草津線の4両編成は1・2番線から発車する。ラインカラーは "ピクルス" だそうだ。
甲賀路を往く草津線は、関西本線の柘植を起点に、東海道本線の草津を結ぶ。
終点・草津は旧東海道と旧中山道が合流する要衝の宿場町として発展した。
草津線はひょっとしたら日本の物流・人流の大動脈になっていたかもしれない。
旧東海道筋を走っているからね。一方、東海道本線の岐阜~草津間は実は旧中山道筋だ。
実際、名古屋~京都間は関西本線・草津線を経由した方が約9km短いのだ。
今日は草津駅から逆走する。1番線から折り返すのは、途中駅の貴生川止まり。
乗車早々、南洋軒の "近江牛すきやき弁当" を開ける。甘い匂いが広がる。
とろけるような味わいの近江牛を、特製の割り下でこしらえた逸品なのだ。
3つめの甲西(こうせい)で途中下車。半自動のドアが開くと収穫を前にしたイネの匂い。
旧東海道筋には、鈴鹿山系の伏流水と美味しい近江米に恵まれて酒蔵が点在する。
訪れた "御代栄" の北島酒造もそのひとつ。生酛造りにこだわって醸している。
後続の柘植行きは、東日本では珍しくなった国鉄時代の湘南型電車。"ピクルス" 色だね。
セミクロスシートのボックスに昔ながらの小さなテーブル、スクリューキャップを切る。
先ほど仕込んだ "御代栄しぼったそのまま一番酒" は、とろりとしたまろやかな旨さだ。
"ピクルス" の4両編成は、右手から寄って来た関西本線と並走して柘植駅に終着する。
直前に県境を越えて、ここは三重県だ。アルコール19度の旨酒に酔々で旅を終える。
柘植駅には忍者のイラストやら案山子が忍んでいる。ここは伊賀だからね。
練られた合理的なダイヤは、3方向から列車が同時に入線して連絡の便を図っている。
関西本線の上下の列車が出発すると駅は閑散とする。"ピクルス" だけが佇んでいる。
草津線 草津~柘植 36.7km 完乗
LOVE(抱きしめたい) / 沢田研二 1978