いろはにぴあの(Ver.3)

ピアノを趣味で弾いています。なかなか進歩しませんが少しでもうまくなりたいと思っています。ときどき小さな絵を描きます。

河村尚子 ピアノリサイタル リストへの旅 生誕200年に寄せて

2011年04月07日 | ピアノ・音楽
 今日は河村尚子さんのピアノリサイタルに行ってきました。非常に上手な方、という噂はちらほらきいており、録画を見せていただいたりもして、ぜひ生演奏を聴きに行きたい、と思っていました。プログラムは以下のとおりです。


J.S.バッハ作曲ブゾーニ編曲 コラール前奏曲「主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ」BWV639
J.S.バッハ作曲ブゾーニ編曲  シャコンヌ
R.シュトラウス作曲  5つの小品 op.3

 休憩

ワーグナー作曲リスト編曲 イゾルデの愛と死
シューベルト作曲リスト編曲 糸を紡ぐグレートヒェン
シューベルト作曲リスト編曲 「美しい水車小屋の娘」より 「水車屋と小川」
シューマン作曲リスト編曲  献呈
リスト作曲 「愛の夢」 第3番
リスト作曲 「巡礼の年 第2年 イタリア」 より 「ダンテを読んで」

アンコール J.S.バッハ作曲ペトリ編曲「羊たちは安らかに草を食み」BWV.208-9

 平日の夜でしたが会場にはたくさんの人がいました。周囲の人たちの会話から、音楽に通じているような方が多かったような気がします。ピアノ仲間のTさん、Nさんも来られていました。華道家の仮○崎○吾さんも来られていました。
 ステージに現れた彼女はかなり大柄な方だったような気がします。祈るような最初の神聖なコラールから惹きこまれました。そんなに前へ前へと主張する感じでもないのにしっかりと思いがつたわってくる感じでした。シャコンヌで世界はぐんと外向きに広がりました。私の席は一番後ろだったのですが、弱音もしっかりと届いていました。しかも弱いところはしっかりと弱く幅の広い音でした。彼女の音には強弱だけではなくて遠近、柔軟、寒暖、いろいろなパレットがあるように思えました。とくに遠近のパレットの存在が印象的に思えました。そのために立体的な演奏になっていたような気がします。R.シュトラウスの5つの小品は彼が16歳のときに作った曲で、父親の教育の影響かシューマンやメンデルスゾーンのような雰囲気の曲です。確かに最初の曲はシューマンの曲ではないか、と思えました。無言歌にも近い曲がありました。全体的に可憐な感じの曲でしたが、しっかりと磨きがかかっていて歌いこまれていて素敵でした。

 後半は今年記念年のリスト作曲編曲の曲が登場。前半は編曲物でした。リストが編曲したのだから難しいはずなのですが、そのようには思えないぐらい弾きこまれていました、いや歌いこまれていました。メロディーラインが出ている、というだけのものではなかったような気が。間のとりかたもフレーズの作り方もぴったりと腑に落ちる感じ。シューベルト原曲の二曲は初めて聴いたのですが、ダイナミックな見事な歌曲になっていました。どれだけの力がかかっているのだろうか、弾き方にどんな秘訣があるのだろうかと思いながら見ていたのですが、よく分かりませんでした。細かい音も細やかに美しくでていました。どの音もピアノのツボをつかんで出しているのだろうと思います。一音でもツボをつかんで出すのは難しいのにすごいと思いました。音が羽ばたいていてしかも聴衆をふんわりと包み込みまきこんでいるような感じがして見事でした。胸がすくような演奏でした。
 その後はリストのオリジナルの曲でしたが、これもすばらしかったです。あんなに弾けたら本当に楽しいだろうな、と心から思いました。そしてアンコールがまたよかったです。曲自体が好きだったのもあるのですが、本当に愛しんでいるような演奏で、温かい気分になれました。

 このような演奏を常に聴いていたら、あんなに弾けるようになるのだろうか、少しでもエキスを吸収したいとも思いましたが、自分のことはさておくにしても、すばらしい演奏会だったと思います。また彼女の演奏を聴きに行きたいです。