今日は、前の記事の最後に使用した資料(下の画像)について補足説明をします。なお、この資料は広域処理に関する一般的な事務処理の概要をこのブログの管理者が整理したものです。
原寸大の資料(画像をクリック)
【定義】
補足説明の前に、広域処理に関する予備知識のない読者の皆様のために、用語の定義を書いておきます。
★広域処理に関する「協議会」とは、関係市町村のトップ(首長)の合意により広域処理を「推進」することを目的として関係市町村の首長が設立する公的組織になります。なお、この「協議会」においては規約を定めることになっています。
★広域処理に関する「事前協議」とは、協議会を設立する前に関係市町村の事務レベルにおいて広域処理を「推進」することが可能であるかどうかを確認しておく事務処理になります。つまり、「事前協議」は首長が登場する舞台(協議会)のお膳立てをしておく「裏方による事務処理」ということになります。
したがって、この事前協議において関係市町村の職員(地方自治法の規定に基づく首長の補助機関)が広域施設の整備に当って国の補助金を利用することができるかできないかということを見極めることになります。そして、協議の結果、国の補助金を利用することができないということになった場合は、協議会を設立する前に広域処理は「白紙撤回」ということになります。
【補足説明】
(1)事前協議は、広域処理を「選択肢の1つ」として協議をスタートする。
(2)事前協議は、関係市町村における課題の抽出と広域処理における課題の整理が主な事務処理になる。
(3)広域処理における課題の整理に当っては、既存のごみ処理施設の経過年数や稼働状況等が大きなポイントになる。
(4)既存のごみ処理施設の財産処分に関する事務処理を間違えると、広域施設の整備に当って国の補助金を利用することができなくなる場合がある。
(5)事前協議において「確実に国の補助金を利用するための事務処理のスキーム」を確認するまでは、協議会を設立することはできないことになる。
(6)協議会は、関係市町村のトップ(首長)が参加して「事前協議の結果により広域施設の整備に当って国の補助金を利用することができる」という前提で設立する公的な組織になる。
(7)協議会は、広域組合を設立するために「関係市町村が事前協議において確認した事務処理の内容を具体的に整理して実行する」ための組織になる。
以上が、広域処理に関する事前協議と協議会における一般的な事務処理の概要です。
なお、この事務処理は、広域処理における関係市町村の協議において、協議に必要になる「予算を最少化するための事務処理」でもあります。
下の画像は、上の画像にある事前協議における⑥と⑦の事務処理を、協議会における②と③の事務処理に「先送り」した場合を想定して作成した資料です。
地方公共団体が広域処理を「推進」できる見通しもないまま、協議会を設立して(新たに予算を確保して)覚書を締結することはあり得ないことですが、参考資料として作成しました。
原寸大の資料(画像をクリック)
このブログの管理者が知る限り、ごみ処理施設の財産処分や国の補助制度、そして、広域処理に関する事務処理等に詳しい自治体の首長は1人もいません。したがって、実際の協議会において上の画像の②や③に関する事務処理を行うことはありません。つまり、首長は事前協議において②や③の事務処理が終了している前提で協議会を設立して覚書を締結することになります。
広域処理に関する協議会の設立や覚書の締結が行われると、多くの場合、関係市町村の首長の写真入りで新聞等に記事が掲載されます。そして、事前協議により決定した計画の概要が公表されることになります。
そのため、万が一、覚書を締結した後で②や③の事務処理が終了していなかったこと(事前協議において未確認だったこと)により国の補助金を利用することができないと分かったときは協議会を設立した3人の首長に恥をかかせることになります。
【ごみ処理計画の見直し】
なお、このブログの記事は、広域処理における1市2村のごみ処理計画を考える「まとめの記事」なので、最後に廃棄物処理法の規定(第6条第3項)に基づいて広域処理を「推進」する場合の事務処理について書きます。
廃棄物処理法第6条第3条の規定は、市町村がごみ処理計画(実施計画を含む)を策定するときの「努力規定」になっています。したがって、職員がこの規定に抵触しても懲罰等の対象になることはありません。
しかし、浦添市がマスメディアに公表した広域処理に関するスケジュールによると、今年度中に協議会を設立して覚書を締結する予定になっています。そうなると、平成26年3月にごみ処理計画の改正と溶融炉の休止を決めた中城村と北中城村の村長が広域組合において広域施設を整備することになる浦添市の市長と広域処理を「推進」するための協議会を設立して覚書を締結することになります。
約2年前に両村長が改正したごみ処理計画は広域処理を検討課題としていません。そして、平成26年度から平成35年度までの10年間は「現体制を維持したまま」溶融炉を休止(実質上は廃止)して焼却灰の民間委託処分を行っていく計画になっています。
したがって、協議会を設立して覚書を締結する前に、改正したごみ処理計画を見直さないと、両村が行っている事務処理の辻褄が合わなくなってしまいます。
逆に見直しを行えば、自動的に浦添市のごみ処理計画との調和も確保することができます。
くどいようですが、現在の中北組合(中城村・北中城村)のごみ処理計画は、広域処理を検討課題から除外しています。また、平成35年度までは現体制を維持して行くことにしています。このため、平成28年度において広域処理を検討するための予算を確保した場合は、協議会の設立ができるできないにかかわらず、今年度中にごみ処理計画の見直しを行い速やかに告示することになります。
ということで、下の画像をご覧下さい。
原寸大の資料(画像をクリック)
(注1)ごみ処理計画には概ね10年から15年程度の中長期的な計画である「基本計画」と年度毎に策定する「実施計画」がある。
(注2)「基本計画」は概ね5年ごとに見直しを行うことになっている。
(注3)「基本計画」は「実施計画」の上位計画になるので2つの計画は整合性を確保しなければならない。
(注4)ごみ処理計画は地方自治法及び廃棄物処理法の規定に従って市町村が定める市町村の規定でもあるので、市町村がごみ処理に関する事務を遂行する場合は、自ら定めたごみ処理計画(基本計画及び実施計画)に従って遂行しなければならない。
(注5)ごみ処理計画は市町村が市町村の「自治事務」に対して自主的に定める規定でもあるので、必要に応じていつでも何度でも見直し(「実施計画」の場合は変更)を行うことができる。
(注6)市町村がごみ処理計画の見直し(改正・変更等)を行った場合は速やかに告知しなければならない。
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ごみ処理計画は市町村が市町村の「自治事務」に対して主体的に定める規定なので、必ずしも廃棄物処理法の基本方針や廃棄物処理施設整備計画に適合している必要はありません。適合していない場合のデメリットとしては、ごみ処理施設の整備(長寿命化、更新、新設等)に当って国の補助金を利用することができないくらいのことなので、「運転経費が高い」溶融炉を休止(又は廃止)して焼却灰の民間委託処分を行うことで経費を削減したいと考えた場合は、中北組合のように計画を見直す(改正・変更等)ことで、ごみ処理施設を整備するときまでは経済的なメリットを享受することができます。
このため、ごみ処理施設を整備するときだけ廃棄物処理法の基本方針や廃棄物処理施設整備計画に適合するようにごみ処理計画を見直せばよいというような、「錯覚」をしてしまう自治体もないとは限りません。しかし、国の補助制度において老朽化していない(原則として築25年未満の)ごみ処理施設については「長寿命化を行う」ことが義務付けられているので、そのような都合の良い話にはなりません。
つまり、仮に中北組合が国の補助金を利用してごみ処理施設を更新することになった場合は、「補助金は出しますが休止している溶融炉を先に再稼動して長寿命化してから(原則として10年以上稼動してから)更新しなさい」という話になります。
そして、「溶融炉を再稼動しない場合は補助金を出すことはできないので自主財源で更新して下さい」という話になります。
これは補助金適正化法の財産処分のルールとは関係のない、国の補助金を利用する場合のルールです。
では、中北組合がごみ処理施設の更新を止めて浦添市と共同で広域施設を整備することになった場合は溶融炉を休止したままでも補助金を利用することができるのか?
答えはNOです。
なぜなら、中北組合が溶融炉を廃止しない場合は、休止している溶融炉を広域組合がそのまま引き継ぐことになるからです。
したがって、「補助金は出しますが広域施設を整備する前に、休止している溶融炉を再稼動して長寿命化するのが先です」という話になります。
このことは、浦添市も中北組合と同じように補助金適正化法の処分制限期間を経過した溶融炉の長寿命化を行わずに休止している場合(下の画像)を考えれば理解していただけると思います。
溶融炉を再稼動しない場合
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このように、広域組合が所有している2基の溶融炉が補助金適正化法の処分制限期間を経過している場合であっても、溶融炉を休止したままでは国の補助金を利用して広域施設を整備することはできないことになります。
それはともかく、中北組合(中城村・北中城村)が広域処理を「推進」するために浦添市と協議会を設立して覚書を締結する場合は、少なくとも中城村と北中城村の村長は「国の補助金を利用して広域施設を整備すること」に合意していることになります。
また、広域組合を設立する前に浦添市と共同で「地域計画」を策定する場合は、1市2村のごみ処理計画と「地域計画」との整合性を確保しておかなければなりません。浦添市は平成29年度からこの「地域計画」の策定に着手する予定でいます。
したがって、中北組合(中城村・北中城村)にとっては、協議会を設立して覚書を締結する前にごみ処理計画の見直しを行っておくことが必須要件になると考えます。
なお、中北組合(中城村・北中城村)がごみ処理計画の見直しを行う場合は、休止している溶融炉と民間委託処分を行っている焼却灰に対する計画も見直すことになります。
そして、その見直し計画は事前協議において1市2村が確認している「確実に国の補助金を利用するための事務処理のスキーム」に沿った計画になります。
下の画像は見直し案の概要を整理したものです。溶融炉と焼却灰の項目だけがまだ(?)になっていますが、この(?)は、「確実に国の補助金を利用するための事務処理のスキーム」に沿った計画でなければならないことになります。
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この(?)については、①中北組合の溶融炉が塩分濃度の高い流動床炉の焼却灰(飛灰)を単独で処理する燃料式の溶融炉であり、②国内では稼動している事例や長寿命化が行われた事例のない極めて特殊な溶融炉であるため、③浦添市と中城村と北中城村の住民が安心して広域処理を「推進」して行くためには、④1市2村が広域組合を設立する前に代替措置を講じて廃止する計画が唯一の選択肢になるというのが、このブログの管理者の考えです。
下の画像は、他の選択肢と、その選択肢に関するこのブログの管理者の評価を一覧表にまとめたものです。
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なお、上の6つの選択肢の他にもまだ選択肢があるかも知れませんが、残念ながらこのブログの管理者にはこれ以上の選択肢は思い付きません。
ちなみに、浦添市か中北組合のどちらかが単独で最終処分場を整備している場合であって、その最終処分場に必要な容量(概ね15年分)が残っていれば選択肢になります。しかし、浦添市も中北組合も最終処分場に依存しない前提で「焼却炉+溶融炉」方式を採用している自治体であるため、この選択肢はないことになります。
また、平成28年度は国のインフラ長寿命化基本計画に基づく行動計画(国と地方公共団体が所有している全ての公共施設に対する長寿命化の方向性を決める計画)の策定期限になっているので、中北組合が広域処理を「推進」するか、しないかにかかわらず、休止している溶融炉をどうするか、ということを決めなければなりません。したがって、選択肢はそれほど多くはないと考えています。
ただし、浦添市は今年度中に協議会を設立して覚書を締結する予定でいるようなので、もしかしたら、このブログの管理者の知らない選択肢(廃棄物処理法の基本方針に従って最終処分場の残余年数を維持することができる選択肢)があるのかも知れません。
いずれにしても、「答え」は浦添市と中北組合(中城村・北中城村)が事前協議を終了して協議会を設立したとき(早ければ今月中)に出るはずです。
最後に広域処理と代替措置の関係について整理しておきます。
このブログの管理者が唯一の選択肢と考えている代替措置とは、廃棄物処理法の基本方針に従って溶融炉を廃止することができる措置を意味しています。したがって、溶融炉を長期間休止する場合や一時停止する場合であっても有効な措置になります。もちろん、廃止する意図がなくても廃止しなければならなくなった場合(災害や重大な事故等が発生して溶融炉の稼動が困難になった場合等)であっても有効な措置になります。
浦添市と中北組合(中城村・北中城村)との事前協議においてどのような「答え」が出るかは分かりませんが、少なくとも浦添市の溶融炉は広域組合が引き継ぐことになるはずです。しかし、その溶融炉も100%の安定稼動が保証されている訳ではありません。また、長寿命化した溶融炉のメンテナンスに関するデータはそれほど多くはないので、これから老朽化が進行した場合にどのようなメンテナンスが必要になるか、やってみなければ分からない状況になっています。
したがって、広域施設が完成するまでの間に浦添市から引き継いだ溶融炉に想定外のトラブルが発生して長期間停止するようなことになったとしても、広域組合に代替措置を講じる選択肢があれば、下の画像にあるように「外部委託」を回避して広域組合において廃棄物処理法の基本方針に適合するごみ処理を続けて行くことができます。
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なお、この代替措置は、焼却灰だけでなく溶融飛灰にも対応できるので、浦添市の溶融炉から排出される溶融飛灰の利用が困難になった場合にも有効な措置になります。