旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

蛇の樹と土方歳三と澤乃井と 多摩都市モノレール線を完乗!

2025-01-22 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

鮮やかなオレンジを纏った4両編成、多摩都市モノレールの1000系電車が音もなく滑り出した。
この休日は多摩丘陵を縦断して、立川辺りで一杯やろうと思っている。

旅を始める多摩センターには白亜の城がある。
キャラクター達との時間を過ごすため、女の子が次々に親御さんに手を引かれて訪れる。

「蛇の樹」は、フランスの女性彫刻家ニキ・ド・サンファルの作品。
瀬戸内海の直島などでアート活動を行うベネッセは、東京本部ビル前もアートで飾っている。

まるで木の枝をイモムシが這うように、1000系電車が最徐行で進入してくる。
ならばこれまた白亜の多摩センター駅は繭に見立てる所であるが、呑み人には板わさにも見える。

多摩丘陵を縦断するモノレール線の前半は、ジェットコースターよろしくアップダウンが激しい。
大栗川の谷から57.5‰の急勾配で尾根を駆け上がると、帝京、明星、中央と大学のビル群が車窓を流れる。
沿線唯一の多摩丘陵トンネルを潜ると下り勾配に転じて多摩動物公園駅に滑り込む。

長いエスカレーターを下って小径を進むと多摩動物公園の正門ゲート。
大きなアフリカ象のオブジェの出迎えに、子ども達もインバウンド客もテンションを上げて写真撮影中だ。

カンガルーが飛び跳ね、エミューが駆け、賑やかなオーストラリア園の最奥部に人気者が居る。
まあほとんど昼寝状態の人気者、時折小さな伸びと欠伸を見せては、観客を沸かせているね。

連続するS字カーブに4両編成をうねらせて、1000系電車が下界へと降りていく。
左手に一瞬キラッとお不動様の五重塔の相輪(そうりん)が目を射ると高幡不動駅だ。

高幡山明王院金剛寺は関東三大不動の一つに数えられ、高幡不動尊として親しまれている。
境内には露店を賑やかに並べて、初詣の参詣者が引も切らない。

ここ高幡山金剛寺が新選組土方歳三の菩提寺だというのは、今回訪ねるまで知らなかった。
額に「誠」を巻いて凛々しい隊士姿の青銅が、朱と金の五重塔とコラージュして映えているね。
彼に見えるのは五稜郭以来だろうか、彼の地では乗馬鞭を携えた洋装であった気がする。

土方歳三の生家は万願寺あたりと聞いて、ひとつ先の万願寺駅に途中下車してみた。
生家跡は小さな資料館になっているのだけれど、生憎っと休館日で残念。

ところでこの駅には鉄道むすめ「万願寺さき」が勤務しているのだが、刺又を持っているのは何故だろう?

万願寺駅を発った1000系電車は、一旦進行方向を北西に変えて多摩川に並行すると、
まもなく中央フリーウェイが西へと流れる。日が暮れたらテールランプの帯がキレイだろう。

そして都道を真っ二つに割るように立日橋を渡る。眼下をゆったりと流れる多摩川、上流の山々が青く連なる。

沿線最大のターミナル立川には、立川南、立川北と2つの駅を設置して乗降客を捌いている。
両駅の間に横たわるJRのヤードを跨いで来た電車には動物たちのラッピング、これって当たり?

立川北駅を出た1000系電車は真っ直ぐ北上する。右手には昭和記念公園、そして陸自立川駐屯地。
広大な立飛の敷地を横切ると、芋窪街道(都道43号)の上をラストスパートだ。

玉川上水駅で西武線と連絡して、立川北駅から七つを数えて1000系電車は上北台駅でその旅を終える。
なんとも中途半端な旅の終わりで、軌道もバッサリと切られたように途切れ、仮設っぽい車止めが行手を塞ぐ。
正面の低い丘陵を越えれば、水を湛えた多摩湖の風景に出会えるはずだ。

多摩都市モノレールには北へ南へ延伸計画がある。
北への計画は、ここ上北台から西へ転じて、新青梅街道を箱根ヶ崎まで結ぼうという計画で、
2024年7月、約7km延伸の軌道事業特許を国土交通相に申請している。
将来もう一度、この路線の呑み旅をするかも知れないね。

さすがにターミナル駅立川の周辺には、昼から呑める酒場が複数存在する。
駅前ロータリーに面したオフィスビルの地階に潜ると、老舗の「酒亭 玉河」があるのだ。
この店、定食メニューも豊富で小上がりの席もあるから、伊勢丹の食堂の感覚で来店する家族連れもある。
それゆえ店員さんからは、お食事ですか?お酒は飲まれますか?と問われる。もちろん呑みます。

品書きに “赤星” があったら、迷わず択ぶことにしている。渋いでしょう。
アテは “マグロぶつ”、少量だけど良いところを切っている。中トロって感じかな。

今回はホッピーへの展開と思っていたけれと、意外と地酒のラインナップがあった。
先ずは福生の “嘉泉” ね。口当り柔らかでしっかりとした後口の特別純米は絶好の食中酒。
アテの “メゴチの天ぷら” は塩でいただくのが良い。野菜天もいくつか添えられて、なかなか美味しい。

〆に温かいのを想像した “なめこ豆腐” は冷製、それでも刻み海苔を散らして酒の供としては上々の一品。
ご存知青梅の “澤乃井” をグラスから升に溢して、きれの良い定番酒 “大辛口” を合わせて旨い。

今年初めての呑み鉄旅、多摩の酒を味わったら「くるりん」に見送られて、そろそろ日は暮れて行くのです。

多摩都市モノレール線 多摩センター〜上北台 16.0km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
YOU GOTTA CHANCE / 吉川晃司  1985



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