
ああ、うっとり


背表紙も素敵! この美しいイラスト……香気漂う、別の世界への扉を開いてくれるに十分な典雅さであります。
実は、長年、丸善の文房具売り場で買い物を続けていたせいで、そのポイント分がこのほど、丸善での買い物券として帰ってきた! だから、自分へのクリスマスプレゼントとして、憧れの萩尾望都の「ポ―の一族」の愛蔵版セットを購入したのです。
この少女漫画には、深~く、長い思い入れがあり、今でも心に残る少女マンガベスト1と言っていいほど。
あれは、はるか昔(もう、そう言っていい年齢になってしまいました)、私が中学一年生だった頃のこと――駅近くに今なら「マンガ喫茶」とでも言えるほど、マンガは棚いっぱいに並べられた喫茶店がありました。
といっても、そこはマンガが壁にずら~りと並んでいることをのぞいては、スパゲッティーやグラタンなどもオーダーできる、ちゃんとした喫茶店だったのですが。
その棚の一角にあった、「ポーの一族」……長い時を生きるバンパネラ(吸血鬼)の少年エドガーとアラン、永遠の少女というべきエドガーの妹メリーベル。彼らの年齢は、13,4歳と当時の私とピタリと重なっていたのですが、そこに繰り広げられる、妖しくも美しい物語、少年の姿のままで生き続けなければならない孤独や悲しみが、切々と心をうったもの。
昔からの少女マンガの、名作としか知らなかったのですが、このほど上記の愛蔵版を購入して、この漫画が昭和47年から連載が始まっていたことを知りました。
ということは――私が生まれた翌年だわ。 そんな昔なのに、物語の面白さ、みずみずしさ、エドガー達の心情のリアルさはいささかも古びていません。
う~ん、これってやっぱり永遠の名作だわ


二回繰り返して読み、十代の心に戻ってうっとり。昔、この漫画を持っていたはずなのに、いつの間にか手元からなくなってしまっていたし……だから、当時のままの単行本の装丁もうれしかったですね。
そして、何と、この漫画、40年以上もたった現在、新作が出ているのであります。それが、これ。

実は、書店で見かけても、なかなか買う気にはなれませんでした。というのは、あまりにも素晴らしい「ポーの一族」のことが頭にあったため、そのイメージが壊れてしまうのは怖かったから。 少女マンガ界の伝説と言われる萩尾望都さんだって、さすが年齢を経て、かつての繊細なタッチの絵は消えて、より骨太なものになってしまっていますし。
それに「これ続編? だって、エドガーとアランは最後死んじゃってしまっているはずなのに」と思ったら、舞台は第二次大戦中の英国の田舎。
まだ、十分に彼らが生きていた頃の物語です。
そして、やっぱり面白かった! ああ、萩尾望都さんって、やっぱり凄いなあ。
とにかく、「ポーの一族」の魅力は、想像力あふれる物語のみならず、人の心にひたひたと沁みこんでくる文章、言い回しの文学的な香り。それが、かくも長く、人々の心を惹きつけるのでしょう。

そんな訳で、宝塚まで「ポーの一族」の舞台も見に行ってきましたよ。
でも、マンガの素晴らしさを、舞台でも再現するのは無理だったようで……でも、宝塚の劇場って、歩くだけでも面白い

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