我が街には、音楽をやっている人の中では有名なOさんというおじさまがいます。レストランを営んでいるのですが、お店で彼を見掛けた日はラッキーデイ!というくらいお店にはいた試しがなく、もう御年80を超えていると思いますが、激寒の夜でも自転車でホールにやってきます。その知識たるや群を抜いていて、そのうんちくは始まると留まることはなく、音楽に対する情熱は限りなく、様々な団体の本番は勿論のこと、かなりの団体の練習も見学しています。
そんなに見学ばっかりしてて楽しいかな?そんなに好きなら、なんで一緒に音楽をしないんだろう?と長年不思議に思っていました。
でも、ここ数カ月、自分の合唱団の第九練習を見学したり、市民オペラ『夕鶴』の練習を見学したりしている内に、自分が練習しているのと同じくらい面白くて、時間があっという間に過ぎていくのに驚きました。先生方が色々な注意をしたりして、それに演者が答えて修正されていくのを見ているのって、思いの外面白かったんだ。そして時には昨日の練習のラストのように、「今の良かった!!」と先生が仰ったときなんて、『オーケストラがオケピにいて、会場は真っ暗、そこだけ明るい舞台の上にいる子供たちの目線の先から鶴の羽ばたく音が聞こえる』……って、本気で感じられたもん。
私は見学だけじゃなくて歌う側にいるのも大好きだけど、Oさんがホールに通う理由、ほんのちょっと分かった気がしました。