野口武彦氏の幕末ものがおもしろい! という話は、以前に上野モンマルトル でしました。
幕末維新、といいましても、当然のことながら、みんながみんな志士でもなければ、新選組でもないわけでして、圧倒的に、普通の人たちが多いわけです。
野口氏は、その、ごく普通の人々にスポットをあてていて、おもしろいんです。
普通の人たち、って、どんな人か、といえば、たとえば、土方歳三のリベンジ に書きました、野口武彦氏の『幕末伝説』収録、「幕末不戦派軍記」の主人公、なまけもの幕府下っ端役人四人組み、とか、じゃないでしょうか。
歩兵の訓練なんてしんどいからいやで、コネをつかってさぼろうとしたところが、結局、鳥羽伏見の戦いにまきこまれて、逃げまどい、行き場に困ったあげくの成り行きで、砲弾が飛んでくる淀でお握り炊き出し隊をやっていましたところが、土方歳三にばったり。どうして土方さんが現れたかといえば、鳥羽伏見の土方歳三 に、あるようなわけでして。
ともかく、普通の人たちは、いままで通り普通にやろうとして、しかし、いろいろと災難にまきこまれたりもするわけなんですが、どちらの陣営にしろ、がんばろう!と、勢い込んでいた人々の方が少数派で、だめだめな普通の人たちが、大多数であったでしょう。
当然、ごく普通の人々の楽しみ、というものもあったわけでして、幕末の江戸の女たちが、どんな本を楽しんでいたかって、ちょっと知りたくなったことがありました。
『白縫譚(しらぬいものがたり』
これです。なんとも、きれいな本でしょう?
嘉永2年(1849)から明治18年(1885)まで、延々書き継がれた伝奇物語なんです。36年間!です。14歳の少女が読み始めて、50のおばさんになるまで刊行され続けた、ロングセラー本だったんです。
途中で、作者も三名にわたって変わっています。うろ覚えなんですが、維新後に一度、刊行が中断されたことがあったようでした。二番目の作者は、幕臣であったのではないかと、私は思ったり。
非役の下っ端の幕臣が書いていて、気がついてみたら維新の騒動で、もうかなりの年ではあるし、世の変化についていけず、病気になったとか。いえ、想像なんですけど。
内容はといえば、黒田家のお家騒動と天草の乱を素材にした歴史伝奇もの。
実は、明治後期に、一冊にまとめて活字印刷本になっていまして、それは、近くの図書館で借り出し可能だったので、少しは読んだのですが、あまり読み進まないうちに期限が来て、挫折しました。
今読んで、おもしろいものか、といわれると、ちょっと、あれなんです。
なんでも現在、実物は、90編あるうちの71編までしか見つかってないんだそうです。
これもかなり以前なんですが、古書目録で、たしか五〇数編くらいがまとめて、数十万円(たしか百万に近かったような)で売りに出ていました。
見るだけでも見てみたかったんですけどね、こうやって、ネットで見ることができて、幸せです。
江戸の少女は、毎年、こんな本を楽しみに読み重ねながら、黒船騒動やら大地震やら火事やら、桜田門外の変やらを経験し、年を重ね、結婚して子供が生まれ、維新を迎え、明治の世になってもなお、楽しみに読み継いだんですよね。
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幕末維新、といいましても、当然のことながら、みんながみんな志士でもなければ、新選組でもないわけでして、圧倒的に、普通の人たちが多いわけです。
野口氏は、その、ごく普通の人々にスポットをあてていて、おもしろいんです。
普通の人たち、って、どんな人か、といえば、たとえば、土方歳三のリベンジ に書きました、野口武彦氏の『幕末伝説』収録、「幕末不戦派軍記」の主人公、なまけもの幕府下っ端役人四人組み、とか、じゃないでしょうか。
歩兵の訓練なんてしんどいからいやで、コネをつかってさぼろうとしたところが、結局、鳥羽伏見の戦いにまきこまれて、逃げまどい、行き場に困ったあげくの成り行きで、砲弾が飛んでくる淀でお握り炊き出し隊をやっていましたところが、土方歳三にばったり。どうして土方さんが現れたかといえば、鳥羽伏見の土方歳三 に、あるようなわけでして。
ともかく、普通の人たちは、いままで通り普通にやろうとして、しかし、いろいろと災難にまきこまれたりもするわけなんですが、どちらの陣営にしろ、がんばろう!と、勢い込んでいた人々の方が少数派で、だめだめな普通の人たちが、大多数であったでしょう。
当然、ごく普通の人々の楽しみ、というものもあったわけでして、幕末の江戸の女たちが、どんな本を楽しんでいたかって、ちょっと知りたくなったことがありました。
『白縫譚(しらぬいものがたり』
これです。なんとも、きれいな本でしょう?
嘉永2年(1849)から明治18年(1885)まで、延々書き継がれた伝奇物語なんです。36年間!です。14歳の少女が読み始めて、50のおばさんになるまで刊行され続けた、ロングセラー本だったんです。
途中で、作者も三名にわたって変わっています。うろ覚えなんですが、維新後に一度、刊行が中断されたことがあったようでした。二番目の作者は、幕臣であったのではないかと、私は思ったり。
非役の下っ端の幕臣が書いていて、気がついてみたら維新の騒動で、もうかなりの年ではあるし、世の変化についていけず、病気になったとか。いえ、想像なんですけど。
内容はといえば、黒田家のお家騒動と天草の乱を素材にした歴史伝奇もの。
実は、明治後期に、一冊にまとめて活字印刷本になっていまして、それは、近くの図書館で借り出し可能だったので、少しは読んだのですが、あまり読み進まないうちに期限が来て、挫折しました。
今読んで、おもしろいものか、といわれると、ちょっと、あれなんです。
なんでも現在、実物は、90編あるうちの71編までしか見つかってないんだそうです。
これもかなり以前なんですが、古書目録で、たしか五〇数編くらいがまとめて、数十万円(たしか百万に近かったような)で売りに出ていました。
見るだけでも見てみたかったんですけどね、こうやって、ネットで見ることができて、幸せです。
江戸の少女は、毎年、こんな本を楽しみに読み重ねながら、黒船騒動やら大地震やら火事やら、桜田門外の変やらを経験し、年を重ね、結婚して子供が生まれ、維新を迎え、明治の世になってもなお、楽しみに読み継いだんですよね。
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