乳用牛のふん尿からバイオガスを生成して発電に活用する八重瀬町バイオガスプラント。手前のタンクはメタン発酵槽(八重瀬町提供)
沖縄県八重瀬町は、乳用牛のふん尿からバイオガスを生成して発電し、今年5月から本格的に沖縄電力に売電している。ふん尿からのバイオマス発電は県内初。処理過程で出る液肥は町内のサトウキビ畑や牧草地などに無料散布している。廃棄物を資源化して地域で循環利用する環境に優しい取り組みだ。施設の指定管理者の八重瀬堆肥センターの新里菊也代表取締役(44)は「酪農家の悩みだったふん尿の悪臭が解消され、液肥は農家から喜ばれている。捨てるところがなく、画期的だ」と話す。
町富盛の町バイオガスプラントは、環境省が2015年度に地域循環型バイオガスシステム構築モデル事業として建設した。総事業費約4億9千万円。2年間の実証実験を経て17年度に町に無償譲渡され、町は施設の指定管理者に八重瀬堆肥センターを選定した。
町内の7酪農家が飼育する約400頭の乳用牛のふん尿を原料に、1日約30~50トンを処理する。ガスの発生を活発にするため、野菜くずなど動植物性残さをふん尿と混ぜ合わせている。
現在は発電機1基を設置し、1時間に約25キロワットを発電。売電単価は1キロワット税込み約42円で、年間約770万円の収入を見込む。売電収入と残さの処分料などを施設の運営費や修繕費の積み立てなどに充てる。液肥は希望する農家の畑に無料散布し、堆肥は同センターで販売している。
自身も酪農家の新里代表取締役は、これまでふん尿の処理に困り、悪臭やハエの発生で地域に迷惑を掛けていたという。「(ふん尿による)沖縄初の循環型社会が地域に認められるよう今後も頑張りたい。早ければ次年度にも発電機を増設したい」と抱負を語った。 (豊浜由紀子)