◆ 公的年金の株式運用で損失
「成長戦略」で5・3兆円赤字 (週刊新社会)
公的年金を運用する住金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は7月27日、2015年度運用実績で5兆3098億円の赤字となったと公表した。
2014年10月から公的年金積立金約130兆円の運用比率を国内・外国株式共に12%から25%と株式運用を50%にすると共に乖離容認幅も従前より3%増加とした。
この図表にある運用比率である基本ポートフォーリオ(金融商品の組み合わせ)の最初の年度で、運用実績が5兆3098億円の赤字となった。
その後の16年4~6月期も約5兆2342億円の損失が続いている。
それでも高橋則博GPIF理事長は、リーマンショックを含む15年間で45・4兆円の累積収益をあげているとして、基本ポートフォーリオを今後も変更しないとした。
◆ 積立金株式運用何が問題か
2001年度の自主運用を開始してから運用実績が赤字になったのは、ITバブル崩壊期01年度(△0・58兆円)、02年度(△2・45兆円)、リーマンショック時07年度(△5・52兆円)、08年度(△9・35兆円)、10年度(△0・30兆円)、今回の15年度(5・31兆円)である。
基本ポートフォーリオ変更前の01年度~13年度でも、リーマンショック、原油価格の高騰等の世界経済情況で運用実績が赤字になったが、累積収益額は35・4兆円で年度平均にすると2・72兆円の運用実績がある。
今度のGPIFによる公的年金積立金の株式比率を50%に増やす基本ポートフォーリオの変更は、安倍政権の成長戦略の一環として「日本の証券市場に世界の投資家を引き付け」株価の上昇対策として行われた。
そして日銀の追加金融緩和とほぼ同じ時期であったことから、新聞等では株式比率を増やすことに対して「一定の懸念を表明」したが大きな世論となることなく、2014年12月の総選挙で自公は衆院議席の3分の2獲得した。
この変更よりGPIFは、世界最大級の機関投資家となり、6月末で国内株保有額は推計28兆円で日本の株式市場で「クジラ」と呼ばれている(『朝日』)。
◆ 高齢者世帯55%は公的年金のみ
各国の公的年金の株式運用金額と比率(自国市場での株式比率)は、
日本 137・5兆円50%(7・6%)で、
カナダ 25・1兆円65%(0・9%)、
韓国 53・7兆円40%(0・9%)である。
しかし、米国は株式ゼロで334・4兆円全て債権である。
私たちが受け取る老齢年金は、現役世代が納付する保険料を充てる賦課方式を原則に、基礎年金の国庫負担という税金、そして不足分を年金積立金を取り崩すことにしている。
私は、公的年金積立金は基本的に株式運用するのは反対である。65歳以上の高齢者世帯の55%が公的年金のみで生活している中で、重要な財源であり安全な運用を基本とし、ましてや時の政権の意向でリスクを高める運用比率の変更はあってはならないからだ。
2007年に「消えた年金記録15000万件」が大きな社会問題となった。教育基本法を改悪した第一次安倍内閣(2006年9月~07年9月)の時である。
閣僚の不祥事、年金記録、リーマンショックで年金積立金の運用実績の赤字等で世論は、自民党長期政権に厳しい目を向けた。そして、「コンクリートから人」「最低保障年金制度の実現」を訴えた民主党を中心とした政権を選択した。
年金記録問題は1962年社保庁発足、コンピュータ導入以前から発生していた。その責任が、自民党長期政権とコンピュータ入力の検証を怠った歴代厚生(労働)相、社会保険庁長官、厚生(労働)省高級官僚にある。
にもかかわらずマスコミは連日、社保庁職員とりわけ労働組合攻撃を展開し、2007年6月社会保険庁解体、日本年金機構法案を成立させ2010年に経験豊かな労働者を「差別・選別」で解雇した。
◆ 安倍内閣が、社会報償費年間5000億円削減
その安倍政権が安保法制(戦争法)を強行採決し、そして社会保障費を3年間で1・5兆円の削減を経済財政運営の基本方針(骨太の方針)とした。
小泉内閣の年間2200億円削減で病院統廃合、介護保険法の施行、そして労働者派遣法の改悪で格差の拡大と貧困が「派遣村」として社会問題となったことは記憶に新しい。
安倍内閣の年間5000億円の削減は、小泉内閣の2倍以上であり社会保障費が次々と削減されている。
今また、17年度概算要求の社会保障給付費自然増6400億円が削減されようとしている。
7月参院選挙で自公改憲勢刀に参議院でも3分の2議席を許してしまった。
いま安保法制廃止、辺野古新基地建設阻止、労働法改悪と格差拡大・原発再稼働反対、来年3月31日に迫った福島原発「避難区域外避難者」の住宅支援打ち切り問題等と課題は多くある。
これらの課題と共に毎日の暮らしである、社会保障の切捨て反対を訴えていかなければならない。
黙っていたら「年金、医療、介護、福祉」は削減され生活が破壊されてしまう。
『週刊新社会』(2016年10月18日)
「成長戦略」で5・3兆円赤字 (週刊新社会)
特定社会保険労務士 塚本鉄男
公的年金を運用する住金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は7月27日、2015年度運用実績で5兆3098億円の赤字となったと公表した。
2014年10月から公的年金積立金約130兆円の運用比率を国内・外国株式共に12%から25%と株式運用を50%にすると共に乖離容認幅も従前より3%増加とした。
この図表にある運用比率である基本ポートフォーリオ(金融商品の組み合わせ)の最初の年度で、運用実績が5兆3098億円の赤字となった。
その後の16年4~6月期も約5兆2342億円の損失が続いている。
それでも高橋則博GPIF理事長は、リーマンショックを含む15年間で45・4兆円の累積収益をあげているとして、基本ポートフォーリオを今後も変更しないとした。
◆ 積立金株式運用何が問題か
2001年度の自主運用を開始してから運用実績が赤字になったのは、ITバブル崩壊期01年度(△0・58兆円)、02年度(△2・45兆円)、リーマンショック時07年度(△5・52兆円)、08年度(△9・35兆円)、10年度(△0・30兆円)、今回の15年度(5・31兆円)である。
基本ポートフォーリオ変更前の01年度~13年度でも、リーマンショック、原油価格の高騰等の世界経済情況で運用実績が赤字になったが、累積収益額は35・4兆円で年度平均にすると2・72兆円の運用実績がある。
今度のGPIFによる公的年金積立金の株式比率を50%に増やす基本ポートフォーリオの変更は、安倍政権の成長戦略の一環として「日本の証券市場に世界の投資家を引き付け」株価の上昇対策として行われた。
そして日銀の追加金融緩和とほぼ同じ時期であったことから、新聞等では株式比率を増やすことに対して「一定の懸念を表明」したが大きな世論となることなく、2014年12月の総選挙で自公は衆院議席の3分の2獲得した。
この変更よりGPIFは、世界最大級の機関投資家となり、6月末で国内株保有額は推計28兆円で日本の株式市場で「クジラ」と呼ばれている(『朝日』)。
◆ 高齢者世帯55%は公的年金のみ
各国の公的年金の株式運用金額と比率(自国市場での株式比率)は、
日本 137・5兆円50%(7・6%)で、
カナダ 25・1兆円65%(0・9%)、
韓国 53・7兆円40%(0・9%)である。
しかし、米国は株式ゼロで334・4兆円全て債権である。
私たちが受け取る老齢年金は、現役世代が納付する保険料を充てる賦課方式を原則に、基礎年金の国庫負担という税金、そして不足分を年金積立金を取り崩すことにしている。
私は、公的年金積立金は基本的に株式運用するのは反対である。65歳以上の高齢者世帯の55%が公的年金のみで生活している中で、重要な財源であり安全な運用を基本とし、ましてや時の政権の意向でリスクを高める運用比率の変更はあってはならないからだ。
2007年に「消えた年金記録15000万件」が大きな社会問題となった。教育基本法を改悪した第一次安倍内閣(2006年9月~07年9月)の時である。
閣僚の不祥事、年金記録、リーマンショックで年金積立金の運用実績の赤字等で世論は、自民党長期政権に厳しい目を向けた。そして、「コンクリートから人」「最低保障年金制度の実現」を訴えた民主党を中心とした政権を選択した。
年金記録問題は1962年社保庁発足、コンピュータ導入以前から発生していた。その責任が、自民党長期政権とコンピュータ入力の検証を怠った歴代厚生(労働)相、社会保険庁長官、厚生(労働)省高級官僚にある。
にもかかわらずマスコミは連日、社保庁職員とりわけ労働組合攻撃を展開し、2007年6月社会保険庁解体、日本年金機構法案を成立させ2010年に経験豊かな労働者を「差別・選別」で解雇した。
◆ 安倍内閣が、社会報償費年間5000億円削減
その安倍政権が安保法制(戦争法)を強行採決し、そして社会保障費を3年間で1・5兆円の削減を経済財政運営の基本方針(骨太の方針)とした。
小泉内閣の年間2200億円削減で病院統廃合、介護保険法の施行、そして労働者派遣法の改悪で格差の拡大と貧困が「派遣村」として社会問題となったことは記憶に新しい。
安倍内閣の年間5000億円の削減は、小泉内閣の2倍以上であり社会保障費が次々と削減されている。
今また、17年度概算要求の社会保障給付費自然増6400億円が削減されようとしている。
7月参院選挙で自公改憲勢刀に参議院でも3分の2議席を許してしまった。
いま安保法制廃止、辺野古新基地建設阻止、労働法改悪と格差拡大・原発再稼働反対、来年3月31日に迫った福島原発「避難区域外避難者」の住宅支援打ち切り問題等と課題は多くある。
これらの課題と共に毎日の暮らしである、社会保障の切捨て反対を訴えていかなければならない。
黙っていたら「年金、医療、介護、福祉」は削減され生活が破壊されてしまう。
『週刊新社会』(2016年10月18日)
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