◆ コロナ感染下 アベ内閣の悪企み
マイナンバーの金融口座へのヒモ付け!そのネライは (週刊新社会)
安倍政権は、「アベノマスク」に次いで、一律10万円を給付する「特別定額給付金」でも、マイナンバーカードでのオンライン申請でも失態を演じた。
その反省もなく、マイナンバーと預貯金口座とのヒモ付けの義務化を目論んでいる。今回は、マイナンバー制度について考えることにする。
◆ 個人番号制度のしくみ
マイナンバーは通称名であり、法律上は「個人番号」である。
第2次安倍内閣は、13年に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」として成立させた。また、法人番号もあり、個人番号との比較は(表)の通りである。
法の目的としては、
「情報システムを運用して、効率的な情報の管理及び利用並びに他の行政事務を処理する者との間における迅速な情報の授受を行う」
「国民が手続の簡素化による負担の軽減及び本人確認の簡易な手段その他の利便性の向上が得られる」
ようにすると掲げている。
15年10月5日に、個人番号指定が始まり、市町村が通知力ード(次頁写真1)の送付を行った。
16年1月からは、マイナンバーカード(次頁写真2)の申請が始まった。カードには、写真を貼り付けるため運転免許証やパスポートを所持しない人には身分証明書として使える、また役所へ行かなくても全国のコンビニで住民票の写しや課税証明書などを取得できると宣伝したが、マイナンバーカードの取得は進まなかった。
◆ 住民票と異質なマイナンバー
安倍政権は、特別定額給付金の申請に当たり、給付が早いとしてマイナンバーシステムを利用したオンライン申請を推奨した。
自治体の窓口には、コロナ下にもかかわらず、申請のためやマイナンバーカードの新規取得のために多くの住民が押し掛け、「三密」状態も生じた。
しかし、オンライン申請は、申請者による入力項目を職員が住民基本台帳と突合わせするという作業を行わなければならず、郵送申請より職員の負担がはるかに大きなものとなった。
そのため、多くの自治体でオンライン申請を取り止め、給付を早く望む市民の要望に応えられなかった。
本来、マイナンバーシステムは個人情報を扱うシステムで、日本の行政施策は住民基本台帳を基に世帯主単位で行われる。
マイナンバーシステムと住民基本台帳は全く連携できていないシステムで、それが原因で今回のオンライン申請は失敗したのである。
◆ 給付を口実に口座の把握目論む
特別定額給付金のオンライン申請に失敗した中で、自民・公明・維新はマイナンバーと預金口座をヒモ付けする法案を、議員立法として6月8日に提出した(国会閉会のため継続審議に)。
これは、「任意で個人が1口座を国に登録する」というものである。
ところが高市早苗総務相は、6月9日「個人が1口座を国に登録するのを義務化する」という方針を出し、来年の通常国会に法案を提出する考えを表明した。
理由として、「マイナンバーと口座がヒモ付いていれば、給付金の振込先として管理し、『スピード』支給につながる」、また「困窮者だけに絞った『線引き』支給ができるようになる」を挙げている。
しかし、その理由は今回のオンライン申請の失敗を逆手に取って、国民の資産状況を把握するためにマイナンバーシステムの機能拡張を図ろうとするものだ。
政府は、マイナンバーと□座がヒモ付いていれば、もっと「スピード感」を持って給付ができたと、国民に思わせようとしている。
しかし、たとえマイナンバーと口座がヒモ付いたとしても、結婚、就職、進学、死亡等あらゆる状況で世帯主は変化するので、現在のような世帯主単位の行政施策に対応するのには、世帯主の口座番号を付番し直す手続が常に必要になる。
一方、行政施策を個人を対象にしたとしても、全員給付のような場合、乳幼児を含む子どもにも口座番号をつくって付番し、子ども自身が申請しなければならない。
つまり、マイナンバーと口座番号をヒモ付けても、市民や自治体職員にとって負担が増えるだけでメリットは見込めない。
マイナンバーシステムは大変複雑なシステムで、マイナンバーと口座をヒモ付けするシステムを構築するには、多大な開発費が必要であり、時間もかかる。
新型コロナウイルス対策の充実を図らなければならない今、マイナンバーに各種預金口座をヒモ付ける検討は止めるべきである。
給付事務は自治体にまかせるのが迅速で効率的だ。
『週刊新社会』(2020年8月25日)
マイナンバーの金融口座へのヒモ付け!そのネライは (週刊新社会)
安倍政権は、「アベノマスク」に次いで、一律10万円を給付する「特別定額給付金」でも、マイナンバーカードでのオンライン申請でも失態を演じた。
その反省もなく、マイナンバーと預貯金口座とのヒモ付けの義務化を目論んでいる。今回は、マイナンバー制度について考えることにする。
◆ 個人番号制度のしくみ
マイナンバーは通称名であり、法律上は「個人番号」である。
第2次安倍内閣は、13年に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」として成立させた。また、法人番号もあり、個人番号との比較は(表)の通りである。
法の目的としては、
「情報システムを運用して、効率的な情報の管理及び利用並びに他の行政事務を処理する者との間における迅速な情報の授受を行う」
「国民が手続の簡素化による負担の軽減及び本人確認の簡易な手段その他の利便性の向上が得られる」
ようにすると掲げている。
15年10月5日に、個人番号指定が始まり、市町村が通知力ード(次頁写真1)の送付を行った。
16年1月からは、マイナンバーカード(次頁写真2)の申請が始まった。カードには、写真を貼り付けるため運転免許証やパスポートを所持しない人には身分証明書として使える、また役所へ行かなくても全国のコンビニで住民票の写しや課税証明書などを取得できると宣伝したが、マイナンバーカードの取得は進まなかった。
◆ 住民票と異質なマイナンバー
安倍政権は、特別定額給付金の申請に当たり、給付が早いとしてマイナンバーシステムを利用したオンライン申請を推奨した。
自治体の窓口には、コロナ下にもかかわらず、申請のためやマイナンバーカードの新規取得のために多くの住民が押し掛け、「三密」状態も生じた。
しかし、オンライン申請は、申請者による入力項目を職員が住民基本台帳と突合わせするという作業を行わなければならず、郵送申請より職員の負担がはるかに大きなものとなった。
そのため、多くの自治体でオンライン申請を取り止め、給付を早く望む市民の要望に応えられなかった。
本来、マイナンバーシステムは個人情報を扱うシステムで、日本の行政施策は住民基本台帳を基に世帯主単位で行われる。
マイナンバーシステムと住民基本台帳は全く連携できていないシステムで、それが原因で今回のオンライン申請は失敗したのである。
◆ 給付を口実に口座の把握目論む
特別定額給付金のオンライン申請に失敗した中で、自民・公明・維新はマイナンバーと預金口座をヒモ付けする法案を、議員立法として6月8日に提出した(国会閉会のため継続審議に)。
これは、「任意で個人が1口座を国に登録する」というものである。
ところが高市早苗総務相は、6月9日「個人が1口座を国に登録するのを義務化する」という方針を出し、来年の通常国会に法案を提出する考えを表明した。
理由として、「マイナンバーと口座がヒモ付いていれば、給付金の振込先として管理し、『スピード』支給につながる」、また「困窮者だけに絞った『線引き』支給ができるようになる」を挙げている。
しかし、その理由は今回のオンライン申請の失敗を逆手に取って、国民の資産状況を把握するためにマイナンバーシステムの機能拡張を図ろうとするものだ。
政府は、マイナンバーと□座がヒモ付いていれば、もっと「スピード感」を持って給付ができたと、国民に思わせようとしている。
しかし、たとえマイナンバーと口座がヒモ付いたとしても、結婚、就職、進学、死亡等あらゆる状況で世帯主は変化するので、現在のような世帯主単位の行政施策に対応するのには、世帯主の口座番号を付番し直す手続が常に必要になる。
一方、行政施策を個人を対象にしたとしても、全員給付のような場合、乳幼児を含む子どもにも口座番号をつくって付番し、子ども自身が申請しなければならない。
つまり、マイナンバーと口座番号をヒモ付けても、市民や自治体職員にとって負担が増えるだけでメリットは見込めない。
マイナンバーシステムは大変複雑なシステムで、マイナンバーと口座をヒモ付けするシステムを構築するには、多大な開発費が必要であり、時間もかかる。
新型コロナウイルス対策の充実を図らなければならない今、マイナンバーに各種預金口座をヒモ付ける検討は止めるべきである。
給付事務は自治体にまかせるのが迅速で効率的だ。
『週刊新社会』(2020年8月25日)
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