すばるに恋して∞に堕ちて

新たに。また1から始めてみようかと。

STORY.25 向日葵

2009-07-06 18:45:42 | 小説

お待たせしました。
(・・・誰も、待ってないか?

妄想小説も、はや、25話めまできました。

これを書いたのは、昨年。
アイドル誌のグラビアで、片手に大量の向日葵をもって、
こっちを向いて、いつもの、あの笑顔で、
「にぱッ!!」
って、笑ってるやつです。

向日葵みたいに、
すばちゃんだけ見て咲いていたい。

でも、きっと、すばちゃんは、
凛として、自分の力で咲いてる花が好きなんだろうなあって、

そんなことも思いながら、書き上げました。

お付き合いくださる方は、続きから。

どうか、すばちゃんに愛されてください。


Story.25   《 向  日  葵 》





仕事終わり、彼女のアパートに向かう道の途中。

彼は、通りがかった花屋の店先に、目を奪われた。

そこには、鮮やかな黄色の向日葵が、青いバケツに無造作に入れられていた。

花自体は、やや小ぶりではあるものの、
それでも、他の花に比べたら圧倒的な大きさで、そこにあった。



彼は、吸い込まれるように店に入ると、
忙しそうに立ち動く店員に、思い切って声をかけた。

「あの・・・、
 ・・・・・・あそこの、向日葵なんやけど」

「ああ。はい」

店員のおばちゃんは、ニコニコしながら、彼の方を向いた。

────── うわぁ、めっちゃ、愛想よさそうやわ、この人。

そう思った途端、彼は次の言葉に詰まってしまった。

────── どないしよ、なんて言おう。

彼の様子を、無視するように店員が尋ねた。

「ご自宅に飾られる? それともお使い物ですか?」

────── は? なに、それ。

彼は、『お使い物』の意味に、一瞬、戸惑った。

「どなたかへのプレゼント?」

店員が、苦笑しながら言い直す。

「いや、あの、えっと・・・、そんな堅苦しいもんとちゃうねんけど・・・」

「この時期だけやからね、向日葵は。
 一本でも、十分、見ごたえはあるけど、
 まとめて飾ると、圧巻ですわ。
 ここは花屋やから、そう目立ちもせえへんけど、
 花瓶に生けると、それだけで、部屋中が、いっぺんに明るうなるから」

にこやかな店員は、立て続けに言った。

「花言葉なんか、知ってはる?」

「いや、そういうのんは・・・」

「憧れとか、崇拝っていうのが、まぁ、一般的なんやけどね。
 太陽に向かって咲く姿からの、連想なんやろねぇ」

「そうですか・・・」

────── めっちゃ、話好きやん。
       ああ、もう、どないして切り上げたらええねん。

それから十数分の間、
彼は、このおばちゃん店員から、
向日葵の種類やら由来やらを聞かされることになった。

彼は、どこで話を切り上げさせたらいいのか、判らずにいたのだが、
このおばちゃん店員は、そんなことは、感知していないようだ。

「そういえば、ほかにも、花言葉はあって。
 あなただけを見つめてるって、いうんやけどね。
 なんか、かわいいでしょ?
 こんなに、綺麗で鮮やかで、人目を引く花はないのに、
 誰からだって好かれて、引く手あまたやのに、
 一心不乱に、好きな人の方しか見てないなんてねえ」

────── 人と花と、ごっちゃになっとるやんけ。
    

「そしたら、この向日葵、ください」

おばちゃんの話に、いい加減、うんざりしていた彼は、
ようやく、そう言った。

「おおきに。
 ラッピングは、どないしとこか」

「ああ、ええわ、そのまんまで」

「このままで、ええの? 包まんと?」

「近くやし、ごみになるようなもんも、いらんし」

「そうかあ?」

言いながら、おばちゃん店員は、
向日葵をごっそり、持ちやすいように括っている。

「え! いやいや、これ、ちょっと多すぎひん?
 こんなには、いらんで。1本でええんやけど」

「もう、今日は、これで店も終いやから、お、ま、け。
 ちょっと持ちにくいかもしれんけど、近くなら、ええでしょ」



1本分の花代を支払って、彼は店を後にした。

────── いや、ほんまに全部おまけやん。
       あんなんで、店、やってけんの?

彼は、手に持たされた向日葵に目をやった。

10本以上はあろうかという花の集まりは、確かに、
1本よりも存在感は抜群だ。



通りから一本外れた路地に入ったところにある、彼女のアパート。



彼は、玄関のインターホンを押した。

ピンポーン!

軽快なチャイムが鳴る。

インターホン越しに、彼女の声。

「はい」

「あ、オレ」

「待って。すぐ開けるから」

ロックをはずす音がして、ドアが開いた。


「キャッ!」


小さく、彼女が声を上げる。

目の前に、鮮やかな黄色い花の群れ。
それが向日葵だと気付くのに、ほんのちょっと、時間がかかる。

花の横から、彼が顔を見せた。

「ビックリしたやろ?」

言いながら、彼は、部屋に入った。

「うん。どうしたん、それ?」

「買うた」

「そんなに?」

「う~ん、買うたんは、1本だけやねんけど」

「わかった、それ、表通りの花屋だ」

「そうやけど、なんでわかんねん」


彼女は、花瓶を用意しながら、言った。


「あそこ、元気のいい、懐こいおばちゃん、おったでしょ」

「ああ・・・」

彼は、さっきの、おばちゃん店員を思い出した。

「あの人な、ああ見えて、あそこの店長さんなんやけどな」

彼女は、彼の手から花を受け取った。

「店終いの頃に来たお客さんには、注文より多めの花、包んでくれるんよ」

花瓶に向日葵を生けると、テーブルに置いた。

「めっちゃ話好きそうで、どないしようかと思ったわ」

彼女は、そんな彼を見て微笑うと、

「ありがと」

言いながら、彼の首筋に抱きついた。

「部屋が、いっぺんに明るくなったわ」


抱きついてきた彼女の腰に腕を回し、
彼は、彼女の香りを、より近くに感じようとした。

「向日葵、こっち、見てるよ」

彼の仕草を制するように、彼女が言った。

「なんか、こんだけあると、誰かに見られてるような気分になるわね」

「ああ、そら、そうやろ」

彼は、彼女を抱きしめたまま、言った。

「花言葉、知ってる?」

「向日葵の? 確か・・・、憧れとか、そんなんだったんちゃう?」

「お、よう知ってんな、さすがやん。
 でも、まだ、あるねんて」

「他にも、あるの?」

「“あなただけ見つめてる”っていうんやって」

「へえ、よう知ってるんやね」

「さっき、花屋のおばちゃんが教えてくれた」

「あ、すごい、ちゃんと会話してきたんだ」

「あれは会話って言わへんわ。
 一方的に向こうがしゃべっとっただけやから」

「ん、もう。どんだけ人見知りなん?」

彼女が、彼の顔を見上げて微笑った。

その笑顔が可愛くて、彼は、また彼女を抱き締めた。

「この花は、オレの気持ち。
 あんまり、お前のそばにいてやられへんから。
 淋しくないように、な」

彼女は、応えるように、彼にしがみついた。

「あ、でも、監視するとか、束縛するつもりはないからな。
 お前は、お前のしたいようにしてたらええねんで。
 今のまんま、互いに、自由にしてるんが一番ええねん」

彼女は、彼の腕のなか、
黙って、彼の胸に顔をうずめている。

「ほんでも、もしかしたら、淋しくて迷う時もあるんちゃうかなって。
 そんな時、この向日葵、思い出してくれたら、
 オレの気持ちも伝わるかなあって、思っただけやねん」

「・・・・・・」

彼女の肩が、小刻みに震えている。

「え、オレ、なんか、おかしなこと言うた?」

彼女の顔を上げさせて、彼は、うろたえた。

「ちゃうやん、なんで泣いてんねん。
 泣き顔見たくて、花、買うてきたんとちゃうぞ」

彼女の頬を伝わる涙を、彼はその指で拭いた。

「ごめん、でも、嬉しくって。
 私のこと、考えてくれてるんやなあって思ったら、
 涙、出てきちゃった」

涙でくしゃくしゃな顔で、彼女は笑顔を作った。

「いっつも、放っといてばっかやからな」

「ううん、それは、ええの。
 仕事やってわかってるし、男同士の付き合いやって大事やし。
 全部判ってて、あなたとこうしてるんやから」

彼女は、彼を見つめた。

「それでも、ね。時々だけど、不安になるの。
 私で良かったんかなあって。
 もっと、ほかに素敵な女の人、いくらでもいてるのに、
 あなたのこと、もっと応援してくれる人、
 いっぱい、いてんのになあって」

「あほか。また、そんなこと言うんか」

彼は真顔で、彼女を見据えた。

「ええか、いっぺんしか言わへんからな、よう聞いとけよ」

彼の瞳に彼女が映る。
吸い込まれていくような、深い色。

「確かに、オレはこんな仕事してるから、応援してくれる人は、ようけ、いてる。
 それは、ほんまに、有り難いことや。
 せやけど、オレの心ん中まで入り込んで、
 オレを真ん中で支えてくれてるんは、お前だけやからな。
 オレが、たとえ、どっか他を向いてるように見えても、や。
 心は、絶対に、お前の方を向いてる。
 ちょうど、この向日葵が、太陽の方を向いて育つように。
 ええか、忘れんなや」

言葉をだしたら、また、泣き出しそうで、
彼女は、ただ黙って頷いた。

そして、心の中でつぶやいた。

────── 向日葵なんは、私も同じ。
       いつも、あなただけ見つめて、
       あなたという太陽の光、浴びてないと枯れてしまうのよ。
       輝き続けていてね。
       たとえ、他の向日葵が違う太陽見つけて、そっぽ向いても、
       私は、私だけは、あなただけ見つめてる。



「なあ、なんや、こう・・・」

彼女を抱き締めたまま、彼は、その耳元にささやいた。

「このまま、しても、ええ?」

彼女は、彼を見上げて、小さく笑った。

「だめ! 見られてるみたいで、恥ずかしいもん」

言いながら、するりと、彼の腕をすり抜けた。

「ええやん、いうても、ただの花なんやし」

追いかけるように、彼は、彼女を抱きとめる。

彼に向けられたのは、
向日葵そのもののような笑顔だった。


彼のためだけに咲いた向日葵。


彼はこの笑顔を、ずっと見ていたい、守りたい。


そう、思った。

そのためになら、どんなことだってする。
足りん力を振り絞ってでも、
この笑顔だけは、枯らさん。


そう、誓いを新たにしたのだった。





FIN.






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いいなぁ

2009-07-06 15:12:20 | 日記

いいなぁ。

呑気だなぁ。

私もこんな顔で、寝てたいなぁ。



なんだか、
落ち着きない1日を過ごしてます。


夜には、
妄想小説を一本、UPしたい私です。

ちょっと前のだけど、
いいよね。

新作は、今、言葉が降りてくるのを待っている段階だから。

まだ少し、時間が掛かるかも。


あ。

また出掛ける時間だぁ。