これまでの寒さはどこへやら、すっかり暖かくなり春らしい陽気が心地よい中、穴水にピアノコンサートを聴きに行ってきた。いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭、今年はモーツァルトをテーマにした音楽祭の一環で、穴水のこちらのホールでオールモーツァルトの演奏会が開かれた。ピアノ仲間の友人も演奏者の中に入っているオーディション合格者によるピアノコンサート、穴水の合唱団によるアヴェ・ヴェルム・コルプス、そしてピアニスト、松本和将氏によるピアノコンサートという贅沢な内容だった。
会場には電車で向かった。長時間乗車だったのだがそれがなかなか楽しかったのだ。七尾から穴水に向かう、のと電車、なんとも印象に残る外見。この写真では少し見えにくいが、マジンガーZも描かれている。輪島市出身の漫画家、永井豪氏にちなんだらしい。
そして中もすごいのだった。隷書で「喜翠荘」と書かれたドア、そしてアニメの額縁。アニメは『花咲くいろは』というアニメで、その主人公が働いていたホテル「喜翠荘」は、石川県に少し前まであった白雲楼ホテルというらしい。
のと鉄道の遊び心の極めつけはやっぱりこの季節ならではのこちら!車内の客席になんとひな壇が飾ってあったのだった。もちろん本物。それが違和感を感じないところがすごい!感動してしまった。
そして外はこんな感じ。海は広いな大きいな~日本海とは言えども能登の海は能登島の影響か、あまり波が激しい内灘になっていてとても穏やか。ぼうっと眺めていたくなりそうな風景。
いくら面白いものが多かったとはいえども到着までの前置きが長すぎたかしら。そこで一気に穴水駅→会場ののとふれあい文化センターへ。これが山の上にある上に海からも近く長閑でよいところ。かつてどこかで行ったことのあるような。。。海辺や湖の畔にあるホールを連想した。
そして時間ぎりぎりに到着。風と緑の楽都音楽祭のイメージキャラクターガルガンチュアとモーツァルトたちがお出迎え。ホールからはきらきらした連弾が聴こえてきた。
ホールでは子供たちによるみずみずしいモーツァルトの演奏が始まっていた。光り輝いたエッセンスが込められておりそれが伝わってくるような演奏、また元来は木管楽器等他の楽器による曲だったものがピアノ曲に編曲され立体的に感じられた演奏、魅力が沢山伝わってきた。未知の曲も多く、こんな曲も作っていたんだと新たな驚きや感動があった。ピアノ専門の学生さん、ペダルを沢山踏まれていながらも全く濁ることがなくきちんと演奏されていて衝撃を受けた。プログラム最後に演奏した友人、未来を見据えたモーツァルトの世界を繰り広げていた。重く激しい和音で始まりめくるめくように転調、音楽が広がり明るく光がさしたかと思ったら再び疾風怒涛で畳み込むように駆け抜けるシーン、ぞくぞくした。とても難しく奥深い曲だと思うけれど、この曲にじっくり向き合ってきたからこその熟成が感じられた。本当にお疲れ様です。
地元の合唱団二組による合唱、藤井寛氏の指揮、松本和将氏によるピアノで、アヴェ・ヴェルム・コルプス、嬉しいことにプログラムに歌詞があったので、柔らかな美しい声の邪魔になってはいけないと思いつつも、ちゃっかり一緒に口ずさんでいた。アヴェ・ヴェルム・コルプス、なんていい曲なのだろう、短いのに、歌っているうちに気持ちが盛り上がるのだった。こんな曲を生み出したモーツァルト、やっぱり只者ではない。
そして後半は、ゲストピアニストの松本和将氏によるピアノで、モーツァルトのソナタ第2番KV280、ソナタ第9番KV310、ソナタ第11番KV331だった。初期に作られたソナタ第2番、ほっこりとのびやかな感じの第1楽章で心温まる気分になっていたらがらりと雰囲気が変わり哀愁に溢れ、そして果てしなく美しい第2楽章、初期からこんなに深みのある音楽を作っていたのかと驚くばかりだった。ソナタ第9番KV310、母を亡くしたときにつくられたという、数少ない短調のソナタ、決然とした思いが感じられるきっぱりとした鋭角の音色と疾走感、それまでとがらりと変わり、音の中からほとばしる感情がぐっと伝わってきた。じっくりと間を取り音を吟味されているところも味わい深かった。KV310も特に第2楽章が素晴らしく、こんなに豊かな内容の曲だったのだと新たに感じ入る次第だった。音楽の進行と感情の流れとともに心も寄り添い没入したいしそうすることが幸せな気持ちになっていた。ソナタ第11番KV331、変奏曲から始まりメヌエット、そしてトルコ行進曲、当時としては画期的な楽曲だったとの解説。それぞれの変奏曲のキャラクターをリピートなしで丁寧にきちんと紡ぎ出されていてすごいと思った。きめ細やかな音色のパレット、無限大にお持ちのようだ。アンコールではショパンの英雄ポロネーズだったのだが、そこでがらりと雰囲気が変わったのも見事だった。はじけるような華やかさとエネルギーが感じられて、そのエネルギーがこちらにもじわんじわんと伝わってきた。
素敵な音楽に包まれて幸せいっぱいだった演奏会、もっともっとそのホールにいて音楽を浴びたかったのだけど、さすがにそういうわけにはいかず、それでも帰宅後にも余韻を保ちたいと思い、松本氏の今日演奏された第9番KV310、ソナタ第11番KV331の入ったCDを購入し、サイン、そしてお話もさせていただいた。そして、友人と、余韻を噛みしめ、遠方だったけれど穴水に来てよかったという話をして、駅まで送ってもらい、帰路に向かった。
帰りののと鉄道の車窓から見えた風景。不思議な立体物の正体は、「ボラ待ちやぐら」という、ボラの群れを見張り網を手繰る漁業用のやぐららしい。
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