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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

リニア新幹線、始まっていたのは建設工事ではなく復旧工事だった

2020年08月15日 | 平和憲法
 ◆ 崩落だらけの大井川最上流のリニア工事現場。
   「建設工事」どころか「復旧工事」の有様
(ハーバー・ビジネス・オンライン)

西俣建設予定地に至る林道は、2か所で崩落

 ◆ 昨年の台風19号の豪雨が、建設現場を押し流した

 川勝平太・静岡県知事は6月11日、大井川源流域のリニア中央新幹線建設予定地を現地視察。リニアの建設を急ぐJR東海の金子慎社長は、掘削予定地周辺の整地・伐採など、「6月中に準備の了解が得られないと、2027年の開業は難しくなる」と述べ、現地で難色を示していた。
 その後も川勝知事は首を縦に振らず、金子社長は記者会見で2027年開業が困難であることを表明している。
 知事訪問時の6月11日は大雨で、川勝知事は静岡県側に3か所ある工事予定地の中では、いちばん手前にあたる「椹島(さわらじま)」を視察。残土置き場予定地の「燕沢(つばくろさわ)」で引き返した。
 しかし実は、その先にもリニア工事の建設予定地があるのだ。筆者はそれに先立つ2週間前の5月末、山越をえして最上流の西俣工事予定地を見てきた。
 1年前にも筆者は同じ場所を訪問していたが、前にはあった入口ゲートは消えていた。そこから先の地面がごっそりとなくなっている。
 昨年10月に上陸した台風19号の豪雨が押し流したのだ。資材置き場だった個所のすぐ下まで河原になり、岩の上に鉄板が不安定に取り残されていた。

※(上)1年前の西俣非常口建設予定地。整地は終了していた
※(下)同じく西俣非常口建設予定地の1年後(今年5月末)の姿。ごっそりと地面が流出している

 リニア工事のために建てた電柱に1年前は電線が渡してあったはずが、今回は見当たらない。「おかしいな」と思ってゲート(があった場所)付近から河原を見下ろすと、電柱が横倒しになっていた。
 ここには最上流の登山基地の「二軒小屋」から徒歩でちょうど1時間かかる。
 二軒小屋から予定地までの林道は2か所で大規模な崩落が見られ、それぞれ補修作業が行われていた。始まっていたのは建設工事ではなく復旧工事だった。
 ◆ リニアの工事現場は崩壊地だらけ


 6月11日に現地を訪問した川勝知事は「ここに救急車が入ってこられると思いますか」と作業員の安全性を強調した。
 二番目の土砂崩れ個所で道は埋められてショベルカーとダンプカーで除去作業をしていたので、実際にはそこから先は救急車どころかクルマは入れない
 道のあちこちに大きな石が落ちていて、晴れていてもいつ土砂崩れが起きるかとヒヤヒヤする。
 JR側もこの現場に至るまでの林道の危険性は認識していて、リニアの本線トンネルに至るトンネルのほかに、土砂運搬用のトンネルをここから掘る予定で、昨年はその個所に立て看板が立っていた。
 その看板の手前5m付近まで河原が広がっている。

 二軒小屋までは山梨県側の早川町新倉から、南アルプスの一画である白根南嶺の伝付峠を越えて、登山者の足では8時間かかった。
 この登山道は毎年崩壊していて、不安定な岩稜の上にロープが渡されている。通過時は「こんなところに道を作るのか」と足がすくんだ。
 南アルプストンネルは、山梨県側の糸魚川―静岡構造線と長野県側の中央構造線という、日本を代表する2つの大断層間の25kmを結んで山脈をくりぬく。
 プレートが削り取った、鉋屑の集合体のような地質となっている。
 静岡県知事の視察でも崩壊地を指摘していたように、地質は脆弱で一帯は崩壊地の展示場のようだ。西俣の工事現場予定地の上部にも崩壊地が望める。
 ◆ 昨年の復旧工事が、今年7月の豪雨で無駄になってしまった!?

 仮にリニアが開業されたなら、ここは南アルプストンネル内でトラブルが起きたときの避難場所となる。
 昨年の台風19号では二軒小屋から下流の林道も3か所で崩落している。
 標高差もあるので、トンネル出口まで1時間かかったとして、ここに出てきたとしても現場が現在のような状況では、1000人近くの乗客は途方に暮れるだろう
 この先にはダムがあり、かつては林道が伸びていた。今は、ガードレールがわずかに残るだけで跡形もない。
 豪雨災害による地形の改変は、この地域では日常のことなのだ。
 工事予定地の奥には、掘削を待つばかりだった重機がそのまま取り残され、キャタピラが赤さびていた。
 知事の訪問の2日後の13日、国土交通省の水嶋智鉄道局長も現地を視察。
 記者会見で「観念的、抽象的な言葉のやりとりに陥ることないように」と、両者が議論を進めるよう注文した。
 その後に起きたのが今年7月の豪雨災害だ。
 川勝知事は7月21日に再び現地に至る林道を視察。被災状況を確認し、中断している工事の再開について「机上の空論だ」と主張した。
 昨年の災害の復旧工事は、半年後の災害で無駄に終わってしまったのだ。

 川勝知事の一連の発言は、現地を見た人間の目から見て控えめだった。
 「2027年の開業は難しい」(JR東海)どころか、どれだけ期間が延びてどれだけ費用がかさむのかは測り知れない、難工事だらけのリニア中央新幹線
 作業員や工事の安全を考えるべきなのは、本来なら静岡県知事ではなく、工事を進める国やJR東海のほうだ。
<文・写真/宗像充>

『ハーバー・ビジネス・オンライン』(2020.08.02)
https://hbol.jp/225039?cx_clicks_kijishita=txt1#cxrecs_s
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