼。宣告後、杉田裁判長が「判決で書き尽くしたのであまり言うことはないが、二度とばかなことをしないように」などと説諭すると、小室被告は涙を流しながら、「わかりました」と答え、20分足らずで閉廷した。
□期待と不安□
小室被告は保釈後、自らがメンバーの「globe」が所属する「エイベックス・グループ・ホールディングス」(東京)の幹部宅に身を寄せ、裁判対策に力を注いだ。判決への期待と不安が交錯した半年間だったという。
同社の松浦勝人社長から全額を借り、被害弁済した後、周囲に「もう大阪に来ることもなくなりますかね」と期待をにじませた。
被告人質問が予定されていた4月の第3回公判前日には、大阪府内のホテルで、深夜に及ぶまで弁護人と打ち合わせを重ねた。翌日の法廷では、兵庫県芦屋市の会社社長に対する謝罪文を朗読。「被害者に頭を下げたい」との希望も受け入れられ、証人出廷した社長に直接謝罪する機会も得た。
しかし、公判で突きつけられた検察側の求刑は懲役5年。実刑判決を心配し、「どう考えたらいいんですかね」と漏らしたという。
□罪受け止めて□
傍聴券を求めて約660人が列を作るなど、大阪地裁に多くのファンが詰めかけた。大阪市此花区、ダンスインストラクター小谷芳里さん(33)は「反省しているのがわかり、涙が出そうになった。1日も早く戻ってきて」と期待。デビュー当時からのファンという大阪市東淀川区、病院職員篠塚美穂さん(32)は「罪は重く受け止めて。そして、その思いを歌にして少しでも犯罪防止に役立ててほしい」とエールを送った。
小室被告の今後について音楽評論家の伊藤強さんは「既に全盛期は過ぎてしまった感がある。事件の影響で、復帰直後は物珍しさでヒットするかもしれないが、時代に沿う音楽を作り続けない限り、すぐに飽きられるだろう」と指摘した。
(読売新聞より引用)
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