日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(88)「括弧」と「返り点」の用法(略9)。

2018-09-17 13:30:53 | 訓読
(01)
① 冀得兎=
① 冀〔復得(兎)〕⇒
① 〔復(兎)得〕冀=
① 〔復た(兎を)得んことを〕冀ふ=
① 〔もう一度(兎を)得ることを〕願ふ。
(02)
冀得兎=
② 復冀〔得(兎)〕⇒
② 復〔(兎)得〕冀=
② 復た〔(兎を)得んことを〕冀ふ=
② もう一度〔(兎を)得ることを〕願ふ。
従って、
(01)(02)により、
(03)
原文の「冀」と「復」を入れ替へて、「冀得兎」としても、
復た兎を得んことを冀ふ。
復た兎を得んことを冀ふ。
といふ風に、「読み方(訓読)」自体は、変わらない(旺文社、漢文の基礎、1973年、36頁改)。
然るに、
(04)
① 〔もう一度(兎を)得ることを〕願ふ。
② もう一度〔(兎を)得ることを〕願ふ。
に於いて、願ふ〔内容〕は、「同じ」ではない
従って、
(03)(04)により、
(05)
① 冀得兎。
冀得兎。
に対する、
① 復た兎を得んことを冀ふ。
② 復た兎を得んことを冀ふ。
といふ「訓読」は「同じ」であっても、「意味内容」のうえでは大きな違いがあるので注意を要する(旺文社、漢文の基礎、1973年、36頁改)。
然るに、
(06)
例へば、
① 宋人に田を耕す者有り。
② 田中に株有あり、兎走りて株に觸れ、頸を折り而死す。
③ 因りて其の耒を釈て而株を守り、復た兎を得んと冀ふ。
④ 兎復た得可から不し而、身は宋國の笑ひと爲れり。
といふ「訓読」を、
① 宋人有耕田者。
② 田中有株、兎走觸株、折頸而死。
③ 因釋其耒而守株、冀復得兎。
④ 兎不可復得、而身爲宋國笑。
といふ「原文」に戻すことを、「復文」といふ。
従って、
(05)(06)により、
(07)
復文の効果は、漢文の語順に対して敏感になることです(古田島洋介、これならわかる復文の要領、2017年、22頁)。
といふ、ことになる。
然るに、
(08)
私の場合は、
① 宋人有耕田者。
② 田中有株、兎走觸株、折頸而死。
③ 因釋其耒而守株、冀復得兎。
④ 兎不可復得、而身爲宋國笑。
といふ「白文」を、
① 宋人に田を耕す者有り。
② 田中に株有あり、兎走りて株に觸れ、頸を折り而死す。
③ 因りて其の耒を釈て而株を守り、復た兎を得んと冀ふ。
④ 兎復た得可から不し而、身は宋國の笑ひと爲れり。
といふ風に「読み」、
① 宋人に田を耕す者有り。
② 田中に株有あり、兎走りて株に觸れ、頸を折り而死す。
③ 因りて其の耒を釈て而株を守り、復た兎を得んと冀ふ。
④ 兎復た得可から不し而、身は宋國の笑ひと爲れり。
といふ「訓読」を、
① ソウジンイウ、コウデンシャ。
② デンチュウイウシュ、トソウショクシュ、セッケイジシ。
③ インシャクキライジシュシュ、キフクトクト。
④ ト、フツカ、フクトク、ジシンヰ、ソウコクショウ。
といふ風に、「日本漢字音」で「読む」ように、してゐる(た)。
従って、
(06)(08)により、
(09)
私の場合は、『口頭』で、「復文」を行ってゐる(た)のであって、その「結果」として、例へば、
[一] 矛盾(韓非子)
① 楚人有鬻盾與矛者。
② 譽之曰、吾盾之堅、莫能陷也。
③ 又譽其矛曰、吾矛之利、於物無不陷也。
④ 或曰、以子之矛、陷子之盾、何如。
⑤ 其人弗能應也。
[二] 守株(韓非子)
① 宋人有 耕田者。
② 田中有株、兎走觸株、折頸而死。
③ 因釋其耒而守株、冀復得兎。
④ 兎不可復得、而身爲宋國笑。
[三] 借虎威(戦國策)
① 虎求百獸而食之得狐。
② 狐曰子無敢食我也。
③ 天帝使我長百獸。
④ 今子食我是逆天帝命也。
⑤ 子以我爲不信吾爲子先行。
⑥ 子隨我後觀。
⑦ 百獸之見我而敢不走乎。
⑧ 虎以爲然。
⑨ 故遂與之行。
⑩ 獸見之皆走。
⑪ 虎不知獸畏己而走也。
⑫ 以爲畏弧也。
といふ「原文」を、今でも、「日本漢字音」で、「暗唱」することが、出来る。
然るに、
(10)
「中国語(北京語)」に関しては、全く、分からないため、
① 宋人有 耕田者。
② 田中有株、兎走觸株、折頸而死。
③ 因釋其耒而守株、冀復得兎。
④ 兎不可復得、而身爲宋國笑。
⑤ 今欲以先王之政、治當世之民、皆守株之類也。
といふ「漢文」を、
① Sòng rén yǒu gēng tián zhě.
② Tiánzhōng yǒu zhū, tù zǒu chù zhū, zhé jǐng ér sǐ.
③ Yīn shì qí lěi ér shǒuzhū, jì fù dé tù.
④ Tù bùkě fù dé, ér shēn wèi sòng guó xiào.
といふ風に、読むことは、出来ない
(11)
漢音」で読めば、
① 兄弟=けいてい
② 女性=じょせい
③ 今昔=きんせき
④ 人間=じんかん
⑤ 強力=きょうりょく
である(はずである)。
(12)
呉音」で読めば、
① 兄弟=きょうだい
② 女性=にょしょう
③ 今昔=こんじゃく
④ 人間=にんげん
⑤ 強力=ごうりき
である(はずである)。
(13)
普通」に読めば、
① 兄弟(呉音)=きょうだい
② 女性(漢音)=じょせい
③ 今昔(呉音)=こんじゃく
④ 人間(呉音)=にんげん
⑤ 強力(漢音)=きょうりょく
である。
然るに、
(14)
平安時代がさうであったやうに、
明経の徒、宜しく漢音に習熟すべし(日本記略)。
といふことから、「漢文の音読」は、「漢音」で「徹底」しようとするならば、「一々、辞書」で調べなければならないものの、そんなのは、「大変」なので、私の場合は、一時は、「漢音」だけて「音読」しようとして、結局は、挫折した。
従って、
(15)
例へば、
① 宋人に田を耕す者有り。
といふ「訓読」を、
① ソウジンイウ、コウデンシャ。
といふ風に、「復文」するとき、
① 有=イウ(音)
なのか、
① 有=イウ(音)
なのかは、「辞書」を引かなければ、分からない。