殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

インテリア

2009年04月09日 11時20分10秒 | みりこんぐらし
今日が何の日だったか、ふと思い出した。

十数年前、とある会社にアルバイトとして入社した日だ。

そして、ある女の子のことを思い出した。


R子。

隣人の転居に伴い、そのアトガマとして紹介された職場で

おばさんバイトの私は、R子の部下となった。


R子は24才、独身。

普通ならお年頃だが、彼女はちょっと違っていた。


妙に落ち着き払っていて

若い女性特有の、華やいだかわいらしさというものがまったく無い。

社内で働く者は、老いも若きも彼女に遠慮している感じがした。


入社したその日

R子がパソコンのキーボードにコーヒーをこぼした。

「ゾウキン!」

彼女に強く言われ、ここが主婦の哀しさ…

反射的にゾウキンを持って行って拭く。

しかし、キーボードに入り込んだコーヒーは簡単には拭き取れない。


「…まだ?」

R子は私の背後からイライラした声で問う。

「早くしてくれないと、間に合わないんだけど」


ある日、ガラス張りの別室にこもって

向こうを向いたままじっと動かないR子。

入ろうとすると、他のコが首を振って止める。

しかし、そういう時こそ何をしているのか見たくてたまらなくなる。


入ってのぞき込むと、R子はワンワン泣いていた。

何が悲しいのかわからないが、時折そんな日があるらしい。


ほどなく、彼女は仕事の帰りに交通事故を起こした。

携帯を見ていて、前の車に追突したのだ。

そこからさらに不思議ちゃん全開。


追突した相手が、何やら宗教の熱心な信者で

「これも何かの縁…」

と快く許してもらえたのに感動して

勧められるままにその宗教に入信してしまった。


そして突如のたまう。

「私にはインテリアデザイナーの才能があるらしいの。

 夜間の学校に通うから、帰りに駅で降ろして」

私の通勤路の途中に駅があるからだ。


デザイナーになるのだから…と

R子さま、急にオシャレにおなりになる。

そのうち、ヘンな帽子までかぶり始める。

インテリアがどうのこうのとうるさいので

皆、ひそかに「テリア」と呼んだ。


かくしてR子を駅まで送り届ける日々が始まったが

そう毎日、仕事が定時に終わるわけがない。

R子は言う。

「…まだ?早くしてくれないと、間に合わないんだけど」

ヘンな帽子をかぶって催促。


このへんになると、私ももう独り立ちしていた。

このコから教わるものは、すでに何もない。

「無理。タクシー呼びなさい」

社内は凍り付き、彼女は黙ってその場を立ち去った。


それから間もなく、R子は退職した。

インテリアデザイナーになったかどうかはわからない。

ただ、半年後に結婚を知らせる写真入りハガキが私にも届いた。


「なんで写真が全部後ろ姿?!」

ハガキを受け取った者は盛り上がった。


隣人のアトガマとして入社した私は

R子のアトガマとして社員になった。  
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組長

2009年04月08日 10時13分51秒 | 組長
4月から組長になった。

襲名したのではない。

順番で回ってくる、自治会のやつだ。


問題がひとつ。

近所のオッサンだ。

50半ばの小汚いバカだが、こいつが普通ではない。


3年前に順番で引き受けた自治会長の味が忘れられず

よっぽど気分が良かったのだろう…翌年は立候補しやがった。


昔は田舎の自治会長といえば

ここらへんで言う「旦那氏(だんなし)」…

生活に余裕のある、尊敬に値する人物が

皆に請われて就任するのが一般的だったが

そんな人たちはもう死んでしまった。


近頃は順番で受け持つので、当然変なのも出て来る。

本業で残念な者ほど

にわかに手にした権力をふりかざす傾向にあるようだ。


バカのやることは、たいてい底が知れている。

やはり似たようなバカ数人と組んで

罰金や、無い頭を寄せ合って新しく作った

しょうもない規則で

近隣住民をひたすら縛るのみ。


住み良い自治会を作るのではなく

日頃の自分と真逆の行為…

自分の命令で他人を動かすという

初めて味わう快感に酔いしれているのだ。

薄くなった頭を金髪に染め、やせこけた餓鬼のような顔で

怒鳴り散らすさまは、醜悪このうえない。


反論する者がいれば

チンピラのような口をきいて、その家にねじこむ。

一人暮らしの老人や、女所帯でもお構いなし。


うちのような大男の揃っている

反撃が怖い家には、何も言って来ない。

そのかわり、陰湿な手口で嫌がらせをする。


うちの場合は、息子の趣味方面の車を置くのに

借りている駐車場の持ち主を調べ

「自治会」を名乗って

「貸さないように」と電話をかけられたことがあった。


持ち主は良い人なので、なにごとにもならなかったが

無関係の他人に被害を及ぼすのがいまいましい。

ヤツだとわかっているが、匿名なので逆襲ができない。


ヤツのちょっと頭のおかしい女房が

すれ違いざまにいきなり

「いや~会長夫人は大変です~。おほほほ~」

と自慢げに言うので

「大変なら、やらなきゃいいじゃん。おほほほ~」

と言ったのを根に持っているのだ。


その後、誰も何も言ってないのに

「3年休ませてくれ…」という名言を残し、ひとまず引退。

一同ホッとしたものの、今度は新しい役員の足を引っ張り

連日嫌がらせの嵐。

自分でないとつとまらない…という形に持っていきたいのだ。


今年も色々仕掛けてくるだろう…と踏み、家族会議。

「いい?なんか言って来たら、ハイ、ハイと聞いちゃダメよ!

 ギャーギャー言って追い返すのよっ!」

「ラジャー!」


戦いに向けての切り札はある。

今年は組長のサポート役として会計係になったコが

3人目を生んだばかりなので

会計の仕事も実質私がやることになる。


帳簿を引き継いで目を通したところ

ヤツが会長だった2年間のものに、不明瞭な点を発見。

そこにはヤツの捺印があるから、逃げられない。

大げさに表現すれば「業務上横領」の類いである。


バカは詰めが甘い…

それは、我が結婚生活でいやというほど熟知している。

しかし、バカを追い込むと思わぬ行動に出る…

それも熟知しているので

出来れば関わらずに終わりたいが

春の陽射しの中で、少し楽しみな組長である。 
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ナルニア国物語

2009年04月07日 12時01分07秒 | みりこんぐらし
ディズニーランドもディズニーシーも

なんともなかった。

ハリーポッターもどうってことなかった。


それらになんら制作上の問題があるわけではない。

私が年を取ったのが悪いのだ。


年を取ると、感動や高揚の起伏がなだらかになる。

現実界に起きることでもそうなのだから

作り事の世界ではなおさらだ。

もっと早くにこれらと出会っていれば

すっかり魅せられていたと思う。


ナルニア国物語。

テレビで第一章をやっていた。

家族が見ていたので、しかたなくつきあう。

しかしこれにはハマッてしまった。


ファンタジー?勘弁してよ…の私が

風呂にも入れず最後まで見るのはかなり珍しい。

家族も驚いていた。


その原因は何か…。

なんか負けたような気がして考えてみる。

そしてわかった。

主人公の4人兄妹があまり美貌でないことだ。


渡鬼の幸楽に居そうな普通顔の面々が

普通でない冒険をする様子がいじらしい。


ビジュアル方面に逃げ場を用意してないので

悪役の女王の美しさが際だち

それがかえって残酷や冷酷を強調させる。


とことん地味な衣装で頑張る子供達に

戦争という不可抗力による母子の別れ、気兼ねな疎開先

裏切り、団結、武士道、天国と地獄…

私好みのさまざまなソースがふりかけられる。


元を正せば最初、末っ子にハートを

わしづかみにされてしまった。

足が動物系の生き物の家に連れ込まれ

お茶をふるまわれる場面だ。


原色を極力抑えた画面の中

紅茶にミルクを注いでやる生き物に

末っ子ルーシーはてのひらで優雅に「ストップ」を告げる。


その毅然とした高貴なしぐさ。

ある程度の環境で、丁寧にしつけられた

小さな淑女を表わしているのだ。

芸が細かい。


なんでボスがライオンなんだよっ!

殺されて復活するとこ見せろよっ!

突っ込みどころ満載の流れを差し引いても

遅ればせながらナルマニアにナルかもね。
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ミサイル女

2009年04月06日 11時06分38秒 | みりこんぐらし
北朝鮮からミサイルが発射された。

まず思い出すのは、病院時代の上司である。

「絶対ナンカ言ってるぞ~」

と思い、ほくそ笑む。


定年が近いので体が言うことをきかず

ほとんど働かない。

しかし、そんなことはどうでもいいのだ。

今まで頑張ってきたんだから大目に見よう。


この女のもっともいけないところは

いい加減なことを見て来たように言う悪癖だ。


やたら兄妹が多く

それが日本全国の各地方に散らばっているため

大きなニュースがあると必ず

「兄に聞いた…」

「姉の話だと…」

などと、さも信憑性ありげに作り話をする。


数年前、とある地方で母子が地震で生き埋めになった。

テレビや新聞でみんなとっくに知っている情報を

自分が取材して来たようにもったいぶって披露。


それはまだ許せる。

しかし、亡くなってしまった母親の

夫の勤務先があきらかになったところで

話は大きく進展する。

我が市内にも、系列会社があるからだ。


「転勤でこの市内にも住んでいたらしい」

ということになる。

さらに話は発展し

「そういえば、スーパーナルカワで見たような気がする」

と言い出す。

「私、この人知ってるかもしれない…

 転勤を止めればよかった…」

とまで言う。


たいていのことは許すが、こういうのは頭にくる。

死者に対する冒涜だと思う。


北朝鮮在住の兄妹はいないと思うが

またナンカ言ってるにちがいない。

拉致家族すら

「兄嫁の親戚かも…」

と言っていたのだ。

今回も、日本へ落ちなかったのは自分のおかげだ…級の

ことを吹聴しているにちがいない。


ナンカ言わずにはいられないのは

注目を浴びたいからだ。

こんなバカタレが公務員として税金から給料をもらうのは

おかしいと思う。


ついでに言えば、自分は小顔だと公言してはばからない。

…違う。

アゴが無いからだ。

下くちびるの下は、もうノドだ。

アゴの分の距離が無いから、顔は当然小さくなる。

ノドンで爆撃されろ。

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昭和の女

2009年04月05日 20時01分01秒 | みりこんぐらし
口紅を春らしくしてみよう…と思い立つ。

買いに行くのが面倒だったので

ガサゴソ探したら、濃いピンク色のを発見。



さっそくつけてみる。

ブラシなんか使わない。

口紅の位置はそのまま

クチとクビを動かしてにゅる~っと塗る。

同じ顔と長年つきあっているからこそ出来る秘技。


あ~ら!いい感じじゃな~い?

ここんとこずっとベージュ系だったから

赤みの強い色を塗ると

肌や歯の色が白く映えるように見えますがな。


でも…なんか…違和感が…。







ひ~っ!これは…!

昭和やんけ!


太マユ、ラーメンみたいな髪…ソバージュとか言ったっけ。

スカーフに肩パット

ショルダーバッグなんかぶら下げて

口紅はなぜかみんな「ローズピンク」だったあの時代…。


田舎もんなんだから

よくわからんならおとなしくしときゃいいものを

スケベ心を出してあれこれやらかしては

自分を見失っていたあの頃…。


恥ずかしい写真あったど~!

ハダカのほうがよっぽどマシだわい。


そうだ!このソバージュの後、刈り上げにしたんだっ!

おぞましや…。






あぶね~あぶね~…

昭和へバックトゥーザフューチャーするとこだったわい…。


「これが好き」という頑固

「もうトシだし」というあきらめ

「もったいない」という妥協

この三つが女をダメにすると思っていたが、もうひとつ発見。

「あったから」という怠惰。


これで違和感を感じなくなったら

おしまいなのだ。

ふ~…今日はかなり危険だった。

なにしろ事前に気付かず、つけてしまったからな~。

しかも「いい感じ…」とまで思ってしまったからな~。


昭和から無事生還したものの

「単なる年寄り」よりも怖い恐怖の最高峰…

「姉ちゃん婆ちゃん」ラインにニアミスしてしまった。

それは…自分の若かりし時代を再現し続ける妖怪だ。


なんとなく不機嫌になる私であった。
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尊敬の春

2009年04月03日 13時57分42秒 | みりこんぐらし
パパさんは最近元気なのか…?

と案じているかたもおられると思うので(…いないか)

昨夜のことをお話しよう。




春なので、桜など愛でつつ小旅行におもむく。

夜、自治会の集まりがあったが

夫に出席してもらうことに。

私は安心して旅を楽しむ。


本来ならば夫には、旅行帰りの愛妻を迎えに来るという

重要な任務がある。

しかし私の解散場所が遠く

会合の終わる時間と微妙なところなので

代わりに子供達が来てくれて、約1時間の帰路に着く。


そこへ夫から電話。

「鍵を忘れて出たから、家に入れない…」

子供が二人とも迎えに来てしまったため

家は無人となり、閉め出されたのだ。

「玄関の前で待っとくよ~」


    「何言ってんのよっ!」

私は厳しく制止する。

     「夜中に暗い所で立ってたら

      変質者と思われるじゃないのっ!

      散歩するふりでもして、そこらへん歩いてなさいよっ!」


 


…母子3人、家に着く。

キャッキャとはしゃいでお土産公開タ~イム。

そして入浴…やがて就寝。


寝ていると、夫が帰って来た。

「ただいま…」


夫はひたすら我々の帰りを待ちわびながら

まだそこらをうろついていたのだ。


    「ごめんね…忘れてた」

「いいよ。オレが鍵を忘れたのが悪いんだ。

 疲れてるのに、起こしてごめんね」


…明日の朝のパン、買って来たんだ…

これ食べるから、朝はゆっくり寝てていいよ…


よその家庭のことはわからないので

たぶん…だが、普通の夫婦なら

閉め出された夫を忘れる妻はあまりいないだろうし

放浪の身の上となった夫のほうも

「まだか、まだか」と頻繁に連絡をとってくると思う。

やましい過去のない夫なら。

いやはや…。


もしこれが私だったら…

血の雨が降るであろう。

実は夫のこういうとこ、ひそかに尊敬している。
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バレーボール・今出川夫人の恋

2009年04月01日 11時33分26秒 | みりこんぐらし


今出川夫人(仮名)。

46才。

いつも明るい、チームのムードメーカー。





コーチにラブ。

普通のオジサンだが、今出川夫人にはかっこよく見えるらしい。





練習が終わると

自分に特訓をしてほしいと願い出る。


コーチは多分、今出川夫人が嫌いだ。

人格者なので表情には出さないが、ボールを打つ目つきでわかる。

時に鼻血を出しながら、巨乳を揺らしてのたうち回る光景は

なかなかのミモノ。




誰を好きになろうと構わないが、困るのは宴会。

コーチの送迎は、キャプテンである私の役目だ。

宴会の翌朝5時に、必ず今出川夫人から電話がある。


「朝早くからごめんね~! 

 昨日はお疲れ様!」


平静を装ってはいるが

私がコーチとどっか行って、なんかヤッてないか

確認するのだ。


「私、早起きだからさ~!」

ウソこけ…嫉妬と妄想で眠れなかったくせに…。


家族は「なにごとか?」とぞろぞろ起きてくる。

迷惑この上ない。


面倒臭いので一度留守電にしたら、チャリで家まで来た。

もっと迷惑。


どっか行って、なんかヤッて、家に帰ってなかったら

騒ぎ立てるつもり満々。

しかし、私にも選ぶ権利があるというものだ。


今出川夫人が送迎を買って出れば問題はない。

私も宴会で酒が飲める。

コーチには気の毒だが、持ち帰ろうと襲おうと自由だ。

だが、彼女には運転免許が無かった。


しゃくにさわるが、抗議して

恋に不慣れな女心を傷つけることはできない。

それは、彼女の生き甲斐であるバレーボールまで

奪いかねないからだ。


私がこの手の感情に対して寛大であるとしたら

それはひとえに今出川夫人の功績といえよう。
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