殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

爬虫類男

2009年04月16日 17時39分46秒 | みりこんぐらし
昨日、用があって、とある公的機関に行った。

書類の提出期限を忘れて

旅行に出かけた優秀な事務員

夫の姉、ルイーゼの代わりに

取り急ぎ遠い町にやって来たのだ。

郵送したら間に合わない。


内容がややこしいので

受付で用件を伝えて待つ。


「お待たせしました」

奥から出て来たのは、30才くらいの男性職員。

げ…今日もハズレだ。


こういう所へ来ると

愛想のいいおじさんや

優しそうなおねえさんはいっぱいいるのに

絶対あたらない。

たいてい苦手な爬虫類系だ。

天は我に試練を与えたもう…。


ひょろ長い体つき

ぬめっとした肌

白い顔

メガネの奥の小さな目は、絶対に笑わない。

まばたきの回数すら、少ないような気がする。


私もこういうタイプが嫌いだが

向こうは私のようなオバサンのことを

もっと嫌いだ。


経験上、爬虫類男は、自分の好むエサしか存在を認めない。

やつらの好むエサは、たいてい若い細身のカワイ子ちゃんだ。

そんなのが相手だとガラリと相好を崩し

頬など染めて、急に哺乳類に進化するのだ。


言葉はていねいだが、時折ため息をつきながら

書類を書く私をどんくさいババァだ…と思っている気配濃厚。


イライラするのか、癖なのか

冷ややかな視線を私の手元に注ぎながら

手にしたシャーペンを

指でくるくる回し続ける。

これをやりながらせっせと勉強したから

今、公務員だもんなぁ。


さっき待ってた時に

「長くお待たせしていませんか?」

などと話しかけてくれたおじさんなんて

隣の席で年配の女性に

優しく手続きのしかたを教えている。

ああ、うらやましい…。

千円払うから、指名制にしてほしいもんだ。


「じゃあ、ここに申請理由を書いてください」

知るか、そんなもん。

「書いていただかないと、お受けできませんが」

      「なんて書けばいいんですか?」

「それはおたくさんのことですので、ボクはなんとも言えません」


意地が悪いのではなく

これがこの男の精一杯なのだ。

こういうヤツに何を言ってもダメだ。

もめても、不親切という程度しか落ち度は無いのだ。

二度と会うことはないのだから、さっさと終了させるに限る。


その時、ヤツがクルクル回していたシャーペンの

消しゴムの部分がポンと抜け

中に入っていた何十本ものおびただしい芯が

一気に飛び出す。


     「あ~ら、まあ!たくさん入ってること!」

さも驚いたように、わざと大きな声で言ってやる。

男は無言で、散らばった芯を一本一本拾い集めた。


若いので、指先にはまだ湿り気が多い。

長く、先がアマガエルのように丸くなった指を

機械のようなリズムで芯に押し当て

淡々と拾い集めるのが憎たらしい。


芯は机の上ばかりでなく、床にも落ちている。

私の足元にも転がっている。

それを拾おうとしたので…

「バリ」

思いっきり踏んでやる。


ものすごく悔しそうな顔をしていた。      
     
   

      


コメント (16)
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