読者の皆さんは、このブログの管理者が浦添市と中北組合の広域処理を「破談」にしたくて一所懸命にブログを更新していると思われるかも知れません。しかし、それは逆です。
このブログの管理者は浦添市と中北組合の広域処理を応援しています。なぜなら、広域処理をキッカケとしてこの1市2村に「溶融炉」から卒業してもらいたいと考えているからです。
また、中北組合は浦添市との広域処理が「破談」になると、再稼動したくない「溶融炉」を再稼動することも選択肢にしなければならない状況になっています。なぜなら、このままでは廃棄物処理法の基本方針に適合しないごみ処理計画を策定しているために国の補助金を利用してごみ処理施設(焼却炉)を「単独更新」することができなくなるからです。
中北組合は「溶融炉」から中途半端(失礼!)に卒業していますが、浦添市との広域処理によって1市2村がめでたく卒業してもらえることを願っています。したがって、浦添市には中北組合の「溶融炉」を広域組合において引き継ぐことは慎重に検討していただきたいと考えています。
そして、広域処理が実現した場合は「溶融炉」に依存しない広域組合になって欲しいと願っています。
そこで、今日は改めて広域処理における浦添市のリスクを考えてみることにします。
(1)中北組合は廃棄物処理法の基本方針に適合しないごみ処理計画を策定している自治体なので広域処理を行うための事務処理が極めて複雑になる。
⇒内地においては、ごみ処理施設の整備に当たって国の補助金を利用するための要件(処理対象人口等)を満たしていない自治体があるため、稀に廃棄物処理法の基本方針に適合しないごみ処理計画を策定している自治体があります。しかし、沖縄県の場合は全ての自治体が国の補助金を利用することができます。したがって、国の補助金を利用しないごみ処理計画を策定している自治体は中北組合だけだと思われます。しかも、中北組合は平成26年3月に国の補助金を利用するごみ処理計画から国の補助金を利用しないごみ処理に改正しています。
(2)中北組合のごみ処理施設(青葉苑)を広域組合が継承すると、休止している溶融炉を再稼動して焼却炉と同時に長寿命化を行うことになる。
⇒浦添市と中北組合が広域組合を設立すると1つの自治体に複数のごみ処理施設があることになります。しかし、浦添市のごみ処理施設は国の基本方針に従って長寿命化を行っていますが、中北組合はまだ行っていません。中北組合のごみ処理施設は築25年未満(平成15年5月に供用開始)の老朽化していない施設なので、片方のごみ処理施設だけ長寿命化を行い、片方のごみ処理施設は長寿命化を行わないということはできません。
(3)中北組合の溶融炉を再稼動して長寿命化を行うと事故や故障等により使用が困難になる可能性がある。
⇒中北組合の溶融炉は塩分濃度の高い流動床炉の焼却灰(飛灰)を単独で処理する燃料式の溶融炉で、システム的に事故や故障等のリスクが高い溶融炉です。このため、国内では稼動している事例や長寿命化が行われた事例はありません。長寿命化を行えば事故や故障等のリスクは減りますが元々がリスクの高い溶融炉のなので、老朽化して行く過程で想定外のトラブルは発生する可能性があります。最悪の場合は「水蒸気爆発」によって使用が困難になる可能性もあります。その場合は、広域組合が自主財源により新たな溶融炉を整備しなければならないことになるので、広域処理のスケジュールの遅延に繋がることになります。
(4)浦添市のごみ処理施設は10年以内に更新する必要があるが広域処理のスケジュールが遅れると更新が遅れることになり老朽化が進行することになる。
⇒表現は不適切かも知れませんが、中北組合の溶融炉は自治体からすると「不発弾」に近いものになります。したがって丁寧に扱わないと爆発する可能性があります。このため、必然的に「運転経費」も高くなります。中北組合はそのために溶融炉を休止していますが、その代わり焼却炉の長寿命化や更新に当たって国の補助金は利用しないというごみ処理計画を策定しています。しかし、広域組合は国の補助金を利用してごみ処理施設を整備して行くことになります。このため、溶融炉を休止したままにしておくことはできません。
(5)広域組合が青葉苑の焼却炉だけを継承することはできない。
⇒青葉苑の焼却炉は国の補助金を利用して溶融炉とセットで整備しています。仮に、広域組合が青葉苑の焼却炉だけを継承しても中北組合と同じように焼却灰の民間委託処分を続ける場合は廃棄物処理法の基本方針に適合しないごみ処理を行っていることになるので、国の補助金を利用して焼却炉の長寿命化を行うことも広域施設の整備を行うこともできなくなります。したがって、広域組合が青葉苑の溶融炉を継承しない場合は焼却炉も継承しないことにしなければならないことになります。そうなると、中北組合は広域組合を設立する前に自ら整備したごみ処理施設(青葉苑)を廃止することになります。
(6)中城村と北中城村の可燃ごみを浦添市のごみ処理施設で処理することはできない。
⇒浦添市のごみ処理施設の処理能力は150トン/日です。一方、中北組合のごみ処理施設の処理能力は40トン/日です。広域処理を検討している1市2村はこれまでに人口が増加している自治体であり、これからも増加が見込まれている自治体です。そのような状況にあって広域施設(200トン/日の予定)が完成するまでの間、中城村と北中城村の可燃ごみを浦添市の施設で処理することは「暴挙」と言わなければなりません。ちなみに、市町村のごみ処理施設は廃棄物処理法の規定により、一定の余裕を持って維持管理を行うことになっています。したがって、仮に浦添市のごみ処理施設に余裕があるとすれば、広域施設の処理能力は200トン/日ではなく150トン/日で十分に間に合うことになります。
(7)中城村と北中城村の可燃ごみは中北組合が廃止した焼却炉を利用して処理することになる。
⇒青葉苑の焼却炉は老朽化していないので長寿命化を行えば10年以上はほとんど問題なく使える焼却炉です。したがって、中城村と北中城の可燃ごみは広域施設が完成するまでこの焼却炉を利用して処理することが合理的だと考えます。ただし、中北組合が廃止した焼却炉なので、他の誰かが焼却炉を譲り受けて処理することになります。そして、その誰かとは民間企業になります。この場合、メーカーの関連会社が焼却炉を譲り受けて焼却処理を行うことが一番安心・安全な方法と思われますが、関連会社が最終処分場を所有していない場合は事務処理が面倒なことになります。なぜなら、市町村が一般廃棄物の処理を「外部委託」する場合は廃棄物処理法の規定により「再委託」が禁止されているからです。したがって、その場合は、広域組合は可燃ごみの焼却と焼却灰の処分を別な民間企業に委託しなければならないことになります。
(8)浦添市は可燃ごみの処理と焼却灰の処分に対する「外部委託」のリスクを中城村と北中城村と共有することになる。
⇒一般廃棄物の処理は「外部委託」する場合であっても委託した自治体に処理責任が残ります。したがって、「外部委託」によって何らかのトラブルや不祥事等が発生した場合は、自治体の責任で問題を解決しなければなりません。青葉苑の焼却炉はまだ老朽化していませんがこれからは老朽化が進行します。そうなると焼却炉から排出されるダイオキシン類の濃度や焼却灰に含まれているダイオキシン類の濃度が基準を超過する恐れがあります。しかも、焼却灰はほぼ間違いなく民間の最終処分場に埋め立てられることになります。仮に、そこでトラブルや不祥事等が発生した場合も、処分を委託した自治体に問題を解決する責任があることになります。
(9)青葉苑の廃止や可燃ごみの焼却及び焼却灰の処分の「外部委託」は廃棄物処理法の基本方針に適合しない可能性がある。
⇒補助金適正化法の規定では所定の補助金を返還すればごみ処理施設を廃止することができます。しかし、廃棄物処理法の基本方針は、市町村に対してごみ処理施設の長寿命化を求めています。また、市町村に対して地域ごとに必要になる最終処分場の整備を求めています。そして、国が市町村が整備するごみ処理施設に対して財政的援助を行う場合は、その計画(地域計画)が廃棄物処理法の基本方針に適合していなければならないことになっています。そうなると、広域組合を設立する前に中北組合が青葉苑を廃止することや広域組合において焼却灰の処分を「外部委託」することについて国がどのように判断するかは当事者である浦添市や中城村、北中城村が確認しなければならないことになります。したがって、ここから先は1市2村の判断に委ねることにします。
明日(2)に続く