12月議会の質問をもとに、草加市の財政状況や今後の見通しについて全3回のシリーズにまとめました。
第2回目は、スクラップ・アンド・ビルドと事業見直しについてです。
草加市が市役所の各部局に示した令和4年度予算編成方針は、3つの判断基準をもとにつくられました。その判断基準をもとに各事業の予算編成が行われています。具体的には、①スクラップ・アンド・ビルドの徹底、②予算事業の見直し、③歳入の確保の3項目です。そのうち、今回は①と②についてです。
■スクラップ&ビルド
予算編成方針では、各部局にスクラップ&ビルドの実施を求めています。事業課が、新規事業や既存事業の拡充を考えた場合、部局内で十分な精査をおこなうと同時に、その財源は「積極的な事業廃止や見直し等により生み出すよう検討を行うこと」と求めています。これでは、住民からの要望を受けて事業を組み立てようと思っても、部局内の他事業を削らなければ実施できなくなってしまいます。
そこで、スクラップ&ビルドの考え方について市に質問しました。市は「市民の皆様からお預かりした限りある財源を有効活用するための基本的な考えに基づくもの」としたうえで、「全ての新規事業の実施について同程度の既存事業の財源を削減するということを想定しているものではない」と説明しました。また、実際には財源に見合う削減ができない場合でも「各部局室において十分な検討・精査を行った後、市としての必要性・緊急性が高い事業については事業実施は可能」との柔軟な姿勢も示されました。
次に、予算編成方針では「必ず枠配分額※の範囲内で予算の見積もりを行うこと」としています。枠配分は、積み上げ方式による予算編成ではなく、各部局に一定の予算枠を配分してその中で予算を編成していく方式です。(かなりザックリとした説明ですが…)
つまり、「必ず部局内の枠内で予算を出しなさい」「超えるなら部局内の他事業を廃止・削減しなさい」とも読み取れます。結果、各部局は市民に必要なサービスの判断より、財政に引っ張られた削減路線につながってしまうことが懸念されます。柔軟な運用はできないのか市に質問したところ、市は「今後の状況等の変化を受けて(事業を)追加する場合には柔軟に対応してまいる」と答えました。
なお、各部局からの新規事業などの予算要求(特殊要因事業費)は、調査段階で70億円規模ですが、最終的に30~40億円規模に調整されていることが示されました。
■予算事業の見直し
予算編成方針の判断基準の2つ目、「予算事業の見直し」についてです。
予算編成方針では、市民の生命や安全に関わる事業以外は聖域がないものとして、各部局長を中心に全ての事業の見直しを図ることを求めています。
「市民の生命・安全」と言っても、危機管理や交通安全などの直接的な分野もあれば、その施策により間接的に関わり波及していく分野もあります。厳しいことを言っているようで、非常に曖昧な基準にも聞こえていきます。
この基準について確認したところ、市は「基準を定めていないが、主に国の法令に基づく生活保護や障がい者の自立支援に関わる事業、公共施設の耐震化、新型コロナ対策に関する事業など」が想定され、関わらない事業は「主に単発のイベントや講演会などが考えられる」と説明。ただし、関わらない事業についても「どうしても財源不足が生じている際の優先順位として、持続可能な財政運営を行うための指針の一つと考えている」としました。
そのうえで、予算事業の見直しの記載は「事業の再確認を行うことで、時代の変化を反映しているか、目的や対象が重複している事業などの課題を抽出し、限りある財源を有効活用するためのもの」と答弁しました。
※枠配分額について
令和4年度当初予算編成における経常経費の「枠配分額」は、各部局の精査により前年度比2372万円減の175億6,177万円になったとのこと。
【参考】令和3年度当初予算一般財源541.6億円の経費内訳(使途が特定されず、どの経費にも自由に充当できる一般財源がどこの経費に使われているか)➡ 経常経費175.8億円+会計年度任用職員分26.8億円+人件費など枠配分外経費206.3億円+繰出金98.6億円+特殊要因事業費34.1億円
■扶助費の自然増まで圧縮か
予算編成方針では「対象者の自然増による扶助費等の増額がある場合には、過大な見込みとなっていないか、相当額をほかで減額できないかを十分に検討検証を行い、できる限りの縮減を行うこと」と記されています。
扶助費の増加は、社会全体が困難な状況にある反映でもあります。そのようなときに、扶助費が上がる→自然増を圧縮しろ!ではなく、市民の暮らしや地域経済に目を向けて守るための施策をおこなうことが自治体の本来の役割ではないでしょうか。また、扶助費は国の政策を市が実施しているものが多く、部局内でできることは限られています。障がいや介護、子育て施策などで自然増による部分の増額分も、部局内で削減しろと言うことなのか市の見解を問いました。
市は、「今回の経常経費の枠配分額は、令和3年度当初予算額ベースとなっています。2年度決算状況も踏まえながら適正額を見積もることが趣旨」であり、あくまでも「限りある財源を有効活用するために示した内容」だと説明しました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます