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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

最大の被害を蒙る大井川流域住民のストップ・リニアの固い意志、岐路に立たされるJR東海

2020年08月15日 | 平和憲法
 ◆ リニア新幹線 工事でごねているのはJR東海 (週刊新社会)
   住民側貫く静岡県知事

ストップ・リニア!訴訟原告団長 川村晃生

 ◆ 分かれるリニアの評価

 東京~名古屋~大阪間を67分で結び、超巨大都市圏を造るという目的のもと、2007年にJR東海が自社費用によるリニア中央新幹線構想を発表した。
 経済界や地方自治体がこれを歓迎する中で、自然環境への悪影響沿線住民の生活被害、たとえば大量の残土、彪大(ぼうだい)なエネルギー、エコパーク南アルプスのトンネル掘削、騒音・日照などはほとんど置き去りにされたまま、ともかく工事が進められてきている。
 ところがここに来て、2027年の開業を目指すリニアに赤信号が灯った。
 実は南アルプストンネル(静岡工区)の掘削をめぐって、長い間の懸案であった大井川の流量減少問題について6月26日、川勝平太静岡県知事と金子慎JR東海社長のトップ会談が行われた。
 事業の行く末を左右しかねない重要な会談で、社会の注目度も高く、またユーチューブで生中継されたので、会談を多くの人が同時進行形で目にすることができた。
 ◆ 注目されたトップ会談

 この会談は準備工事だけでも始めさせてほしいという金子社長の要請に対して、川勝知事進備工事は本体工事と一体化したものだという主張を貫き物別れに終わった。
 これについての一つの捉え方として、国策ともされるリニアの工事に対して、静岡県が駄々をこねているという見方がある。
 しかしこれは、これまでのJR東海の事業の進め方や静岡県の立場を理解しない偏見だと言わざるを得ない。
 そもそもこの問題の最大の原因は、JR東海が行った環境アセスメント(環境影響評価)の杜撰(ずさん)さにある
 286キロもの長区間のアセスを、南アルプスのトンネル掘削という難題を抱えながら、わずか3年で片づけてしまったのである。
 南アルプスの垂直ボーリングを1本しかやらず、古い手法で算出した毎秒最大2トンの湧き水の減少を公表しながら、おざなりな対応ですませてきたJR東海の責任は重い。
 それがいざ着工段階に至って、その責任を放置したまま静岡県に準備工事の開始を許可してほしい、そうでないと2027年の開業に間に合わないと迫ったのである。
 静岡県は1980年代、中部電力の大井川取水が原因で流域住民の激しい「水返せ運動」があった。地元ではその時の厳しい体験がまだ生きていて、「水返せ」は二度とゴメンという思いが強い。
 川勝知事の背後にはその歴史の体験に基づく住民の義慣の声が渦巻いているのであろう。
 ましてや静岡県はリニアの駅が一つできるわけではなく、ただただ水を取られるだけなのである。
 大井川の水が減れば、お茶をはじめとする農業、医療や製造など生活に直結した諸産業、そして流域住民の約60万人の生活用水への大打撃は目に見えている。
 2027年の開業を振りかざして駄々をこねているのは、JR東海の方である
 ところで私たちのような運動体にとっても、この会談の意義は大きかった。
 というのもこれまで私たちが口を酸っぱくして訴え続けてきた、リニアの負の側面が一挙に白目のもとに曝され、全国民の共通認識に近づいたからである。
 おまけに川勝知事が、リニアの工事の遅れを、長野県の残土問題、愛知県の名城非常ロ工事の異常出水問題、岐阜県のトンネル崩落事故などを引き合いに出しながら、静岡県だけが原因ではないと強調したことにも、深い共感を覚える。
 これらはすべて杜撰なアセスで引き起こされたものばかりなのだ。そうしたいわば杜撰さの積み重ねが、最大の被害を蒙る大井川流域住民の固い意志によって一気に表面化しただけのことである。そしてコロナ禍がこれに追い打ちをかける。
 ◆ コロナで変化の兆し

 コロナの感染拡大の様相を受けて、新聞のリニア是非の論調も変化の兆しを見せ始めた。
 中日新聞は「感染拡大の一因に」(6月13日付、河田恵昭・関西大)、「経済成長見込めず不要、『より早く』は時代遅れ」(6月23日付、水野和夫・法政大)、静岡新聞は「時代錯誤のリニア再考を」(7月2日付、石橋克彦神戸大名誉教授)などの記事を掲載し、リニアへの批判的な議論を展開し始めた。
 私たちが東京地裁に提訴している「ストップ・リニア!訴訟」は、いま原告適格で中間判決が下りるのを待っているという思わしくない状況にあるが、静岡問題を機にリニアの負の部分が広く知られ、世論に変化が起これば、良い方向に転じる可能性も出てくるであろう。
 2027年の開業が絶望的になったいまでは、リニアは岐路に立ち、混迷の度を深めている。
『週刊新社会』(2020年8月11日)

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