ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

坪田譲治の世界

2017-01-15 22:18:59 | 本のレビュー

が郷土が誇る、歴史的な児童文学者、坪田譲治氏。
それなのに、それなのに(思わず、声が小さくなる)今まで、一度も読んだことがありませんでした。

しかし、これは私のせいばかりではなく、名前が良く知れ渡っているわりに、書店の児童書コーナーでも、坪田譲治の名前を今ではほとんど見かけないよう。
新見南吉の「手ぶくろを買いに」や「ごんぎつね」、小川未明の「赤い蝋燭と人魚」(これは、酒井駒子の美しい挿絵入りのものを持っています)などは、燦然たる名作として、広く読まれているのに…。

何年か前、母の友人の方が坪田譲治の遠い親戚にあたるのだと聞いて、この作家を近しく感じだしたのですが、図書館で上の写真の本を借りるまで、またしばらく時間があいてしまいました。
そして、ついに初めて出会った、坪田譲治文学――これが、とても素朴でユーモラスで面白い!
1890年生まれというから、バリバリ明治生まれの人で、作品世界も遠い郷愁を感じさせるものとなっているのだけど、ホント楽しくて、幸せな気持ちにさせてくれるのです。
ああ、もっと早く読んでおくんだった…と後悔したのは言うまでもありません。

晩年になってから書かれたエッセイとも童話ともつかない作品には、私の家が檀家であるお寺もしっかり出ていて、明治の半ばの大水が出た時(旭川の堤防が決壊したのだそう)、自宅の門から小舟に乗って(これが面白いです。普通歩いて通るしかない門を、そこが川のようにあふれかえっているからという理由で、舟に乗るとは)、そのお寺に避難するところなど、情景が目に浮かびそう。 避難したのは、お寺の本堂だというのですが、私の知っている今の本堂と同じだったに違いありません。

とっても、ほのぼのとして、豊かな空想が描かれた坪田譲治の世界。ぜひ、もっと読まれるようになることを願ってやみません。

P.S と、私がヘンに強調するのは、今人気だという児童文学作家の本が面白くないような気がするからです。出来の悪いマンガみたいなテラテラした表紙のついた、ライトノベルとかライトミステリーと分類するらしい文庫本には、話が途中で空中分解しているお粗末なものまであるのですから。
コメント    この記事についてブログを書く
« 狼を日本に呼び戻す話 | トップ | ある日の日記 »

コメントを投稿

本のレビュー」カテゴリの最新記事