殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

ウグイス養成物語・8

2018年12月21日 12時42分07秒 | 選挙うぐいす日記
若い頃、代議士の選挙カーでドライバーをしていた夫の経歴が刺激となり

なぜか私にまで尊敬の眼差しを向けるようになったナミちゃん。

そこへ候補が追い討ちをかける。

「姐さんのご主人は、市長選のドライバーもやってらっしゃいましたよね」

「ああ、そんなこともありましたね」

「ご主人は、亡くなった◯◯市長のお気に入りだったんですよ」

市長のお気に入り‥ナミちゃんは呆然とつぶやく。

「すごい‥すごいです‥みりこんさん‥」


旦那が代議士や市長のドライバーだった‥それがどうしたというのだ。

何日も続けて仕事を休める男が、あんまりいなかっただけじゃないか。

しかもその妻である私が、何だというのだ。

が、これまでに掴んだ感触からすると

選挙が終わったら、あちこちの陣営に散らばっていたウグイスチームが

集合して色々話すんだと思う。

メジャーな選挙の関係者がいた‥

それはチームにとって、好みの話題なんだろうと推測される。


今回、別の候補の選挙カーでは、地方局のテレビリポーターがウグイスをやっているそうな。

すれ違う時にご尊顔を拝見したが、見覚えのない人だった。

彼女を知る候補は「気位が高くて和を乱すウグイス」と酷評していたが

そりゃテレビに出るくらいだから、気位も高かろう。

そんな中、二つ上の田舎おばんと地味に仕事をするナミちゃんにとって

唯一提供できる良さげな話題が、夫の経歴なんだと察する。


そのことはともかく、今まで私に捧げていたお世辞やおべんちゃらが

やはり怠けるための芝居だったのはよくわかった。

ナミめ。


ともあれナミちゃんの中で、我々夫婦はセットで格上げされ

以後はますます従順になった。

本人が「頑張ります」と宣言したところで、生来の怠け者が急に働くわけがない。

我慢するよりガミガミ言ってやるもんね。


さて、ウグイスには「華」の場面がいくつかある。

芝居なら見せ場、ウグイスだから聞かせ場だろうか。

まず出陣式の司会。

それから毎日の「出(で)と「入(い)り」。

事務所を出る時と、帰った時のことだ。

見送りや出迎えで多勢の人が集まって注目するため、実力が問われる‥らしい。

らしいと言うのは、他のウグイスさんがそう思っているわけで

私は重きを置いてない。

ただ、盛り上げることは言おうかな?くらいに思っている。


「国誉(くにほ)め」。

私は勝手にそう呼んで、気に入った陣営のみ出発の時に言う。

陣営全体を誉めるのだ。

「ウグイスとして数々の陣営に関わって参りましたが

こちらは最高でございます。

お一人お一人のお心構えや連携の見事さ、まことに超一流!

この感動を胸に、本日も全身全霊で戦って参ります」


数々と言うほど多くの選挙に関わってはいないが、この際どうでもいい。

見送りの人々は大いに喜び、ざわめく。

「みりこんさんが言うんだから間違いない」

なんて声も聞こえる。

そこですかさず頼む。

「どうか、お一人でも多くの方にお声をかけてくださいませ。

一票でも多くのご支援を集めてくださいませ。

皆様のお力信じて、選挙カーは戦場へと向かいます」


ただし国誉めは、たびたび使えない。

何回もやるとマンネリしてお世辞に聞こえるため、状況を見て一回だけやる。

中盤にさしかかると陣営もダレてくるので

これで少しは引き締まるというのもあるが、候補の言いたいことを代行する目的もある。

候補って、広い意味での「よろしく」や「お願いします」は言えても

人に頼んでくれ、票を集めてくれと、細かいことは言えないものだ。

よって、代わりにウグイスが言う。


泣きながら見送る候補の両親を慰めたりもする。

「お父様、お母様、候補は私どもが命に代えてお守り致します。

どうかご安心くださいませ」

大半の人が泣き、声援は一層高まる。

これが盛り上げである。

実際には私たちが候補を守っているのではなく

候補が私たちに気を配り、常に守ってくれているのだが

この際仕方がない。


出と入りは、出陣式の司会をしたウグイス

つまりリーダー格のウグイスが受け持つことが多い。

出陣式の司会は経験が無いと難しいため

それを担当したウグイスが、目立っておいしい部分をかっさらう格好だ。

二人ぽっちでリーダーなんて変だけど、暗黙の了解により

候補の初当選からウグイスを担当する私が行う。


国誉めが済んだ中盤以降、この出と入りをナミちゃんに任せた。

「え〜?!そんな!姐さんみたいにできませんよ!」

「いいからやってみなさい!

人に華を持たせようと思いなさんな。

自分が奪う気でやりなさい」

と言ってやらせる。


これで行き帰りの楽を確保。

なにしろ運転手の交代が頻繁なもんで、しょっちゅう事務所に帰るため

出と入りの回数も多いのだ。

本当の怠け者は私かもしれない。

《続く》
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冬の友

2018年12月21日 09時34分04秒 | みりこんぐらし
コメント欄でモモさんと、かかとのガサガサについて話した。

モモさんもガサガサに悩んでおられるそうなので

私の愛用している靴下をご紹介したいと思う。



私の冬の風物詩は、かかとのガサガサ。

このガサガサとは、子供の頃からの付き合いだ。

温暖な季節には何ともないのに、寒くなると出てくる。

ひび割れて出血するほどではないものの

ガサガサを綺麗さっぱり、軽石でこそげ落とそうと企て

やり過ぎて流血したことはある。


ガサガサとおさらばするべく、これまで様々な策を試みた。

塗る系、飲む系、浸ける系、貼る系‥病院にも行った。

良いという靴下だって、いくつも試した。

でもダメ。

体質なんだとあきらめていた。


3年前のある冬の夜、私は同級生の女子会の帰り

いつものように女子会メンバーのマミちゃんが営む店に行った。

飲み食いの後はマミちゃんを送りがてら、彼女の店に寄り

ワイワイ言いながら買い物をするのが恒例になっている。


マミちゃんの店は一応、化粧品店。

親の代が寝具と衣類の店だったので、その方面の品物も置いてあり

ワコールの下着やパジャマも並んでいる。

洋服は品数が少ないものの、上質かつ手頃な価格で

目立たないのにどこかおしゃれ。

マミちゃんのセンスで集めた物が置かれている。

ちなみにターゲットは、地元の老女。


傘、スカーフ、エプロン、歩きやすそうな靴も5〜6足。

欲しいかと聞かれれば、返事に詰まるアクセサリーやバッグも置いてある。

つまり、よろず屋‥良く言えばセレクトショップのような感じで楽しい。


その夜、私はマミちゃんにたずねた。

「靴下、ある?」

「あるよ〜、暖かいのがいい〜?」

「うん」

「じゃあこれ〜‥でも暖か過ぎるかも〜」

「暖か過ぎるって何?!体験してみたい!

うちは寒いから、ちょうどいいわ」

で、買ったのがこの靴下。


翌日、さっそく履いてみた。

三重構造だからか、ちょっとゴワゴワするけど

なるほど暖かい。

そして夜‥

靴下を脱いでびっくりした。

「なんじゃ?こりゃあ?」

かかとがツルツルじゃんか!

半世紀も付き合ってきたガサガサが、消えていた。


急いでマミちゃんに電話した。

「マミちゃん!あの靴下!」

「どしたの〜?暖かくない〜?」

「いや、かかとがツルツルになったんじゃ!」

「あ〜、なるかも〜」

「まだ在庫ある?」

「何足かあるよ〜」

「全部ちょうだい!」

「え〜?全部〜?

黒はもう無いから、気に入らん色があるかもしれんよ〜?

赤、グレー、レンガ、紫‥」

「色はいい、どんな色でも文句言わん!」


私は店の在庫を買い占め、この靴下の信者となった。

効能もさることながら、中途半端にレトロなパッケージも好み。

かかとのガサガサでお悩みの方がいらしたら、ぜひお勧めしたい。

ガサガサ解消のためにあれこれ試すより、勝負が早い。


ちなみに製造元のある奈良県は、靴下の生産が盛んらしい。

OLをしていた頃、奈良県出身の営業マンのお母さんが

会社にダンボール箱いっぱいの靴下を送ってくれたことがあった。

お母さんは靴下の製造工場で働いていたのだ。

奈良には靴下産業が多いのだと、その時に聞いた。

もしもこれで、誰かの悩みが一つ無くなれば嬉しい。
コメント (12)
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