殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

謎の女

2009年04月11日 16時51分32秒 | みりこんぐらし
このところ、ハゲしい話が続いたので

今日はほのぼのする話を書いてみよう。


またOL時代の同僚。

アコちゃん。20才、独身。

あどけな~いお顔に、ダイナマイトバディ。

男性社員、このテの格差は大歓迎らしい。

社内のアイドルだ。


請求書に貼る切手の周囲にある白いギザギザを

ことごとくハサミで綺麗に切り取り

「出来ました!」

と満足そう。

いいの、いいの。

かわいいから、許しちゃう。


アコちゃんは、謎の女だ。

「この町が好きなんです~。

 どこにも行きたくありませ~ん。

 彼氏なんかいませ~ん。

 お休みはいつも家族と家にいま~す」

いつもそう言うけど、社内のちょっとした買い物を頼むと

レシートはなぜか毎回、遠く離れた都会の店。


仕事の帰りにたまたまアコちゃんの車の後ろになる。

さっき別れる時は

「今日は疲れたから、アコは早く家に帰って寝ま~す」

と言っていたのに、家とは逆方向。

しかもラブホテルの方向へ躊躇なく左折。

周囲に民家は無く、ホテルの先は山。


地方在住のかたはご存知だろうが

こういういかがわしく後ろめたい場所は

人里離れた寂しい所にあり、100%車で入る。

ホテル集合、ホテル解散…田舎においてそれは

かなりの上級者を意味しているのだ。


他の若い女子社員は

アコちゃんの言動が全部計算だと主張する。

「女だけで飲み会の時は、コットンシャツにジーンズなのに

 男性がいる時は必ずニットで来るんですよ!」

特に社内恋愛をしている子は、彼氏の視線の先を心配して

気が気ではないらしい。


そう言われりゃ、そうかも。 

薄手のニットの下で、惜しみなく揺れる巨乳に

男性社員クギ付けだもんな~。

同じ土俵上にいない私は、気楽である。


ある朝、アコちゃんがなかなか出勤してこない。

やがて木の棒をツエに、血を流して会社に現われた。

その痛々しい姿に、一同騒然。


「どうしたのっ?!何があったのっ?!」

アコちゃんはドアによりかかり、遠い目をしてつぶやく。

「…川に…落ちた…」

出勤途中、会社のそばを流れる小川に車ごと転落したと言う。


医者だ、レッカ-だ…の騒ぎが終わり

上司が保険申請のために改めて事情をたずねる。

「で…なんで落ちたんだ?」

「バッグが足元に落ちたんです…。

 それで…取ろうと思って…」

「じゃ、よそ見だな?」

「前は…ずっと見てました…

 急にハンドルが…動かなくなって…」

「じゃあ整備不良?」

「まだ新車です…」


イラの上司は、事情聴取を私にタッチ。

「アコちゃん、最初から落ち着いて話してごらん」

アコちゃんは話し始める。

…助手席に置いたバッグが落ちたので

 手を伸ばして取ろうとした。

 そしたらカーブになったので、ハンドルをきろうとしたら

 肩がはまってハンドルが動かず、そのまま河原を滑り落ちた…


「ちょっと待て…」

上司が言う。

「肩ってのは、なんの肩?」


「私の肩…」

アコちゃんは自分の左肩をさすりながらつぶやき

「なぜ!」

みんなは同時に叫ぶ。


「アコちゃん、どうしてハンドルに肩がはまったのかな~?」

「…わかりません…」

「じゃあ、バッグはどこから手を伸ばしてとったのかな~?」

「ハンドルの輪っかの間から…」


不毛な会話はもうよせ…ハゲた上司はつぶやいた。
コメント (18)
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