殿は今夜もご乱心

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みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

爽やかという罪…選挙うぐいす日記

2009年04月20日 13時33分58秒 | 選挙うぐいす日記
候補がこのところ目をかけているという

若い独身男性、ゆう君。

初めて選挙活動に加わる。


スポーツマンで、明るく爽やかなイケメンぶりに

候補の妻を始め、陣営を手伝うマダムたちの人気独占。

我々に付いて選挙カーに乗り、手を振るという。


さて、初日。

この陣営は初心者が多いので

ジーンズはダメと言い渡してあった。


「おはようございます!」

ゆう君、ジャージで爽やかにご登場。


「ジャージはダメよ!着替えておいで!」

当初より、このいたずらに爽やかな印象に

いちまつの不安を抱いていた私は怒鳴りつける。


「あっ!すいません!ジーンズじゃなければいいと思ってました!」

候補の妻、かばう。

「ゆう君は、これがよそ行きなの…許してあげて」

妻がそう言うなら、私はかまわない。

ごく小さな事柄でもかかってくる

クレームの電話を受けるのは彼女なのだ。


街を回る。

要所要所で降りては

街頭で米つきバッタのように頭を下げる。

少々ではない。

うぐいすはヒザまで曲げて、頭の位置を低く保つ。

その横でゆう君、のんびりとスクワット開始。


車に戻ってから、叱りつける。

「すいません!癖なんです。以後気を付けます!」

ゆう君、爽やかに謝る。

気を付ける…というのは、やめることではない。


昼…選挙事務所に戻り、あわただしい昼食。

ゆう君、誰よりも早く食べ始め

誰よりも遅くまで食べ続ける。


食事係のマダムたちに愛想を振りまき

「とってもおいしいです!」

マダムたち、大喜びで

あれも、これも…と大サービス。


経験上、気働きがなく役に立たない者ほど

こういうタダ飯現場では大喰らいなのだ。


そうかい、そうかい…一生懸命スクワットしたもんなぁ…たんとお食べ。


そろそろ午後の出発時間だ。

しかし、ゆう君がいないことに気付く。

おそらく…と目をつけていたトイレのドアをノック。


候補の自宅が選挙事務所になる場合は

トイレの数が不足するので

出物腫れ物の類も注意が必要である。

さっきから、ずっとふさがって

混雑していたのだ。


「ここに入ってるのは、ゆう君?」

「はい!ボクです!」

ゆう君、トイレの中から爽やかに応答する。


そうかい、そうかい…たくさん食べたもんなぁ…たんとお出し。


午後…ゆう君は後部座席ですやすやとお昼寝。

この頃になると、もう誰も何も言わない。


そうかい、そうかい…お腹もふくれて眠たかろう…たんとお眠り。


いよいよ明日は投票日という夜。

ゆう君、当日はスポーツの大会で

どこか遠い町へ行く…と張り切っている。


候補の妻が言う。

「ゆう君、明日は忙しくても投票に行ってね!」

ゆう君は白い歯を輝かせ、爽やかに答える。

「あ、ボク、こっちに住民票移してまだ一ヶ月なんで

 投票用紙が来てないんです!」


さて選挙活動は全て終了し、解散となった。

ゆう君、爽やかにご挨拶。

「みりこんさん!お世話になりました!

 楽しかったです!」

そりゃあ楽しかったろう。

1週間ずっと、食べて、寝て、スクワットして…

事務所に帰りゃアイドルだ。


私も笑顔で言う。

「次は来るなよ」


コメント (14)
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