曖昧批評

調べないで書く適当な感想など

「ペタルダンス」の感想

2013-12-12 23:12:56 | テレビ・映画
前から気になっていた女子ロードムービー「ペタルダンス」を見た。

ざっくり説明すると、自殺未遂を図るなど病んでいるらしい友人に6年ぶりに会いに行く話。会いに行くほうがジンコ(宮崎あおい)と素子(安藤サクラ)で、病んでいる方がミキ(吹石一恵)。ひょんなことから運転手をさせられるのが原木さん(忽那汐里)。野郎は素子の元旦那など、ほんの少ししか出てこない。結構人気のある俳優らしいが。



一応ロードムービーなので車で移動する。車は水色の初代フォルクスワーゲン・ゴルフ。どうやら東北道を北に向かっている模様。途中、曲がった木の海岸、海が見えるレストラン、文房具屋に立ち寄るが、目的地の病院(ミキが入院している)まで、6時間くらい? やはり日本はロードムービーを作るには狭い。



まあ、要するに移動中の映像は大して長くない。90分のうち25分くらいかなあ。ドライブ好きとしては、もうちょっと見たいところだが、移動中の車載映像では間が持たないのだろう。冬なので景色が殺風景だし。



それでも、がらんとしたレストランの雰囲気とか、他に客のいない暗い文房具屋の雰囲気は、旅の途中のリアル感が出ててよかった。

一番好きなシーンは、初日の夜、3人で旅館の部屋にいるところ。それぞれ所在なく物思いに沈んでいるのだが、友人同士の重いテーマの旅の夜って感じがよく出てた。あの空気感に交じりたい。一緒に膝を抱えて壁にもたれたい。



リアルさでは、この映画は多分最強である。きっちりした脚本がなく、シーンごとの開始状況と終了状況だけが決まっていて、途中は女優たちが考えながら演技しているらしい。台詞がほとんどアドリブなので、すぐ返事が出てこなかったり(浮かばなかったり)、二人の返事がかぶったりする。その無駄な間がリアルだし、かぶって両方とも何を言ってるのか聞き取れず、そのうちもごもごと言うのをやめてしまうのもリアルだ。

こういう撮り方は、女優に相当な力量がないと成立しないと思うのだが、さすがにこの4人は芸達者だった。何を言いたいんだかさっぱりわからない大失敗作になってもおかしくないのに、何とかギリギリ僕でもそれなりに楽しめた。その、リアルな女子トークの、ときにはゆるく、ときには緊迫した間を。

トークはなんとかなってるが、ストーリーは、もう少しオチとか解決があっても良かった。特に紙に言葉を書かせる奴は。なんかあるのかと期待させて、ジンコが「これで終わり」と言って、こっちもずっこけたが、素子なんかもずっこけてたように思う。



この映画の評は、好きな人は好きだが、受け入れられない人には零点、みたいなのが多い。僕はテーマがはっきりしないドキュメンタリーみたいなところをそれなりに楽しめたが、それでも、「こういうのもときにはアリだな」という消極的な評価だ。こういう映画ばかりだと困る。

女優たちをフリーでしゃべらせて撮影し、良い所を繋ぐやりかたは、最近流行りの作り込んだ脚本のドラマと比較して対照の位置にある。宮藤官九郎を筆頭に、細部まで書き込まれたセリフで、非現実的なほどの素早いレスポンスで丁々発止のやり取りを見せるドラマに頭が疲れたとき、何気なく見るといい作品だと思う。

公式サイト

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