沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

改めて広域処理における浦添市のリスクを考える(まとめ)

2016-03-10 07:08:23 | ごみ処理計画

今日は浦添市のリスクに関するまとめの記事を書きます。

なお、この(まとめ)に関する記事を追加する場合は、この記事の末尾に書くことにします。

★追加履歴 2016.03.11

浦添市にとって中北組合との広域処理を行う場合の最大のリスクは、国の計画(廃棄物処理法の基本方針)に適合しないごみ処理計画を策定している自治体と広域組合を設立することによって、広域施設の整備に当たって国の補助金を利用することができなくなることです。

市町村(広域組合を含む)が国(防衛省を含む)の補助金を利用してごみ処理施設を整備(新設・長寿命化・更新等)する場合は、市町村のごみ処理計画が国の計画に適合していなければなりません。そして、広域処理を行う場合は構成市町村の全てのごみ処理計画が国の計画に適合していなければなりません。

中北組合は始めは国の計画に従っていました。しかし、途中(平成26年度)から国の計画に従うことを拒否しています。

拒否という表現は不適切かも知れませんが、国から見た場合は国が定めた計画に対して中北組合の協力が得られなかったことになるので、結果的に中北組合は国の計画に従うことを拒否していることになります。

ちなみに、国は平成25年5月31日に廃棄物処理施設整備計画を改正しています。そして、平成25年11月29日にインフラ長寿命化基本計画を定めています。しかし、中北組合は平成26年3月にごみ処理計画を改正して平成26年度から溶融炉を休止して焼却灰の民間委託処分を行っています。

補助金適正化法の規定を遵守すれば市町村は自由に溶融炉の休止や廃止を行うことができます。しかし、その市町村が国の計画を達成するための代替措置を講じずに焼却灰の民間委託処分を行う場合は国の計画に従うことを明確に拒否することになります。浦添市と中北組合が広域組合を設立すると浦添市と中北組合のごみ処理施設は広域組合のごみ処理施設になります。そして、中北組合が整備したごみ処理施設から排出される焼却灰は広域組合から排出される焼却灰になります。全体としては1/4くらいになりますが、結果的に浦添市も焼却灰の民間委託処分を行うことになります。

そうなった場合は、浦添市も途中(広域組合を設立した時)から国の計画に従う(国の財政的援助を受ける)ことを拒否することになります。

国がもしもそのような自治体に財政的援助を与えてしまったら、国の計画に従う自治体はなくなってしまいます。

注意が必要なのは、元々溶融炉や最終処分場を整備していない自治体が焼却灰の民間委託処分を行っている場合です。このような自治体も国の計画に従うことを拒否しているように見えますが、溶融炉や最終処分場の整備を行うごみ処理計画を策定して実際にその計画に着手している場合は、国の計画に従っていることになるので、溶融炉や最終処分場が完成するまで焼却灰の民間委託処分を行うことができます。しかし、整備していた溶融炉を休止又は廃止して焼却灰の民間委託処分を行っている自治体は国の計画に従うことを拒否している自治体になります。

溶融炉の長寿命化を行っている浦添市は、当然、このようなことは理解していると思いますが、もしかしたら、中北組合は誤解している(国の計画に従うことを拒否していないと考えている)かも知れません。

このブログの管理者は、その可能性はゼロではないと考えています。

なお、読者の皆さんは信じられないかも知れませんが、国や都道府県の職員の中にも誤解をしている職員が結構います。特に経験の浅い職員の場合は、ごみ処理施設の財産処分に対する基準やごみ処理施設の整備に対する国の補助制度等に関する認識が十分にあるとは言えないケースが多いので、十分な注意が必要です。

少し考えれば分かることですが、溶融炉の長寿命化を行わずに休止又は廃止して焼却灰の民間委託処分を行っている自治体は、国から見れば明らかに国の計画に従うことを拒否している自治体になります。そのため、その自治体が最終処分場を整備する場合であっても国は財政的援助を与えることはできません。できるとしたら、その自治体が新たに溶融炉を整備する場合であっても国は財政的援助を与えることができることになります。なぜなら、溶融炉(ガス化溶融炉を含む)も最終処分場もどちらも最終処分場の残余年数を維持するための施設だからです。

したがって、溶融炉の長寿命化を行わずに溶融炉を休止又は廃止している自治体が新たに溶融炉(ガス化溶融炉を含む)や最終処分場を整備する場合に国が財政的援助を与えると、国は溶融炉を整備している自治体に長寿命化を求める根拠を失うことになります。

中北組合がごみ処理計画の見直しを行わずに浦添市と広域組合を設立して広域施設を整備する場合は、まさにこのパターンになります。

下の画像は浦添市のためというよりも、どちらかというと中北組合と中城村と北中城村のために作成したものです。中北組合(実質上は中城村と北中城村)はごみ処理計画を改正するときに国の計画に従うことを拒否しています。しかし、浦添市と共同で地域計画を策定するときに組合がごみ処理計画を見直さない場合は、もう一度、国の計画に従うことを拒否することになります。

原寸大の資料(画像をクリック)

いずれにしても、浦添市が中北組合との広域処理を行う場合は、中北組合がごみ処理計画を見直すことが必須要件になります。

ただし、見直し案が浦添市の財政に累を及ぼすような施策である場合は、中北組合は地方財政法第2条第1項の規定()に違反することになります。

★地方財政法第2条第1項 地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行ってはならない。

この規定は、結果的に広域処理における浦添市のリスクを最少化する規定になるため、この規定に従って中北組合のごみ処理計画の見直し案を検討することにしました。ちなみに、地方自治法の規定により法令に違反する市町村の行為は無効になるので、中北組合がこの規定に違反してごみ処理計画を見直した場合は見直しを行っていないことになります。

見直し案の検討に当たって、広域組合のごみ処理計画は、暫定的に、①焼却灰の資源化を推進して、②最終処分場の整備は行わない計画にしました。この計画は現在の浦添市のごみ処理計画と同じ計画なので、国の計画に適合していることになります。

なお、検討に当たって、次の施策は地方財政法第2条第1条の規定に違反すると判断して除外しました。

(1)広域組合を設立する前に中北組合のごみ処理施設を廃止して、広域施設が完成するまで、中城村と北中城村の可燃ごみの焼却と焼却灰の処分を民間に委託する施策。

※この施策は中北組合がごみ処理施設を整備していない自治体になることによって溶融炉の再稼動を回避するための変則的な施策になりますが、広域組合における「民間委託」のリスクを浦添市も共有することになります。また、結果的に焼却灰の民間委託処分を行うことになるので、国の計画に適合しないごみ処理計画になると判断して除外しました。

(2)広域組合を設立する前に休止している中北組合の溶融炉を廃止して、広域施設が完成するまで、民間に委託して焼却灰の資源化を行う施策。

※この施策は沖縄県内おいて実施することは困難な施策です。また、中北組合の焼却灰は塩分濃度の高い流動床炉の飛灰(ばいじん)であるため、内地においても資源化が可能な企業は限られています。また、焼却灰の塩分濃度は年間を通じて大きく変動するため、民間側から脱塩処理を求められる可能性があります。しかし、飛灰の脱塩処理については国内においてほとんど実績がありません。そうなると、この施策は広域施設の整備に当たって確実に国の補助金を利用するための「担保」にはならないことになります。また、事業費が多額になることを考えると民間との契約を「担保」にすることは自治体として不適正な事務処理になると思われます。このため、この施策は浦添市の財政に累を及ぼすような施策になると判断しました。

(3)上記の(1)の代替案として、中城村と北中城村の可燃ごみの処理を浦添市の焼却炉と溶融炉を使用して行う施策。

※この施策は処理が可能であるとしても処理量が増加するため事前に環境影響調査等を行い問題がないことを国や県、そして、議会や住民に証明しなければなりません。また、廃棄物処理法のごみ処理施設の維持管理基準等に適合しない可能性があります。そして、今後は焼却炉と溶融炉の老朽化が進行していくことから想定外のトラブルが発生する恐れがあります。しかも、災害廃棄物が発生した場合は長期間処理が停滞することになります。したがって、この施策も浦添市の財政に累を及ぼすような施策になると判断しました。

(4)上記の(2)の代替案として、浦添市の溶融炉で中北組合の焼却灰の溶融処理を行う施策。

※この施策も上記の(3)と同じように事前に環境影響調査等を行い問題がないことを国や県、そして、議会や住民に証明しなければなりません。ただし、浦添市の溶融炉は流動床炉の焼却灰(飛灰)には対応していない機種であるため、仮に処理が可能であるとしても想定外のトラブルが発生する可能性があります。また、飛灰を処理することによって溶融温度も今より高くなります。そして、溶融スラグの品質が低下して安定した利用が困難になる恐れもあります。したがって、この施策も浦添市の財政に累を及ぼすような施策になると判断しました。

それでは、まず、下の画像をご覧下さい。

原寸大の資料(画像をクリック)

上の画像は、国の計画と中北組合の計画を比較したものですが、中北組合のごみ処理計画は明らかに国の計画には適合していない計画になっています。したがって、この計画を先に見直さなければ広域組合の計画も国の計画に適合しない計画になってしまいます。また、広域組合を設立する前に1市2村において共同で策定する「地域計画」も策定できなくなります。したがって、見直しは必須要件になります。

次に、下の画像をご覧下さい。

原寸大の資料(画像をクリック)

1市2村の現状と今後のスケジュールを考えると広域組合のごみ処理計画はほぼ間違いなくこのような計画になると考えます。したがって、中北組合のごみ処理計画は焼却灰の民間委託処分を中止する計画に見直すことになります。

次に、下の画像をご覧下さい。

原寸大の資料(画像をクリック)

この見直し案が最もオーソドックスな見直し案になります。そして、浦添市のごみ処理計画とほぼ同じものになりますが、溶融炉を再稼動すると国の計画に従って長寿命化を行うことになります。しかし、中北組合の溶融炉は塩分濃度の高い流動床炉の焼却灰(飛灰)を単独で処理する燃料式の溶融炉であり、国内では稼動している事例や長寿命化が行われた事例のない特殊な溶融炉(汎用炉ではなく実験炉に近い溶融炉)です。しかも、メーカー側はガス化溶融炉に移行しているため、事実上、この処理方式からは撤退しています。また、水蒸気爆発のリスクの高い溶融炉であるため、広域施設が完成する前に使用が困難になる恐れもあります。したがって、この施策は浦添市の財政に累を及ぼす可能性が極めて高い施策になります。

最後に、下の画像をご覧下さい。

原寸大の資料(画像をクリック)

広域処理を前提として中北組合がごみ処理計画を見直す場合は、消去法で考えると、この施策(広域組合を設立する前に代替措置を講じて休止している溶融炉を廃止する施策)しか残っていないことになります。なお、中北組合が講じる代替措置については広域組合を設立する前に講じることになるので、浦添市の財政に累が及ぶような施策かどうかを事前に確認することができます。したがって、この代替措置が浦添市の財政に累を及ぼすような施策であれば、中北組合との広域処理は「白紙撤回」ということになります。しかし、この代替措置が浦添市の財政に累を及ぼすような施策ではないことが確認できた場合は、浦添市の溶融炉に想定外のトラブル等が発生した場合に同様の代替措置を講じることができるようになります。したがって、この施策は浦添市にとっても大きなメリットのある施策になると考えます。

なお、中北組合にはごみ処理計画を見直さないという選択肢(施策)もありますが、その場合は確実に浦添市の財政に累を及ぼす(地方財政法第2条第1項の規定に違反する)施策になります。

【結論①】

新聞報道によると平成29年度には1市2村において「地域計画」の策定に着手する予定になっています。しかし、それまでに代替措置の方法が決まらなければ「地域計画」は策定できないことになります。したがって、中北組合は平成28年度において代替措置に対する具体的な検証(実証実験等)を行い、平成29年度には実際に代替措置を講じる前提で事務処理を行っていく必要があると考えます。

 【結論②】

溶融炉の廃止に当たって中北組合が適切な代替措置を講じられない場合は、中北組合にとって大きなダメージになります。また、代替措置が決まらなければ浦添市としては広域処理を推進することができなくなります。したがって、浦添市と中北組合が広域処理に関する協議会を設立して覚書を締結する場合は、中北組合が適切な代替措置を講じて溶融炉を廃止することを前提又は条件にして締結する必要があると考えます。

※広域処理が「白紙撤回」になると、中北組合は自主財源によりごみ処理施設の整備(長寿命化、更新、新設等)を行っていくことになります。広域組合を設立する前に広域処理が「白紙撤回」になっても浦添市の財政に累が及ぶようなことにはなりませんが、中北組合(実質的には中城村と北中城村)の財政は悲惨な状況になります。したがって、浦添市が中北組合との広域処理を本気で推進するのであれば、中北組合が代替措置を講じるための事務処理に早急に着手することを促す必要があると考えます。

※中北組合は溶融炉を休止したまま焼却灰の民間委託処分を続けていても、広域施設の整備に当たって国の補助金が利用できると誤解している可能性があります。また、もしかすると、中城村や北中城村には中北組合が焼却灰の民間委託処分を中止しなければ補助金が利用できなくなる(浦添市に迷惑をかけることになる)という認識はないかも知れません。したがって、今年度中に1市2村の間で中北組合が代替措置を講じて溶融炉を廃止することについて合意形成を図る必要があると考えます。

※浦添市と異なり複数の市町村が一部事務組合を設立してごみ処理を行っている場合は、関係法令や国の補助制度等に対する組織全体の認識度が低くなる傾向があります。溶融炉を休止して焼却灰の民間委託処分を行うために北中城村が平成26年3月に改正したごみ処理計画を読むと、失礼ながらそのように感じさせる部分が随所にあります。

2016-03-11

【追加記事】

この記事は、法令の規定と法令遵守を大前提にして演繹法を用いて書いています。

浦添市と中北組合そして中城村と北中城村が広域処理に関する予算案を議会に提出して議会が承認した場合は、その内容(計画)がどのようなものであっても自治体の施策に対する議決が行われたことになるので、協議会を設立(覚書を締結)する前であっても地方財政法第2条第1項の規定が適用されます。

特に、広域処理に関する他の自治体との協議に関する予算は他の自治体の財政に直接的に影響を与えるものになるので、この規定が適用されることになると考えます。

このため、規定に違反する(予算を執行することで他の自治体の財政に累を及ぼすような施策に該当する)場合は、施策が無効になり予算の執行も停止しなければならないことになります。

中北組合や中城村と北中城村は、最低でも、①溶融炉の長寿命化を行わずに廃止すること、そして、②焼却灰の民間委託処分を中止することを浦添市に対して事前に伝える必要があると考えます。

では、浦添市の場合はどうか?

浦添市は、最低でも、①焼却灰の民間委託処分を中止すること、②ごみ処理施設の長寿命化を行うことを中北組合に対して事前に伝える必要があると考えます。

なぜなら、これらのことを伝えずに広域処理に関する予算を執行すると、広域施設の整備に当たって国の補助金を利用することができなくなる可能性があるからです。

しかし、これらのことを相手に伝えずに予算を執行した場合であっても、事務処理を修正すれば問題はないと考えます。

ただし、浦添市は中北組合に対して焼却灰の民間委託処分を中止することだけは事前に伝える必要があると考えます。

なぜなら、浦添市は国の計画に従ってごみ処理を行っていますが、中北組合は国の計画に従うことを拒否してごみ処理を行っているからです。

そして、浦添市が中北組合に対して焼却灰の民間委託処分を中止することを求めた場合は、中北組合は浦添市に対して溶融炉の再稼動は行わずに廃止することを伝えなければならないことになります。

なぜなら、浦添市も中北組合も溶融炉の再稼動は想定していないからです。また、溶融炉を再稼動することは、事実上、広域処理を「白紙撤回」することになるからです。

したがって、浦添市と中北組合が広域処理を推進する場合は、中北組合が代替措置を講じて溶融炉を廃止することが決定していることになります。