▼ 福島の全原発廃炉請願
県議会採択も国会冷淡
福島県議会が県内の原発十基すべての廃炉を求める請願を採択した。共産党系の団体が提出したものだけに、いったんは棚上げされたが、県議選が一カ月後に迫る中、脱原発を切望する県民世論を無視できなくなった。だが、全国各地で再稼働をもくろむ政府・民主党、原発を推進してきた自民党国会議員の反応は鈍い。(佐藤圭)
▼ 政府や与野党 言及場面なし
請願の紹介議員となった共産党の宮川えみ子県議は「これまでは少数会派がどんなに良い提案をしても否決された。今回は県民の声が後押ししてくれた」と喜ぶ。
東京電力は福島第一原発事故後、同1~4号機(大熊町)の廃炉は明言したものの、停止中の第一の5、6号機(双葉町)、第二の1~4号機(楢葉、富岡町)については方針を示していない。
県議会第一会派の自民党は「第二は地域振興のために再稼働の余地を残す」という立場だった。請願は六月に提出されたものの、六月定例会では自民党と、民主党などでつくる第二会派の県民連合との協議の結果、継続審査となった。
九月定例会では、今月十九日の企画環境委員会の採決で、自民、公明両党の反対四、県民連合などの賛成四と同数だったが、自民党の委員長が不採択を決めた。
しかし、十一月十日告示、同二十日投開票の県議選を前に、自民党内で「選挙を戦えるのか」と異論が噴出。
今月二十日の本会議採決では、自民、民主両党など計五人が退席したものの、自民、公明両党、県民連合などの賛成多数で採択された。
自民党の佐藤憲保議長は「原発で働いてきた人の雇用をどうするかなど乗り越えるべき課題はあるが、最終的には、原発はいらないという県民の声を形にした」と強調する。県議選が影響したかについては「大きな背景にある」と明かした。
“選挙目当て”の側面があるとはいえ、地元県議会が「脱原発」を鮮明にしたことは間違いない。当然、国政にも影響があってしかるべきだ。
佐藤氏は「首都圏への電力供給に協力してきたが、これからはエリアごとにエネルギー政策を考えるべきではないか」と原子力政策の再考を促す。
▼ 「国民の気持ち分かってない」
ところが、採択から一夜明けた二十一日、政府や与野党の幹部が記者会見などで、今回の請願採択に言及する場面はほとんどなかった。国会、それを取り巻く政治部記者たちの“福島軽視”を露呈した格好だ。
ある自民党議員は「(請願は)日本の原発すべてを止めうというメッセージではない。福島のようにならないために、安全な原発をつくってほしいということだ」と言い切った。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「国会議員は、放射能汚染におびえる国民の気持ちが分かっていない。今の政治は鈍感すぎる」と断じた上で、こう警告する。
「野田佳彦首相は脱原発どころか、維持、推進に近い発言をしている。自民党も相変わらずだ。国政選拳前に慌てて脱原発を言い出すのはみっともない。現在の主張が選挙戦でも通用するのかを考え直すべきだ」
『東京新聞』(2011/10/22【ニュースの追跡】)
県議会採択も国会冷淡
福島県議会が県内の原発十基すべての廃炉を求める請願を採択した。共産党系の団体が提出したものだけに、いったんは棚上げされたが、県議選が一カ月後に迫る中、脱原発を切望する県民世論を無視できなくなった。だが、全国各地で再稼働をもくろむ政府・民主党、原発を推進してきた自民党国会議員の反応は鈍い。(佐藤圭)
▼ 政府や与野党 言及場面なし
請願の紹介議員となった共産党の宮川えみ子県議は「これまでは少数会派がどんなに良い提案をしても否決された。今回は県民の声が後押ししてくれた」と喜ぶ。
東京電力は福島第一原発事故後、同1~4号機(大熊町)の廃炉は明言したものの、停止中の第一の5、6号機(双葉町)、第二の1~4号機(楢葉、富岡町)については方針を示していない。
県議会第一会派の自民党は「第二は地域振興のために再稼働の余地を残す」という立場だった。請願は六月に提出されたものの、六月定例会では自民党と、民主党などでつくる第二会派の県民連合との協議の結果、継続審査となった。
九月定例会では、今月十九日の企画環境委員会の採決で、自民、公明両党の反対四、県民連合などの賛成四と同数だったが、自民党の委員長が不採択を決めた。
しかし、十一月十日告示、同二十日投開票の県議選を前に、自民党内で「選挙を戦えるのか」と異論が噴出。
今月二十日の本会議採決では、自民、民主両党など計五人が退席したものの、自民、公明両党、県民連合などの賛成多数で採択された。
自民党の佐藤憲保議長は「原発で働いてきた人の雇用をどうするかなど乗り越えるべき課題はあるが、最終的には、原発はいらないという県民の声を形にした」と強調する。県議選が影響したかについては「大きな背景にある」と明かした。
“選挙目当て”の側面があるとはいえ、地元県議会が「脱原発」を鮮明にしたことは間違いない。当然、国政にも影響があってしかるべきだ。
佐藤氏は「首都圏への電力供給に協力してきたが、これからはエリアごとにエネルギー政策を考えるべきではないか」と原子力政策の再考を促す。
▼ 「国民の気持ち分かってない」
ところが、採択から一夜明けた二十一日、政府や与野党の幹部が記者会見などで、今回の請願採択に言及する場面はほとんどなかった。国会、それを取り巻く政治部記者たちの“福島軽視”を露呈した格好だ。
ある自民党議員は「(請願は)日本の原発すべてを止めうというメッセージではない。福島のようにならないために、安全な原発をつくってほしいということだ」と言い切った。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「国会議員は、放射能汚染におびえる国民の気持ちが分かっていない。今の政治は鈍感すぎる」と断じた上で、こう警告する。
「野田佳彦首相は脱原発どころか、維持、推進に近い発言をしている。自民党も相変わらずだ。国政選拳前に慌てて脱原発を言い出すのはみっともない。現在の主張が選挙戦でも通用するのかを考え直すべきだ」
『東京新聞』(2011/10/22【ニュースの追跡】)
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