《東京新聞 視点 見張り塔から メディアの今》
◆ ネットが民主主義の敵に
フェイクニュースの陰にロシアの世論工作
二〇一六年の米大統領選で、虚偽の情報を基にトランプ候補を支持し、クリントン候補を攻撃するプログ記事が、ソーシャルメディア上で大量に流通した。その発信源の多くが欧州の小国・マケドニアのヴェレスという町の若者たちだった。
広告費目当てでフェイクニュースを発信していたことは世界的な話題となったが、ここにきて実は単なる若者の小遣い稼ぎではなく、政治的な背景が報道されるようになってきている。
米バズフィードは一八年七月十八日、フェイクニュースを利用した一連のマケドニアの若者の小遣い稼ぎの背後には、ロシアのエージェントや米国の極右ニュースサイトと親交のあるトラシェ・アルソフ弁護士がいることを報道した。
記事によれば、アルソフ氏は自らのフェイスブックで、FOXニュースやブライトバートなどの極右メディアのニュース記事を積極的に拡散。
また、米国の極右ニュースメディアの創設者たちや、ロシアゲート疑惑を巡ってモラー特別検察官が捜査対象にしているロシアのエージェント、アンナ・ボガチェフ氏とも交友関係があるという。
当初は金儲(もう)け目的の若者だけとみられていたマケドニアのフェイクニュース産業の陰にロシアの世論工作活動が見えてきたということだ。まだ疑惑の段階だが、マケドニアのフェイクニュース産業にも今後も注視し続ける必要がありそうだ。
国際人権監視NGOの「プリーダムハウス」が昨年十一月に発表したリポート「ネットにおける自由(Freedom on the net)」によれば、ソーシャルメディアを利用した世論工作は世界二十力国で確認されているという。
その多くは、政権批判や反政府活動の妨害、フェイクニュースの拡散などだ。
このリポートの発表後、リポートの正しさを裏付けるように、国家による世論工作事例が次々に明らかになった。
韓国の聯合ニュースは一八年十月十五日、李明博(イミョンバク)政権時の一〇年二月から一二年四月にかけて、警察が情報系の警察官約千五百人を動員し、政府と警察に好意的な世論を形成することを目的として、ニュースのコメント欄やツイッターに約三万七千八百件の投稿を行っていたことを報じた。
ロヒンギャ問題に揺れるミャンマーでも政府が関与する大規模な世論工作が発覚した。米ニューヨーク。タイムズは一八年十月十五日、ミャンマー国軍がフェイスブックにロヒンギャへの危機感を煽(あお)るプロパガンダ記事を組織的に投稿していたことを報道した。
ミャンマーでは、数年前からこのような活動が行われており、国軍関係者ら最大約七百人が関与。その中にはロシアで研修を受けた人間もいたという。
これらの事実が示すのは、多くの国でインターネットが民主主義の敵になりつつあるという残念な事実だ。
日本においても先日投開票が行われた沖縄県知事選でフエイクニュースの氾濫が大きな問題となった。
日本でも同様の現実があることを認め、ネットを使った世論工作に対抗していく手段を考えなければいけない。(毎月の第4木曜日掲載)
『東京新聞』(2018年10月25日【日々論々】)
◆ ネットが民主主義の敵に
フェイクニュースの陰にロシアの世論工作
ジャーナリスト・津田大介さん
二〇一六年の米大統領選で、虚偽の情報を基にトランプ候補を支持し、クリントン候補を攻撃するプログ記事が、ソーシャルメディア上で大量に流通した。その発信源の多くが欧州の小国・マケドニアのヴェレスという町の若者たちだった。
広告費目当てでフェイクニュースを発信していたことは世界的な話題となったが、ここにきて実は単なる若者の小遣い稼ぎではなく、政治的な背景が報道されるようになってきている。
米バズフィードは一八年七月十八日、フェイクニュースを利用した一連のマケドニアの若者の小遣い稼ぎの背後には、ロシアのエージェントや米国の極右ニュースサイトと親交のあるトラシェ・アルソフ弁護士がいることを報道した。
記事によれば、アルソフ氏は自らのフェイスブックで、FOXニュースやブライトバートなどの極右メディアのニュース記事を積極的に拡散。
また、米国の極右ニュースメディアの創設者たちや、ロシアゲート疑惑を巡ってモラー特別検察官が捜査対象にしているロシアのエージェント、アンナ・ボガチェフ氏とも交友関係があるという。
当初は金儲(もう)け目的の若者だけとみられていたマケドニアのフェイクニュース産業の陰にロシアの世論工作活動が見えてきたということだ。まだ疑惑の段階だが、マケドニアのフェイクニュース産業にも今後も注視し続ける必要がありそうだ。
国際人権監視NGOの「プリーダムハウス」が昨年十一月に発表したリポート「ネットにおける自由(Freedom on the net)」によれば、ソーシャルメディアを利用した世論工作は世界二十力国で確認されているという。
その多くは、政権批判や反政府活動の妨害、フェイクニュースの拡散などだ。
このリポートの発表後、リポートの正しさを裏付けるように、国家による世論工作事例が次々に明らかになった。
韓国の聯合ニュースは一八年十月十五日、李明博(イミョンバク)政権時の一〇年二月から一二年四月にかけて、警察が情報系の警察官約千五百人を動員し、政府と警察に好意的な世論を形成することを目的として、ニュースのコメント欄やツイッターに約三万七千八百件の投稿を行っていたことを報じた。
ロヒンギャ問題に揺れるミャンマーでも政府が関与する大規模な世論工作が発覚した。米ニューヨーク。タイムズは一八年十月十五日、ミャンマー国軍がフェイスブックにロヒンギャへの危機感を煽(あお)るプロパガンダ記事を組織的に投稿していたことを報道した。
ミャンマーでは、数年前からこのような活動が行われており、国軍関係者ら最大約七百人が関与。その中にはロシアで研修を受けた人間もいたという。
これらの事実が示すのは、多くの国でインターネットが民主主義の敵になりつつあるという残念な事実だ。
日本においても先日投開票が行われた沖縄県知事選でフエイクニュースの氾濫が大きな問題となった。
日本でも同様の現実があることを認め、ネットを使った世論工作に対抗していく手段を考えなければいけない。(毎月の第4木曜日掲載)
『東京新聞』(2018年10月25日【日々論々】)
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