田園城郭都市構想 Ⅵ

2017年01月25日 | 湖と城郭都市

 

  
1.ハワードの田園都市構想
2.田園都市論の現代的意義
日本型田園都市構想

3-3-1 京田辺市の魅力の創出(モデル都
      市シミュレーション)

② 環境面においての課題

京田辺市の環境面での取り組みを見てみると、景観保全
やごみリサイクルのような小規模なものの留まり、根本
的な土地区画や、新技術を利用した環境保護システムの
導入などにおいて不充分である。景観保全に重点が置か
れすぎていて、環境問題に対応したまちづくりを徹底し
ていない。その土地に適応した、グリーンベルトによる
土地区画、あらかじめ人口設定することをしなければ、
将来的に人口膨張が起こり、さらなる環境悪化が予測さ
れる。

③ 農業面における展開

農業では、合理的な土地利用計画に基づく優良農地の保
全活用と生産性の高い都市均衡農業を目指している。現
在、この市の基幹産業は、茶葉である玉露。玉露の生産
高は全国一で、最高玉露の産地として知られるお茶所。

また、全国のお茶ファンを当市に呼び込むことで、茶の
湯に欠かせない茶せんなどの工芸品の販売・製造企業も
増加する。

その他に、竹の産地で、春には良質なタケノコが収穫さ
れ、野菜は、田辺ナスが代表格。促成・抑制栽培により
年間を通じて味わうことができるが、6月から11月に
かけて収穫される春秋ナスが特においしいと評判な、逸
品と自負する出来映えである。この田辺ナスも、地元や
関西圏の飲食店などが、このような京野菜を主としたメ
ニューに取り入れ、人気を創出。

これらの作物や商品は、全国各地にも配送され、京田辺
のブランド各地に広め、知名度を上げている。さらに、
近年ではガーデニングブームに乗り、バラやカーネーシ
ョンなどの花の栽培も盛んに行うなど、新たな基幹産業
創出に積極的である。

④ 他にない魅力「個性」の創出

近年、注目する特色としては、木津川左岸から、大阪府
、奈良県にかけて広がる京阪奈丘陵を舞台に、関西文化
学術研究都市(学研都市)の建設が進められていること
である。当市の南部地域は、学研都市の北部拠点として、
同志社大学京田辺キャンパスがあり、約百haの敷地に同
士社大学、同志社女子大学、同志社国際中学・高等学校
の生徒が約17,000人通学する。

また、ここ数年関西で相次いで起業したバイオテクノロ
ジー関連のベンチャー企業は大学との共同研究において
成功し、徐々に経営軌道に乗り始めている。大学と提携
を結ぶ企業が増えれば、新しいビジネスチャンスを誘致す
ることができ、同時に雇用促進にもなる。他にも、真似す
ることのできないこの地域ならではの「魅力」があり、

、全国に「一休さん」の愛称で親しまれる一休禅師が晩年
を過ごした「酬恩庵(一休寺)が観光要所に上げている。

⑤ 財政の有効利用

財政に関しては、特に変革はなされていないので、その
都市独自の課税方式や、タイムリミット製などを導入す
ることで、無駄な公共事業を廃し、効率のよい資金繰り
をしなければならないと指摘。以上、市民もその計画に
参加し、実践することで田園都市郡の一部を構築を担う
べきと主体強化を喚起し、「環境」「地域」「農業」
「個性」「交流」の5つの鍵語を参考に、田園都市郡へ
と展開できれば問題提起し結んでいる。

【エピソード】 
    
     

滋賀県琵琶湖の愛犬と一緒に泊まれるホテル

新海浜を抱える、稲枝地区の再整備は、「田園城郭都市
想」 の展開モデルとなる。
 

【脚注及びリンク】
-----------------------:---------------------------  

  1. 田園都市 Wikipedia
  2. 日本型田園都市構想―イギリス田園都市と比較し
    京田辺市を見直す―2001.12.11 西村利也
  3. 田園都市とエソテリシズム 吉村正和 2004.03.05
  4. 田園都市論の現代的意義 中井検裕 家とまちなみ
    45、2003.7.8
  5. 住宅地計画論 1.ハワードの田園都市構想園都市
  6. 都市思想の二人の巨人、ジェイコブズとハワード:
    宮﨑洋司市
  7. 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
    佐藤健正、2016.06 28
  8. 平成 28年度 主要事業 彦根市
  9. 都市づくりの基本方針(全体構想) 彦根市
    橋梁長寿命化修繕計画による対策橋梁について
    滋賀県
  10. 彦根市都市計画道路網見直し検討調査
  11. 「まちづくりはひとづくり」をめざし 市民主
    のまち創る-近世城下町彦根市本町地区の2
    例の
    場合-(これからの都市づくりと都市計画
    制度全
    国市長会) 中島一 2005.05.09
  12. 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
  13. 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
  14. ドイツ流 街づくり読本  水島信
  15. 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  16. 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  17. 都市計画1 日本の都市計画制度の概要 大谷英一
  18. 都市計画2 都市の歴史と都市計画 大谷英一
  19. 都市計画の理論 系譜と課題 高見沢実編集
  20. 道路をどうするのか 五十嵐敬喜・小川明雄 岩
    波新書
  21. 日本の道路史 武部健一 中公新書
  22. 道のユニバーサルデザイン 鈴木敏 技報堂
  23. 道路が一番わかる 窪田陽一 技術評論社
  24. 「道路」についての国際比較 藤井聡 2010.3.14
  25. 彦根市都市計画道路網見直し指針 
  26. 地域別のまちづくり方針(地域別構想)-彦根市
  27. 彦根市新市民体育センタ整備基本計画 2016.10.31 
  28. 彦根市立図書館|簡易検索
  29. 中心市街地の活性化に関する法律 Wikipedia
  30. 富山市におけるコンパクトなまちづくりの進捗と
    展望 2014.11.26
  31. アウガ Wikipedia
  32. 富山市 人と環境に優しいまち 公式HP
  33. 青森市 都市計画マスタープラン 公式HP
  34. コンパクトシティはなぜ失敗 するのか 富山、
    青森から見る居住の自由 2016.11.08, Ya hoo!ニュー
  35. <アウガ>2副市長辞任 青森市政混迷増す 河北新
    2016.01.28
     

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里山薪ストーブ普及

2017年01月23日 | 日誌

  

● 新年会の再案内

 新年を迎え恒例の彦根市民の飲み水を守る会の新年会
を下記要領にて開催いたします。万障繰り
上げの皆様方
のご参集をこころからお願い申し上
げます。
 尚、会場は、彦根キャッスルホテル内の日本料理橘菖
(きっしょう)/常磐の間ですのお間違いないよう願い
ます(マップ下図参照)。

           『記』 

1.日時:2017年2月4日(土)17:30~
2.会場:日本料理橘菖 (きっしょう)/常磐の間
3.内容:近況報告/宴会4.会費:5,500円+酒代

※ 出欠のご返事は1月28日(土)まで幹事まで、
  ご連絡下さい。 
※ 連絡先:090-5124-1479

日本料理橘菖 (きっしょう)電話番号:0749-21-3001

【会場地図】下のMAPクリック

 

里山薪ストーブ普及事業(仮)

 

新年会の当日、話題になればと思っている燻薪(くんし
ん)ストーブの普及の件ですが、予めどのようなものか
参考にメモを掲載しておきます。



滋賀県の湖東部の里山を活動中心として 簡単に言えば
「里山薪・ペレットストーブ事業」を通して、持続可能
な豊かな地域社会を創生し、地域社会に貢献する(事業
理念)と言うことになる。①生態学的配慮と過当競争を
さけるために、50×50キロ平方メートルに1つのNPO
(非営利事業)セルを設立。②事業対象を会員・非会員
の双方で組織化し下図の事業から構成活動する。③年次
計画を策定し設計・施工及び燃料と装置を製造し、④設
備補修・メンテナンス・管理を行い、⑤燃料販売、また、
設備の撤去・リサイクルを行う。

参考に、年次事業計画は、①目標二酸化炭素削減量と②
目標会員・非会員数(顧客)、③目標事業売上高の重要
3項目及び、併せて目標成長率を設定し、理事会と専任
部門から構成し理念・ビジョン・目標設定・工程表に基
づき運営すると、まぁ~堅いことはここまでとして、事
業の特徴は次の通り。

  1. ストーブは、薪とペレットしているが、より自然
    環境に近い薪ストーブを事業コアに置く。
  2. 薪は、火力が強く、着火速度が速く、木酢(蟻酸)
    酢酸などで防腐剤処理した燻薪(くんしん)を燃
    料とする。
  3. 薪ストーブの選択・設置はオーダーメイド。タイ
    プは、標準型とオプション型(近遠赤外線遮蔽板
    あるいは波長変換起電板付属)
  4. 燻薪製造方法は発酵方式(加熱温度60~70℃)
    にて乾燥、燃料の大鋸屑は薪裁断加工(加工法は
    割愛)や米糠などをブレンドし使用、
  5. 燻薪はネットワーク注文で配送し燃え殻の灰は回
    収し再利用商品化(詳細は割愛)
  6. 膜ストーブは「推奨するパッシブ住宅」での使用
    を前提とし、冷房システムも相談・指導、「里山
    ゼロエネルギー住宅」(詳細割愛)の普及促進す
    る。
     

 

● 参考|薪製造技術

環境工学研究所 WEEFの「特許研究室」に「特集|薪
製造技術」を掲載しているので、ご参考下さい(下図を
ダブルクリック)。


JP 2013-127349 A 2013.6.27 

【エピソード】 
    
     

今日は大雪で朝から除雪作業を4回行う。さすが疲れる。
超高齢社会で全国の豪雪地帯の住民のことを思う。除雪
をしたくとも体が動かない方々のことを。ここ彦根も予
算がないので、自治体として援助できないとも聞かされ
る。

外国では、パートナーシップ(partnership)という制度
がある。パートナーシップ英米法において2名以上の者
(パートナー)が金銭・役務などを出資して共同して事
業を営む関係をいう。 当該関係に基づくパートナーの
総体を指すこともあるが、英国ではこれを「ファーム
firm)」と呼び、契約関係を指すパートナーシップと
は区別している。

行政と住民が共同して「除雪事業」の非営利・営利団体
を組織化しそこに委託し、会費を支払い除雪作業を代行
できるようできればと思う。あわせて、市場原理主義や
中央集権主義の政策の瑕疵が露呈しているのではとも思
った。

【脚注及びリンク】 
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  1. ECO2 フォーラム, 環境工学研究所 WEEF
  2. 特集|里山薪・ペレットストーブ事業(案)環境
    工学研究所 WEEF
  3. 発酵風呂とは 酵素風呂のラニオラビーチフロン
  4. 2016年01月19日:静かなブーム「薪ストーブ」後
    悔しないための心得  日本経済新聞
  5. 2016年01月22日:情緒豊かでも手ごわい、薪スト
    ーブは「ポジションが命」 日本経済新聞
  6. 2014年10月09日:京都発の小型ペレットストーブ
    日本経済新聞
  7. 2014年12月25日:「薪」復権、きっかけは震災
    ピザ人気も追い風 日本経済新聞
  8. 2017年04月11日:薪ビジネスは成り立つのか?
    (その他ビジネス ) - 薪ストーブと野菜作り
  9. 薪ストーブライフをご提案する薪ストーブ住宅コ
    ンサルティング エンフリー(埼玉・東京・神奈
    川・群馬・栃木・茨城・山梨・長野)
  10. 薪・ペレットストーブの購入・設置に対して助成
    を行います/猪名川町
  11. 新着情報 | 富山の断熱工事・防水工事・温水暖
    房・ペレットストーブはアイラ断熱工業株式会
  12. ペレットストーブってどんなものですか?近藤鉄
  13. ペレットストーブとは|京都ペレット町家ヒノコ

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田園城郭都市構想 Ⅴ

2017年01月22日 | 湖と城郭都市

 

  

1.ハワードの田園都市構想
2.田園都市論の現代的意義

3.日本型田園都市構想

3-2-3 都市計画理論による問題是正

② 日本型グリーンベルトの必要性(環境のポイント)

田園都市構築の一つの目的には、地球環境問題対策も含
まれている。特に、地球温暖化防止のための行動計画と
して、省エネルギー政策、ライフサイクル・アセスメン
トによる二酸化炭素輩出量の最小化、植林、緑化の推進
をあげている。もちろん、これらの計画は温暖化防止に
対して効果はあるのだが、これらには基本的視点が欠落
している。それは、都市構造自体の変革なしには、地球
温暖化の問題は解決しえないという事実であり、都市構
造の変革(①土地所有問題、②土地区画、③税制など)
をしなければ、過去のように、混在した住宅、人口の膨
張などを引き起こすという同じ過ちを繰り返すことにな
る。これは、今日の都市問題は、土地利用における問題
である。

2000年5月に、都市計画法が改正され、新たに線引き制
度(原則として都道府県の選択制とすること、市街化調
整区域で、一定の要件を満たす区域を条例で定め、住宅
などの立地を許可対象とすること、特定陽と制限区域の
創設、準都市計画区域の導入)が定めらる。この線引き
制度への移行は、地球環境問題に向けてのコンパクト
都市形成の計画を、それぞれの自治体の裁量に委ねたこ
とを意味する。まさに、基礎自治体の先見性、力量、ビ
ジョン、行動力、決断力が、都市構築を左右する時代と
なった。

また、ただ単に環境問題対策としての環境のあり方を見
るのではなく、景観やデザインといった視覚的要素も考
慮しなければならない。ただ植林をし、緑を増やしてみ
ても、そこに統一性がなければ、個性も創出できず、環
境はさらに悪化するであろう。その表現の仕方は様々で
あるが、各地域の特色や個性を引き出せるものを創出が
必要で今後必要とされることは、

  1. 洪水、地震などの災害国である日本は、広域連携
    により市街化調整区域の緑地を担保していくこと
    が、必須であり、特に、永続的担保を行うべき緑
    地については、税制の見直し、個別自治体の枠組
    みを越える問題を考えること。
  2. あらかじめ、都市に最適な人口設定(予測)をし
    ておく。市街化調整区域という不明瞭で、消極的
    な都市計画用語を変更し、理念と思想を明確にす
    る必要がある。
  3. それぞれの土地所有者を明確にしておく。土地区
    画整理を効率的に行うために整理する必要がある。
  4. 国土利用法、農振法をはじめとする各種土地利用
    規制の縦断的見直しが必要である。
  5. 最新技術を使用し、既存のビルや住棟や駐車場棟
    の屋上にビオトープ)を作りだし、公園や大小様
    々なビオトープなどをつなぎ、ビオトープネット
    ワークを形成させる。地域における生き物の生息
    空間の拡大、ヒートアイランドの防止を目的とす
    る。
  6. 新技術を使用した、様々なシステムの活用を積極
    的に行う。(コンクリートリサイクル・グリーン
    バンクシステム、水循環システム、生ごみのコン
    ポスト化、バッシプソーター住宅、雨水地下浸透施
    設など)。

③ 市民参加型農業の必要性(農業のポイント)

農園とは単に、自給自足や市場に出荷するための農産物
を作り出すためだけに使われる場ではない。そこには、
市民との交流、自然とのふれあいの場を提供する機能も
ある。現在、相当数の市民農園や学童農園が設置されて
いて、都市住民や学童に土に親しむ機会や作物をつくる
喜びを提供している。

しかし、既存の市民・学童農園の多くは狭小な区画、無
秩序な利用、農家・利用者間の交流の欠如、貧弱な施設
などの内容面でも景観面でも不充分である。市民・学童
農園を住民共通の息い場、緑のオープンスペースとして
育てて行く必要がある。

また、農家は農地の提供者としてのみではなく、利用者
に対して農業生産や地域文化の専門家として関わること
が期待される。そのために必要なことは、
 

  1. 地方自治体による農地の確保(長期借地か、出来
    れば買い上げ)。
  2. 利用者の契約期間の長期化(年単位の契約ではな
    く、10~20年の長期利用契約が必要。)の決定。
  3. 都市計画の中への組み込み。公共施設、緑のオー
    プンスペースとしての位置付け、長期利用者のた
    めにも、長期的な都市計画の中に市民農園を組み
    込んでいく。
  4. 運営団体の育成、活動援助。運営は利用者による
    組織を育成し、行政側はその組織への活動の援助
    を行っていく。 

このように農地の確保・維持を行っていけるようにする。
その次の段階は、農家と都市市民の交流・連携の促進で
ある。市民が直接農業生産に参加し、農家と協力し、共
に働きながら地域の農地・農業を守って行く方式をとる。
これが、すなわち市民参加型農業の育成である。

この方式の提案の背景には、農業サイドにおける高齢化、
担い手・後継者不足のために農作業への支援を求める声
が強まっていると共に、都市住民の間で土や自然に触れ
たいという欲求が高まる背景がある。

また、都市住民の中には、一定の農業技術を有する者、
農業への参加により余暇や余生を有意義に過ごしたいと
考えている人が、少なからず存在し、行政や農業団体が
積極的に条件整備を進めて、市民参加型農業実現を促進
する。今後、必要とされることは、 

  1. 農地制度・税制面での制約除去
  2. 農家と都市住民の相互理解・連帯感の熟知
  3. 農業形態やプロセスの決定、農地の管理方法設定

④ 魅力創出の必要性(地域・個性のポイント)

都市が人々を惹きつけるのは、単に工業が都市集中した
だけではなく、そこに魅力が存在する。いかなるな魅力
に惹かれるかは、各人それぞれである。その都市に魅力
が多ければ多いほど、多くの人をその都市に惹きこむこ
とができる(仕事や富の集中)。

また、魅力創出には、「個性」「特色」を重視し、例え
ば、これまで数多く施行されてきた過去のプロジェクト
には「箱もの」――テーマパークやレジャー施設、郷土
資料館や博物館、美術館、宿泊施設――などがあげられ
る。

これらの箱ものは、バブル期以降衰退し、行政の前例主
義の採用により、ありきたりのものが増えすぎ、人はそ
れらに対してあまり良い評価をしなくなった。また、郷
土資料館や博物館なども、立派な建造物(器)を作った
としても、展示する品が貧弱であれば、地元の人でさえ
寄りつかないと指摘し、今後必要とされることを列挙す
る。

  1. 基幹産業を中心にその土地の産業を活性化させる
    こと。例えば、青森といえばりんご、愛媛はみか
    ん、富山は製薬、といったような、その土地から
    連想できるような農産物や工業製品を中心にその
    土地の「個性」「特色」を売り込み、外来客や観
    光客を呼び込む効果がある。
  2. 経済波及効果を引き起こす。基幹産業を中心に、
    新たなビジネスチャンスを生み出し、他の産業も
    活性化させるといった相乗効果を狙うのが目的で
    ある。

農産物自給力の弱い日本においては、このような農産物
を基幹産業とした生産拡大をすることで、農産物市場に
刺激を与え、日本全体の農業の活性化につながることが
期待できる。

⑤ 財政の有効活用

上述したような、各キーワードのポイントの沿ったまち
づくりを計画・実行するには、莫大な資金が必要である。

現在、国と地方の財源はきわめて深刻な状況(失われし
20年、デフレ不況)の日本では、レッチワースのよう
に財団の介入による、独自の財政収支方法を使用しての
まちづくりを実行する都市はない。まちづくりは、主に
市町村、地方自治体の裁量に委ねられる。

現在、特に問題なのは、まちづくりを行うための資金で
ある地方自治体の財政は、交付税特別会計の借入金によ
り辛うじて支えられているという状況である。その原因
として考えられるのは、バブル期に行った大型開発や、
バブル崩壊後、国の景気対策の地方への押しつけによる
地方事業の著しい拡大である(25)。それにより、地方
債の償還費が財政収支を圧迫したことによるものである。

こうした財政収支の危機にある各都道府県は、自治体リ
ストラと公共サービスカット、課税自主権の行使するこ
とによる、税収確保を模索している状況下で必要とされ
ることは、
 

  1. 各都道府県における独自の課税を導入する
  2. タイムリミット制の導入(無駄に継続されている
    公共事業を終了させる目的)
  3. 財政の情報公開と市民による事業評価の導入。必
    要な事業か不必要な事業かを、通信インフラを通
    じて、市民の評価により判断して行う。市民のニ
    ーズに応えやすくする効果がある。
     

などがあげられる。これらを採用することにより、資金
の有効利用を計ることができる。この他にも、利用でき
るものは、できるだけ多く効率的に利用することを常に
考えなければならないとし、以下を列挙する。
 

  1. 総合補助金の有効利用
  2. 第3セクター(28)の見直し。民間と行政との関
    係をスムーズにする。民間企業の技術や経営ノウ
    ハウをまちづくりに活用する。企業や会社が地域
    とコミュニティを作り上げることにより、農業に
    従事したいという定年後の社員に就職先提供でき
    る。また、それにより、農業後継者を確保するこ
    ともできる。
  3. 企画調整機能を利用したまちづくり、事業計画の
    実行。部分を見るのではなく、総合的な見地に立
    ち、まちづくりをプロデュース、デザインする必
    要がある。
  4. まちづくり研究会(30)を中心とした地域コミュ
    ニティの設立。自主的な参加者を募ることにより
    やる気のある人材で構成することができる。力強
    いリーダーシップのもとにプロジェクトを推進さ
    せる目的。

※ ここは、大胆な地方分権による財政基盤の強化の制
  度改革が前提となる。この件は後に考察する(筆者)。

3-3 モデル都市の構築計画―京田辺市を中
    心とした発展構想

以上のように、様々な視点から日本柄田園都市を構想し
てきた。しかし、すぐにこれらの要望を満たす都市を構
築することはできない。このプロジェクトは、長い目で
見据えなければならない。そして、最終的な目標は、ひ
とつのモデル田園都市を構築し、そこから派生し、周辺
の地域にも田園都市を構築していくという流れを築き上
げ、田園都市郡を各地に作り上げることである。それら
の田園都市郡のネットワーク・コミュニティを確立させ
ることで地方格差を是正し、一極集中から均衡した発展
へと変化させる。


3-3-1 京田辺市の魅力の創出(モデル都
      市シミュレーション)

まず、京田辺を田園都市のモデルにする理由は、上述し
た各項目理論の条件をある程度満たしているからである。
また、当市も田園都市を築き上げようと積極的に働きか
けていることもあげられる。

① 各種インフラ面における市の対応

京田辺市は、京都府の南西部、京都・奈良・大阪を結ぶ
三角形の中央に位置し、東に木津川が流れている。鉄道
駅はJR片町線(学研都市線)5駅、近鉄京都線4駅、平
成9年度よりJR東西線が開業し 大阪の中心部を経て神戸・
宝塚方面にも直結され、利便性が向上した。近年では、
学研都市線松井 山手~木津間の沿線は、住宅開発が進
み人口も年々増加傾向にある。沿線市町である京田辺市・
精華町・木津町の沿線人口は、97年には105,000人と
10年間で約30%の増加率を示している。今後も住宅
開発が計画されており、将来の旅客需要が十分に期待で
きる。

また、大住~西木津間の乗車人数は、98年までの10年
間で1日あたり11,000人となり7倍以上の伸びを示して
いる。旅客流動の面から見てみると、京田辺市の鉄道利
用者は、90年と95
年の住民流動状況を比較すると、
人口が8%の増加率であるのに対し鉄道利用者は約21
%増加する。

ここで注目すべきは、公共交通インフラの活性化に力を
入れていることで、人口流動化促進効果が実証されたこ
とである。京田辺市だけでなく、周辺地域の人口流動化
も促進するとし、京田辺市を事例に田園都市構想の展開
が示される。

                  この項つづく
                

【エピソード】 
    
     

 

 珠玉の湖東焼

【脚注及びリンク】
-----------------------:---------------------------  

  1. 田園都市 Wikipedia
  2. 日本型田園都市構想―イギリス田園都市と比較し
    京田辺市を見直す―2001.12.11 西村利也
  3. 田園都市とエソテリシズム 吉村正和 2004.03.05
  4. 田園都市論の現代的意義 中井検裕 家とまちなみ
    45、2003.7.8
  5. 住宅地計画論 1.ハワードの田園都市構想園都市
  6. 都市思想の二人の巨人、ジェイコブズとハワード:
    宮﨑洋司市
  7. 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
    佐藤健正、2016.06 28
  8. 平成 28年度 主要事業 彦根市
  9. 都市づくりの基本方針(全体構想) 彦根市
    橋梁長寿命化修繕計画による対策橋梁について
    滋賀県
  10. 彦根市都市計画道路網見直し検討調査
  11. 「まちづくりはひとづくり」をめざし 市民主
    のまち創る-近世城下町彦根市本町地区の2
    例の
    場合-(これからの都市づくりと都市計画
    制度全
    国市長会) 中島一 2005.05.09
  12. 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
  13. 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
  14. ドイツ流 街づくり読本  水島信
  15. 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  16. 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  17. 都市計画1 日本の都市計画制度の概要 大谷英一
  18. 都市計画2 都市の歴史と都市計画 大谷英一
  19. 都市計画の理論 系譜と課題 高見沢実編集
  20. 道路をどうするのか 五十嵐敬喜・小川明雄 岩
    波新書
  21. 日本の道路史 武部健一 中公新書
  22. 道のユニバーサルデザイン 鈴木敏 技報堂
  23. 道路が一番わかる 窪田陽一 技術評論社
  24. 「道路」についての国際比較 藤井聡 2010.3.14
  25. 彦根市都市計画道路網見直し指針 
  26. 地域別のまちづくり方針(地域別構想)-彦根市
  27. 彦根市新市民体育センタ整備基本計画 2016.10.31 
  28. 彦根市立図書館|簡易検索
  29. 中心市街地の活性化に関する法律 Wikipedia
  30. 富山市におけるコンパクトなまちづくりの進捗と
    展望 2014.11.26
  31. アウガ Wikipedia
  32. 富山市 人と環境に優しいまち 公式HP
  33. 青森市 都市計画マスタープラン 公式HP
  34. コンパクトシティはなぜ失敗 するのか 富山、
    青森から見る居住の自由 2016.11.08, Ya hoo!ニュー
  35. <アウガ>2副市長辞任 青森市政混迷増す 河北新
    2016.01.28
     

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田園城郭都市構想 Ⅳ

2017年01月21日 | 湖と城郭都市

 

  

1.ハワードの田園都市構想
2.田園都市論の現代的意義



Entrance to St Francis Wood, early 1920s.

3.日本型田園都市構想

3-1 イギリス田園都市から学ぶこと

西村利也著「日本型田園都市構想―イギリス田園都市と
比較し京田辺市を見直す―」によれば、レッチワースと
は、エベネーザー・ハワードの田園都市コンセプトを初
めて具体化した田園都市であった。そのコンセプトとは、
「都市と農村の融合」である。彼の描く田園都市は、単
なる新しく開発される都市像ではなく、都市経営、土地
保有制度、税制までも視野に入れた新たな社会像である。
彼の基本理念の特徴は、①土地の公有、②コミュニティ
の自治と協同、③都市―農村の結合/工業・
農業の均衡、
④組織的成長管理/分散的ネットワークの4つであった。



Foutain in St. Francis Wood early 1920s.

3-1-1 現在のレッチワースの状況と課題

このような理念を基につくられた田園都市であるが、現
在に至るまで多くの問題点と課題も浮き彫りとなる。な
お、
99年度のレッチワースは、人口 32,067人、市街地
900ha、農地面積 930haである。人口は計画の数字とほ
ぼ一致しているが、市街地が増え、農地が大幅に減少


①住居:テラス形式が4割、独立住宅2割を占め、長期
空き家になっている独立住宅が増加。理由は、ロンドン
への通勤時間が長いこと、借地契約残存期間が短くなり、
ローンを組むことが短くなり、市場性が狭まる。

②店舗:ハワードが提示した、一業種・一店舗の原則は
守られていない。というのも、レッチワース自体が一種
の観光地化し、特定の業種の集積などによる特徴付けが
求められ、比較購買が商店街の大きな魅力要素であるこ
とが理由にある。

③工場・事務所:135haの工場(工業)地帯がある一方、
オフィス・会社は、撤退した大学校舎を事務所に改装し
たビルに外資系企業が入居しているという状況である。

④農業:現在、レッチワース・ガーデンシティファーム
ズ(株)(以下、GC)がレッチワース・ガーデンシティ・
ヘリテージ財団(以下、GC・HF)から土地を借り、直接
農業経営を行っていたり、農家に転貸したりしている。
また、直売所もあり、ハワードの想定どおり地元産の野
菜は値段が高くても売れる

⑤財政:現在、土地の所有・管理はGC・HF行っている。
 
そのバランスシートの経営指標を日本の三菱地所(株)
と比較してみる。
全般的にレッチワースGC・HFは三菱地
所に比べ各勘定科目で2桁以上
少ない違いがある。しか
し、収益性基準、流動性基準におい
ては遜色なく、自己
資本固定比率(固定資
本に占める自己資本の割合)では
三菱地所
の約5倍であり、財務面では安定している。

現在のレッチワースの課題   

  1. ハワードの農村観は常に都市側からの利用という
    点に立っており、農村の振興、再生への提言と
    みた場合に不充分である。
  2. 良好な住環境を財政的に成功する形で提供するこ
    とに集中した田園都市協会の主導によって建設が
    進められたために、都市農村融合が実現されなか
    った
  3. 在住者の40%はロンドンなどへの通勤者であり、
    現在はややベッドタウン化している。
  4. 農業生産物は一度ロンドンの中央市場に出荷され
    てしまい、地域内流通、域内自給 いう点では弱
    い。
  5. 郊外ショッピングセンターの影響で、市内の店舗
    は閉店、衰退する傾向にある。
  6. 景観・緑地維持のための新しいビル開発を抑制し
    なければならない。
  7. ここ20年間における産業構造が変化し、現在は
    流通業、ライトエンジニアリング、コンピュータ
    ー関連産業が増加した。これらの新しい産業・企
    業の誘致が必要である。

これらの課題は、日本型田園都市を構築するにあたり共
通したものも多く、参考とし考慮する必要がある。

3-2 日本型田園都市の展開

3-2-1 日本とイギリスの比較

様々な問題を抱えながらも、レッチワースは、最も完成
度の高い田園都市のモデルとして参考になるが、その理
念の全てを日本という国土にレッチワースのような基本
理念が当てはまらない。イギリスと異なる農村観を持つ
国においては、その適用性は限界がある(気候、農園の
規模、農産物市場の違いなど)。

現在、日本型田園都市として開発された東京田園調布の
モデルはレッチワースではなく、ハワードとは何の関係
もないサンフランシスコの高級住宅地サー・フランシズ
ウッドである。このような状況になった背景には東京の
急速な人口増大に対して、郊外に良好な住宅地をつくる
ことは理解できても、職場を分散させ、自立的な都市郡
を形成する必要性は、当時の日本人には認識されなかっ
たことがあげられる。

また、急速な近代化を目指していた日本人にとって、す
でに社会は成熟期を迎え、生産から生活へ人々の価値観
の転機から現れてきたイギリスの近代都市計画の理念は、
理解の範囲を超えていたようである。そのため、ハワー
ドが唱えた田園都市のコンセプトは、海外では否曲され
伝わり、田園都市というより住宅地だけを都市郊外に切
り離し、働く場所としての大都市と鉄道で連結したもの、
つまり田園郊外と呼ぶべきものになってしまったのであ
る。

今後の展望は、このような過去の失敗を踏まえた上で、
日本の現状、土地制度、風土、文化、技術など様々な点
を考慮し、都市と農村の一体的整備、運営がなされるよ
うな日本型田園都市を形成しなければならない。



Similar view, 2007

3-2-2 日本型田園都市の作り方

ハワードが唱える田園都市構想は大都市から離れたとこ
ろに「単体」としての田園都市に注目している。つまり、
更地に新都市をつくることを目指したのである。しかし、
現在の日本において更地に新都市をつくには、あまりに
も多くの都市が既に構築され混在しているので、その発
展性、将来性、財政面を考慮し予測した場合、長期にわ
たる計画の上、ある特定の地方都市を発展させるに留ま
り、日本全国に数ある地方都市を潤すことにはならない。

このことから、まず考えるべきは、既存の小都市や町村
から議論を出発させ、そこに都市計画を樹立し田園都市
を整備していくことを考えるべきである。また、イギリ
スも日本も問題は共通であり、考えるべきことは、いか
にして都市への人口集中を抑え、人々を土地に戻すかと
いうことである。その問題を解決する一歩は、都市への
人口集中を招いた原因を熟考することである。

3-2-3 都市計画理論による問題是正

なぜ都市に人口が集中したか。その理由は簡単で、大都
市に工業が集中したためである。まずは、その工業を地
方に分散しなければならない。その工業を受け入れるに
は、設備の整った小都市が必要となる。その小都市が、
田園都市となるわけである。以下、はじめにで列挙した
5つのキーワードを基に問題是正への提案をする。

① 各種インフラの必要性(交流のポイント)

現在、上述したような施設の整った小都市は、日本には
一つもないのが現状である。そこで、設備の整った小都
市をつくるためには、鉄道施設や通信、情報といった各
種インフラ、住宅地などを優先的に整備することは絶対
条件である。

特に、通信インフラのメリットは、地方や過疎地におい
て際立つものである。通信インフラによるネットワーク
化を推進することにより、生活と自然、そして職場を一
体とする職住一体というライフスタイルを取り戻すこと
ができ、ベットタウン化の防止にもなる。

また、住民参加型の町づくりを推進するにあたり、情報・
通信インフラは、住民と行政のコミュニケーションギャ
ップの解消、住民参加に参加したいとする新たな住民の
掘り起こしなどに、大変効果的なツールである。インタ
ーネットを媒体とした情報・通信インフラは、情報不足、
時間不足、資金不足が理由で住民が参加できないという
障壁を取り除くことのできる有効な手段である)。

今後、必要とされること、

  1. パソコン普及の促進。公共のパソコン使用施設の
    展開(インターネットカフェなど)。
  2. 高齢者に対しての情報機器使用方の指導、教育提
    供(パソコン教室などの開催)。
  3. 情報管理システムの整備。

などがあげられる。

そして、もう一つ重要なのは、交通インフラである。地
域の発展とは、換言すれば、「都市と地方との交流事業」
である。都市と地方の間で人々が活発に行き来すること
により初めて人が地方に流れ込み、モノが動き、カネが
動くのである。それが都市の活性化を引き起こし、地域
を発展させる。人、モノ、カネの地方への流動化を促進
させるためには、交通インフラの整備は必須であると、
著者の西村利也このように展開を述べている。

                   この項つづく

【エピソード】 
    
     

 

【脚注及びリンク】
-----------------------:--------------------------- 

  1. 田園都市 Wikipedia
  2. 日本型田園都市構想―イギリス田園都市と比較し
    京田辺市を見直す―2001.12.11 西村利也
  3. 田園都市とエソテリシズム 吉村正和 2004.03.05
  4. 田園都市論の現代的意義 中井検裕 家とまちなみ
    45、2003.7.8
  5. 住宅地計画論 1.ハワードの田園都市構想園都市
  6. 都市思想の二人の巨人、ジェイコブズとハワード:
    宮﨑洋司市
  7. 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
    佐藤健正、2016.06 28
  8. 平成 28年度 主要事業 彦根市
  9. 都市づくりの基本方針(全体構想) 彦根市
    橋梁長寿命化修繕計画による対策橋梁について
    滋賀県
  10. 彦根市都市計画道路網見直し検討調査
  11. 「まちづくりはひとづくり」をめざし 市民主
    のまち創る-近世城下町 彦根市本町地区の2
    例の
    場合-(これからの都市づくりと都市計画
    制度 全
    国市長会) 中島一 2005.05.09
  12. 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
  13. 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
  14. ドイツ流 街づくり読本  水島信
  15. 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  16. 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  17. 都市計画1 日本の都市計画制度の概要 大谷英一
  18. 都市計画2 都市の歴史と都市計画 大谷英一
  19. 都市計画の理論 系譜と課題 高見沢実編集
  20. 道路をどうするのか 五十嵐敬喜・小川明雄 岩
    波新書
  21. 日本の道路史 武部健一 中公新書
  22. 道のユニバーサルデザイン 鈴木敏 技報堂
  23. 道路が一番わかる 窪田陽一 技術評論社
  24. 「道路」についての国際比較 藤井聡 2010.3.14
  25. 彦根市都市計画道路網見直し指針 
  26. 地域別のまちづくり方針(地域別構想)-彦根市
  27. 彦根市新市民体育センタ整備基本計画 2016.10.31 
  28. 彦根市立図書館|簡易検索
  29. 中心市街地の活性化に関する法律 Wikipedia
  30. 富山市におけるコンパクトなまちづくりの進捗と
    展望 2014.11.26
  31. アウガ Wikipedia
  32. 富山市 人と環境に優しいまち 公式HP
  33. 青森市 都市計画マスタープラン 公式HP
  34. コンパクトシティはなぜ失敗 するのか 富山、
    青森から見る居住の自由 2016.11.08, Ya hoo!ニュー
  35. <アウガ>2副市長辞任 青森市政混迷増す 河北新
    2016.01.28
     

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田園城郭都市構想 Ⅲ

2017年01月19日 | 湖と城郭都市

  

1.ハワードの田園都市構想
2.田園都市論の現代的意義

2-3.住宅地の空間

田園都市論の中でも、住宅地の空間像は日本では最も熱
心に輸入、研究、
実践される。住宅地の空間像の大部分
はハワードではなく
田園都市論に共感し、レッチワー
スの設計を
手がけたレイモンド・アンウィンとパリー・
パーカーによって生み出されたものである。この空間像
とそれを具
現とする設計の規範は、良好な郊外住宅地の
基準として、世界各国で採り入れられることになる。



Barry Parker & Raymond Unwin

ここで、中井は、田園都市論を世界に普及させたという
意味
は、最もパワフルなコンセプトともいえるが、ジェ
ーン・ジェイコブズをはじめとして
これに対する批判も
少なくない。その批判を
集約すれば、都市と住宅の関係
の分離、およ
び多様性の欠如の2点であると指摘する。

①都市と住宅の関係の分離とは、田園都市の住宅は都市
生活と切り離されている、言い換
えれば、住宅空間が都
市の公共空間で営まれ
る人々のパブリック・ライフと有
機的に関連
づけられていないという批判。

一方の多様性の欠如はいうまでもなく、田園都市的
宅地の居住者は均質化されており、多様性
に欠けるとい
う批判である。

いわゆるニュー・アーバニズムは、このような批判に対
応して台頭してきたものと考えることができ、
都市のパ
ブリック・ライフを活性化させるような住宅と公共空間
の関係が模索され、アフォーダブル住宅や社会住宅を含
めることで、居住者層に多様性を確保しようとしている。



写真1

英国、ドーチェスター郊外、パウンドペリーの新規開発。
レオン・クリアーのマスタ
ープランによるこの住宅では
、住宅と街路の関係が意識されている。また、個々の住
宅デザイン
はデザインコードによってコントロールされ
る。



写真2

同じくパウンドペリーの新規開発。街のところどころに
広場が配置される

写真1、2は、イギリス南西部の小都市ドーチェスター
で現在行われている開発。
パウンドペリーと呼ばれてい
るこの開発は、
既成市街地の拡張として行われている新
規開
発で、もともとの土地所有者はコーンウォール公、
すなわちチャールズ皇太子であ
り、皇太子が建築家レオ
ン・クリアーにマス
タープランを依頼した開発として知
られてい
る。

その基本コンセプトは「経済的、環境的、
社会的に持続
可能な開発の形態」として定義
されている「アーバン・
ビレッジ」の建設で
ある。アーバン・ビレッジは、(1)
複合用途開
発、(2)多様な保有形態、(3)比較的高密
度、
(4)高品質のデザイン、(5)公共交通、自転車、
徒歩優先、(6)職住近接による独立性の確保、(7)コ
ミュニティの関与、などによって特徴
づけられるが、い
わばニュー・アーバニズムのイギリス版である。

写真からわかるように、田園都市とは異なり、かなり住
宅と公共空間である街路や広場との関係を重視した空閲
デザインを採り入れている。また写真では識別できない
が、これらの住宅はタイプ、保有形態に多様性がもたせ
られ、また高齢者対象の社会住宅なども含まれることに
よって、開発全体として、均質化されたコミュニティで
はなく、バランスのとれたコミュニティの形成が促され
る。

パウンドペリーは新規開発であるが、既成市街地の再開
発にアーバン・ビレッジのコンセプトを採り入れた例が、
マンチェスターのヒューム地区の再開発。ヒュームは19
60年代に建設された住宅団地がスラム化したため、それ
を1990年代に建て替えた再開発であるが、団地内に周辺
のコンテクス
トを意識した街路が再建設され、やはり街
という公共空間と住宅の関係が重要視されている。ま
たこちらでは複合用途によって、都
市活動の多様性が意
図されていることも見て
とれると述べ、現代日本にあて
はめれば、町家やそれに代わる都市型住宅の空間像であ
り、環境問題や高齢化を考えれば、最適かどうかはさて
おき、有力な選択肢の1つであると指摘し、次のように
問題提起する。

かつて田園都市の住宅は、ほとんど全ての人にとって
終的な棲家像であり、住宅双六のあがりに位置していた
が、状況は変わり、この意味で、住宅地の空間像という
点で、田園都市の意義は薄れているが、その意義が完全
に消滅したわけではない

①まず第一に、唯一といってもよい住宅地像から、多様
な住宅地像の選択肢の1つへと変化したものの、依然と
して人々が求める理想住宅地であるという事実は変わら
ない。田園都市の提供した郊外住宅地像は、戸建て指向
が依然として強いわが国にあっては、引き続き重要な選
択肢であり続ける。

②第二に、レッチワースの住宅もパウンドペリーの住宅
も、デザイン面で共通している点があることに気づく。
レッチワースの住宅の設計にあたって、アンウィンは
セックス地方の伝統的集落を念頭においていたが、パウ
ンドペリーではド一セット地方の伝統的集落がイメージ
されておち、デザインに非常に強いテーマ性が与えられ
ていると同時に、ヒューマンスケールとその地方固有の
バナキュラーなデザインが強調されており、そこに機能
重視の近代主義に対するアンチテーゼを感じると述べる。



写真3 The village of Finchingfield in north Essex

4.都市の自立経営

ハワードは、田園都市は資本家によって出資設立された
株式会社によって開発され、地主である株式会社が土地
や建物を居住者に賃貸し、その賃貸収入を株式会社が再
度インフラの整備に投資するというシナリオを描く


田園都市論が他の理想都市論と決定的に異なっているの
は、それが田園都市の実現のシナリオを綿密に検討し、
描き出している点にある。この意味では田園都市論の核
心ともいえる「都市の自立経営」の理念だが、わが国で
はこれまであまり力点が置かれておらず、それが取り上
げられる場合は、開発利益の公共還元というコンテクス
トにおいてがほとんど。

ハワードの理念に従って、レッチワースは、株式会社で
開発運営され、その後、会社法人を経て、現在は財団が
その運営にあたる。このような例は極めて特殊で、都市
の経営は日本と同様に、イギリスでも一義的には自治体
の責任である。ハワードの提唱する株式会社による「都
市の自立経営」は、その方式自体も検討に値するだけの
現代的意義を有していると考えられるが、当面の現実の
問題意識としては、その精神を現代に照らしてどう解釈
するかということになる

開発利益の還元論から見れば、ハワードの「都市の自立
経営」論は、地域への投資は地域から回収するという論
理構成として捉えることになるが、中井は、「都市の自
立経営」の核心は、地域から得られた収入を再び地域に
再投資する点にあると考える。

そして、ここでいう株式会社は、営利を目的とした会社
ではなく、現代的にそれを解釈するならば、民間の非営
利法人
、すなわちNPOという方が正しい。このNPOは、
テナントである地域の住民と密接な関連を保ちながら、
住民の付託によって地域の管理を行っていると述べる。

日本でも、全国各地でまちづくり協議会が設立され、地
域の運営管理に関わるようになってくるが、これらのま
ちづくり協議会の活動は、ほとんど、無償もしくはわず
かばかりの運営資金で、基本的には住民の良き意志に基
づくボランティア精神を土台に形成される。田園都市論
のいう「都市の自立経営」の精神は、まちづくり協議会
を、財政的な安定を.一定程度に確保させたNPO化する
独立した専門領域として確立することで生きると解釈、 
さらにこの議論を発展させ、ハワードの「都市の自立経
営」の考え方は、都市、人々が集合して居住、活動する
場における「公的なもの」とは何かという問いに対し
々な可能性を提供
してくれるように思われる。少なくと
もハワードは、地域が地域の自発によってその管理に携
わるとき、その主体は何であれ、それは「公的なもの」
と同等にみなすことができると考えていたとする。実際
ハワードは政府というものを信頼していなかった。だか
らこそ、「公的なもの」を政府以外の主体に見出そうと
したのである。

さらに、中井は、このような見方は、長く「公的なもの」
=「政府」という図式が定着していたわ日本では新鮮で
あり、日本では、「公的なもの」とは何かという問いか
けが始まったばかりであり、地域の公共性とは何か、あ
るいは地域の公的な主体とは何か、それは政府とどう異
なるのか、などまだまだ議論すべきことが多く、「公的
なもの」=「政府」という図式から脱却し、公共性の再
編を行うために、ハワードの「都市の自立経営」論は、
大きな手がかりを与えると期待を寄せる。



5.残された課題

これまで、田園都市論を構成する①「ソーシャル・シテ
ィ」、②「都市と農村の結婚」、③「住宅地の空間像」
④「都市の自立経営」の理念について、その現代的意義
を考察。その内容はあくまでも筆者の覚え書きであるか
ら、それぞれについて議論すべきところはまだまだある
が、依然としてまだ2つの大きな課題が残されていると
次のように述べている。

その第一は、『明日』の副題に『真の改革に至る平和
的道程』とされていることが何よりも物語るように、こ
ういつた田園都市論を通じて、ハワードが最終的に思い
描いていたことは、社会改革であったということである。
では現代日本における新田園都市論にも、究極の目標と
して社会改革があるとすれば、「社会改革」の現代的意
義は何なのか。

第二は、ハワードの田園都市論が、様々な理念を具現
化したパッケージとしてレッチワースで提示した、新た
な田園都市論はどのような「レッチワース」を示しうる
か?田園都市の個々の理念についての現代的意義を、再
度、パッケージとして組み立て直すという作業が必要と
なると指摘する。

そして、第一の課題に対して、現時点での仮説を述べる
とすれば、新田園都市論の目指す社会改革とは「国家依
存型社会からの脱却と市民社会の確立」ということにな
り、第二の課題は、新田園都市論の「レッチワース」は、
ひょっとするとレッチワースのような具体的な都市の集
住形態ではなく、非空間的な集住の理念のような予感が
するが、だが、100年後の現代においてもこのような
仮説や予感をもたらす創造力を備えたハワードの田園都
市論は、やはり奥深いと再確認し結んでいる。

【エピソード】 
    
     

 

Dorchester Prison development 'will not include affordable homes',
Jul. 15, 2016, BBC NEWS

財政難はどの国でも同じ?


【脚注及びリンク】
-----------------------:--------------------------- 

  1. 田園都市 Wikipedia
  2. 田園都市とエソテリシズム 吉村正和 2004.03.05
  3. 田園都市論の現代的意義 中井検裕 家とまちなみ
    45、2003.7.8
  4. 住宅地計画論 1.ハワードの田園都市構想園都市
  5. 都市思想の二人の巨人、ジェイコブズとハワード: 宮
    﨑洋司市
  6. 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
    佐藤健正、2016.06 28
  7. 平成 28年度 主要事業 彦根市
  8. 都市づくりの基本方針(全体構想) 彦根市
    橋梁長寿命化修繕計画による対策橋梁について
    滋賀県
  9. 彦根市都市計画道路網見直し検討調査
  10. 「まちづくりはひとづくり」をめざし 市民主
    導のまち創る-近世城下町 彦根市本町地区の2
    例の場合-(これからの都市づくりと都市計画
    制度 全国市長会) 中島一 2005.05.09
  11. 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
  12. 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
  13. ドイツ流 街づくり読本  水島信
  14. 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  15. 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  16. 都市計画1 日本の都市計画制度の概要 大谷英一
  17. 都市計画2 都市の歴史と都市計画 大谷英一
  18. 都市計画の理論 系譜と課題 高見沢実編集
  19. 道路をどうするのか 五十嵐敬喜・小川明雄 岩
    波新書
  20. 日本の道路史 武部健一 中公新書
  21. 道のユニバーサルデザイン 鈴木敏 技報堂
  22. 道路が一番わかる 窪田陽一 技術評論社
  23. 「道路」についての国際比較 藤井聡 2010.3.14
  24. 彦根市都市計画道路網見直し指針 
  25. 地域別のまちづくり方針(地域別構想)-彦根市
  26. 彦根市新市民体育センタ整備基本計画 2016.10.31 
  27. 彦根市立図書館|簡易検索
  28. 中心市街地の活性化に関する法律 Wikipedia
  29. 富山市におけるコンパクトなまちづくりの進捗と
    展望 2014.11.26
  30. アウガ Wikipedia
  31. 富山市 人と環境に優しいまち 公式HP
  32. 青森市 都市計画マスタープラン 公式HP
  33. コンパクトシティはなぜ失敗 するのか 富山、
    青森から見る居住の自由 2016.11.08, Ya hoo!ニュー
  34. <アウガ>2副市長辞任 青森市政混迷増す 河北新
    2016.01.28

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