ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

アラビアの女王

2017-03-05 08:50:37 | 映画のレビュー

ニコール・キッドマン主演の「アラビアの女王」を観に行く。
大好きなニコール・キッドマン。そして、舞台は、20世紀初頭の大英帝国華やかなりし時代で、舞台は中東。異郷に咲く、植民地文化。そして、キッドマン演じる実在の女性、ガートルード・ベルというのは、女性版「アラビアのロレンス」ともいえるべき存在。

そうした知られざる、英国女性を描いたドラマというのだから、期待はいやでも高まろうというもの!

富裕な家庭に生まれたガートルードは、当時女性で初めて、オックスフォード大学へ進み、そこも主席で卒業したという才媛。そうした彼女が、イギリスの上流社会の退屈さに倦み、テヘランの大使館で働きはじめるというところから、話は始まる。

大使館の華麗な暮らしぶりには、思わずホウッとため息が出そう。この時代のヨーロッパ文化は、本当に贅沢で華麗。私は、メリル・ストリープが主演した「愛と哀しみの果て」も大好きで、何回も観ているのだが、ストリープ演じる、作家アイザック・ディネーセンがアフリカの地へ行くところは、本当にすごかった。
列車にいくつも積んだ木箱――そこには、ボーンチャイナ(と思われる)製の瀟洒なテーブルウェアがぎっしりとつまっていて、彼女が地の果てだろうと、優雅な生活を続けるつもりだということが、はっきりわかったのだ。

この映画でも、ガートルードのファッション――例えば、肩に羽織ったカシミール織りのストールなど――にも、当時の絢爛たる美意識があらわれているのだけど、どっこい彼女はそんな生活に満足する女性ではなかった。
大使館職員の男性との悲恋を経て、未知の砂漠への冒険にのりだしてゆく。ベドウィンといった現地民の生活を調査するという名目で、危険な旅に出ていくのだが、これは当時の情勢に逆らうことでもあった。

この頃、オスマン・トルコ帝国は断末期を迎えようとしており、そこへヨーロッパ列強が介入しようとしていたのだ。彼女は、砂漠のキャンプでアラビアのロレンスにも出会う。(映画では、二人の間に、親密なつながりがあったように描いてるが、実際はほとんど接点はなかったらしい)
一人の女性冒険家が、時代情勢によって、英雄に仕立てられ、英国とトルコ側との交渉に立ち会ったり、中東の国の国境線を決定したりすることがよくわかったのだが、これを可能にしたのはやはりガートルードの、類まれな勇気、果断さだったろう。

ただ、惜しむらくは、一人の女性のドラマチックな半生を描いたストーリーや、ニコール・キッドマンという素晴らしい女優の主演という、魅力的な要素にもかかわらず、映画自体が駄作なこと。
ガートルード・ベルという知られざる女性の姿を浮き彫りにするどころか、恋愛面ばかり強調した「ハーレクィン」っぽい感じが目立ってしまっているのだ。


それでも、第一次大戦前後のヨーロッパ文化は好きだなあ…。