旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

若戸大橋と藁炙り刺とNew Moonと 筑豊本線を完乗!

2023-01-21 | 呑み鉄放浪記

 18時、洞海湾を跨ぎ若松と戸畑を結ぶ赤い吊橋「若戸大橋」と「若松港石積護岸」に灯が点る。
1940年代の若松港は日本一の石炭積出港、当然のことながら若松駅の貨物取扱量も日本一となるのだ。
筑豊炭田で採掘される石炭を若松港まで輸送し、日本の近代化を支えた筑豊本線を今回呑み潰す。

始発の6620Dは06:57発、内燃エンジンが吐き出す排煙で煤けたキハ40、東日本で見ることは無くなった。
両端に運転台を持つ気動車がたった1両、かつての石炭の道を辿るこの旅のトップランナーになる。

まだ明けやらぬ空の漆黒が少しづつパープルに変化していく。
閑散とした原田(はるだ)駅には思い出したように小さな車が乗り付ける。親御さんが高校生を送ってくるのだ。
筑豊本線はここ原田で鹿児島本線から分岐し、かつて炭鉱で栄えた町々を繋いで若松で玄界灘に至る。

唸りを上げるキハ40が、3,286mの冷水トンネルで峠を越える頃、ようやく夜明けを迎える。
野球部の大きなバックを抱えたり、和弓を担いだり、乗客の殆どは高校生。ポツポツと夜勤明けのご同輩か。

左手から合流して来る篠栗線、博多発門司港行の1620Hと歩調を合わせて桂川(けいせん)着。この光景は楽しい。
筑豊方面へは博多発の篠栗線が直通して、本線の原田〜桂川の方が支線扱い、日に10往復でしかない。

狭い跨線橋を渡って1番線へ、並走してきた1620Hに乗り換える。
表示は直方行きになっているが、そのまま門司港行きとなる2時間40分90kmを駆ける長距離ランナーだ。

817系はJR九州管内に広く生息している車両、嬉しいことに転換クロスシート。しからばカポっと。
“寒山水” は八女の酒、軽やかな香りがあってキレの良い風味、ちょい辛の純米吟醸でした。
ところで鉄路は新飯塚から(若松まで)は複線になっていた。かつて石炭輸送の大動脈であったことを物語るね。

沿線の中心駅直方(のおがた)に途中下車。ちょっと平成筑豊鉄道に寄り道して呑んできます。
女子高生たちが取り囲んでいるのは元大関魁皇(現浅香山親方)、ここ直方市の出身なのだそうだ。

時刻は夕方に飛んで再びの直方駅、アンカーは6668Mの若松行き。
819系電車の「DENCHA(デンチャ)」という一見おふざけな愛称は「DUAL ENERGY CHARGE TRAIN」の略。
電化区間でパンタグラフを通じて電気を取り込み、非電化区間では床下の蓄電池がに蓄えた電力で走るらしい。
そういえばデザインもなんとなく単三乾電池っぽいなな。

直列に2つ繋いだ単三乾電池は折尾駅で再び鹿児島本線とクロスした後、(愛称)若松線区間をラストスパート。
このローカル線が複線なのも驚きだけど、架線もない鉄路を電車が軽快に走っていくのも不思議な光景だ。

約66キロ、本線としては短い旅は、錆びついて車止めに行手を塞がれてあっさり終わりを迎える。
かつては広大な貨物ヤードが広がっていたであろう若松駅、今では一面二線の寂しい終着駅だ。

国内有数の炭鉱地帯からの石炭積出港として栄えた若松の繁華街、今ではすっかりノスタルジックな町だ。
目星を付けていた酒場も、お休みだったりあまりにも寂しすぎたり、仕方なく折尾まで戻ることにする。

折尾駅の北口に「芽から鱗」って、ちょっと洒落た名前の炉端・藁焼の店を見つけた。
カウンターに1席のスペースが空いていて、運よく滑り込んだ19時。いつも通り生ビールから始める。

アテは “ごまヒラス” に “からすみのポテトサラダ” を。いかにも九州の匂いがするでしょう。
カウンターの中は若い子ばかりだけれど、手際は良いし、繰り出す肴は見た目も味もなかなかの出来映えだ。

大将格の兄さんが、サワラにニラの醤油漬けを添えた一皿をサービスしてくれた。これが美味い。
日本酒は全国の銘酒を取り揃えて、地酒を飲みたいボクにはちょっと残念。“鍋島” が唯一の九州の酒だ。
“New Moon” はしぼりたて生酒、フルーティーな香りで爽やか、酸味が心地よい純米吟醸原酒です。

“炭焼 野菜盛” は、ステーキ椎茸、つぼみ菜、ししとう、やまいも、ズッキーニ。其々の薬味が引き立てる。
三杯目は芋焼酎に変えて “赤兎馬” を水割りで、すっきりした味わいが野菜たちに違和感なく美味しいね。
最後に “海” をお湯割りで、立ち上る香りを楽しみながら、寒鰆、鰹、真鯛、活き穴子と “藁炙り刺” を抓む。

石炭を運んだ鉄路の終点若松、寒風吹き荒ぶ石積護岸、若戸大橋が真紅に浮かび上がってっている。
橋の袂から洞海湾を渡す若戸渡船が出る。今宵、小さな渡船の揺れに身を任せて、筑豊本線の旅を終えるのだ。

筑豊本線 原田〜若松 66.1km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
冬のリヴィエラ / 森 進一 1982



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (watari25)
2023-01-28 22:45:18
今晩は

いつもおいしそうなお酒が出てきますね。たまんないね。電車や景色の写真もクリアでキレイです。いつも楽しませていただいてます。ありがとうございます。
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Unknown (呑み人)
2023-01-29 21:09:57
@watari25 こんばんは。
出張などの機会に酒場を巡っています。
土地土地の酒肴や人情に触れるのは楽しいです。
お気軽にこのブログにもお寄りください。
コメントありがとうございます。
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Unknown (まつなる)
2023-01-30 22:34:54
若戸大橋の景色を見ると、かつての「二階堂」のCMを連想します。
海峡の街もいいものですね。
折尾の駅もすっかり建て替わりましたが、町の風情はいきなり変わるものではなく、またその中で新しい魅力的な店もあるようですね。私もいずれ折尾で一献をと思います。
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Unknown (呑み人)
2023-02-01 22:21:24
まつなる様、こんばんは。
折尾にはご縁がお有りでしょうか。
北九州はさすがに大きな町ですね。
数駅毎に市街地が広がって。
小倉はもちろんですが、戸畑や八幡、門司の町でも
酒場を巡って彷徨いたいものです。
コメントありがとうございます。
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