以前、買ったのだがつまらなくて(当時はそう感じた)本棚の片隅にしまいこんでいた本。 ミステリを探していて、ふと目がとまりページを繰ったらなかなか面白くて、二日間で読了してしまった。
主人公のローラは、早くに両親を亡くし、捜査官の兄ビルと支え合って生きてきた。この異常なまでに絆の強い兄妹の間に、ある日突然わりこんできたのが、謎めいた美女アリス。 アリスはたちまちのうちに、ビルを魅了し、彼の妻となるが、その背後には不吉な影がまとわりついていた。 この兄の妻となった女は、何者なのか――?
シンプルだけれど、読ませるストーリー展開と言いたいところだが、事件が起こるのが、ようやく中盤あたりから、と助走部分がいやに長い。 50年代のロサンゼルスを舞台として、その時代の風俗や家庭生活が執拗なまでに延々と語り継がれるのである。でも、この時代のディテールは、巧みに描写されていて、「ふ~ん」と思うこともしばしば。たとえば、アリスという女性はキッチン用具を山のように買い込み、料理やお菓子を作るのだが、当時の調理道具のメーカーやクラシックケーキの名前までがずらずらと書かれているのである。
そういえば、敗戦後の日本人が「アメリカン・ドリーム」として憧れたのも、この頃の米国ではなかっただろうか? きっちりとパーマをあてられた髪や、丸い大きなボタンがついたスーツ、大きな自家用車、そして何よりも繁栄がもたらす豊かな消費生活!映画やポスターなどで断片的に見聞きしていた、当時の生活を想像して楽しむことに。 古い時代を背景としたミステリを読む楽しみは、こんなところにもある。
アリスがひきずってきた過去には、ハリウッドの裏世界や、大がかりな売春組織などが複雑にからみ、結末まで一気に読ませるサスペンスに仕上げられているのだが、会話や場面のシチュエーションにチャンドラーへのオマージュが感じられるのも、上質なミステリという趣。 高校の時、愛読したきりのチャンドラーに、そして彼の創造したフィリップ・マーロウにもう一度会いたくなった。
主人公のローラは、早くに両親を亡くし、捜査官の兄ビルと支え合って生きてきた。この異常なまでに絆の強い兄妹の間に、ある日突然わりこんできたのが、謎めいた美女アリス。 アリスはたちまちのうちに、ビルを魅了し、彼の妻となるが、その背後には不吉な影がまとわりついていた。 この兄の妻となった女は、何者なのか――?
シンプルだけれど、読ませるストーリー展開と言いたいところだが、事件が起こるのが、ようやく中盤あたりから、と助走部分がいやに長い。 50年代のロサンゼルスを舞台として、その時代の風俗や家庭生活が執拗なまでに延々と語り継がれるのである。でも、この時代のディテールは、巧みに描写されていて、「ふ~ん」と思うこともしばしば。たとえば、アリスという女性はキッチン用具を山のように買い込み、料理やお菓子を作るのだが、当時の調理道具のメーカーやクラシックケーキの名前までがずらずらと書かれているのである。
そういえば、敗戦後の日本人が「アメリカン・ドリーム」として憧れたのも、この頃の米国ではなかっただろうか? きっちりとパーマをあてられた髪や、丸い大きなボタンがついたスーツ、大きな自家用車、そして何よりも繁栄がもたらす豊かな消費生活!映画やポスターなどで断片的に見聞きしていた、当時の生活を想像して楽しむことに。 古い時代を背景としたミステリを読む楽しみは、こんなところにもある。
アリスがひきずってきた過去には、ハリウッドの裏世界や、大がかりな売春組織などが複雑にからみ、結末まで一気に読ませるサスペンスに仕上げられているのだが、会話や場面のシチュエーションにチャンドラーへのオマージュが感じられるのも、上質なミステリという趣。 高校の時、愛読したきりのチャンドラーに、そして彼の創造したフィリップ・マーロウにもう一度会いたくなった。