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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

PISA2006から見えるもの(1)

2008年02月20日 | 人権
 ◎ 1,PISA2006 国際評価 日本は低下
   学力と教育環境


 経済協力開発機構(OECD)の2006年国際学習到達度調査(PISA)の結果が07年12月に発表され、日本の平均得点の低下などが話題になりました。日本やほかの参加国の教育環境はどうなっているのでしょうか。

 ■ 適切な支援で全体の底上げを
渡邊あや
 PISA調査は、経済協力開発機構(OECD)が三年に一度実施してしる生徒の学習到達度調査であり、「義務教育修了段階の十五歳児が持っている知識や技能を、実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度活用できるかどうか」を評価することを試みたものです。
 今回の調査結果について、日本では、学力低下が話題を呼んでいます。しかし、国際比較の観点からみると、学力低下よりも、むしろOECD平均を大きく下回った意欲や関心の低さ、自己効力感の低さ、さらに、特に自由記述問題において顕著であった無答率の高さなどの問題がより深刻です
 この調査において好成績を収めている代表約な国として、フィンランドがあります。「学力世界一」とも称されるフィンランドは、習熟度レベルが低いとされる層の割合が極端に低いことを特徴としています。つまり、下位層の子どもたちの成績が相対的に高いことが全体の水準を押し上げているのです。




 日本も、フィンランドと同様の特徴を持つ国といわれてきました。しかし、前回の調査において、下位層の成績低下により、子ども間の格差が広つつあることが明らかになりました。今回の調査では、若干の改善が確認されましたが、傾向を転換させるような変化は残念ながら見られませんでした。
 フィンランドが、全体的な底上げを図ることに成功している理由として、しばしば指摘されるのが、きめ細やかな学習支援です。子どもひとりひとりに「目が届く」環境のもと展開されているこのような支援は、補習や個別括導などの形で制度化され、日常的に行われています。
 日本において、学力をめぐる近年の議論は、子どもや現場の負担を増やすことに偏りがちです。しかし、フィンランドの実践を見ていると、量を増やすことよりも、適切な時に適切な支援を施すという一見単純に見えることを徹底すること、そして、それを可能にする環境づくりをすることが重要であるように思われます。

『東京新聞サンデー版』(2008年1月20日)【大図解】学力と教育環境(No.820)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/daizukai/2008/CK2008011602179995.html

 ◎ 2,PISA2006を通して見えてきたものとは(1)
 ~PISAと日本の全国学力テストとの違い


 昨年、43年ぶりに全国学力・学習状況調査(以下、全国学カテスト)が実施され、その結果が10月24日に公表された。
 さらに2006年に実施された国際学習到達度調査(PISA2006)の結果が12月4日に公表された。マスコミ各社が点数や順位などを大きく取り上げ、「学力」に関し物議を醸したことは記憶に新しい。
 学力に関する調査結果から何が明らかとなったと分析できるのだろうか。とりわけ、国際比較の中で、PISA調査の結果からは何が見えてきたのだろうか。福田誠治さん(都留文科大学教授)に語っていただいた(聞き手:岡島真砂樹・日教組教文局長)。

 ■ 欠ける探求的・実践的な力
  考えさせない教育、脱却を


岡島 PISA調査といえば、これまで二〇〇〇年と〇三年に調査結果が公表され、国際比較の中で日本の順位が下がったことで、「学力大幅低下」「学力トップ陥落」と報道され、「ゆとり教育批判」「学力低下論」に拍車がかかった。それが、今日の「全国学テ」実施や主要教科の時間数を増やす「学習指導要領の改訂」にもつながるが、この調査はどんな「学力」を測ろうとしているのか。

福田 PISA調査は、十五歳児(高校一年生)を対象に経済協力開発機構(OECD)が開発、実施している Programme for International Student Assissment で、直訳すれば「国際生徒調査計画」だ。質問紙で生徒の学習条件や学習態度、家庭学校の様子も調べ、それらのデータをクロスさせて学力の背景を探ることができるものだ。
 学力も、教科の授業で習得した知識や技能を測定するのではなく、教科横断的に形成される幅広い実践的な能力(コンピテンシー)を測ろうとする。PISAは、そのうち、言語・情報、数学、科学の三つを道具として使用する運用力(リテラシー)を測定している。設問は、具体的な生活を問題状況として、思考のプロセスが調べられるよう工夫されている。
 OECDは、各国政府が教育政策を改善できるようPISAの結果を国際比較し、問題点が分かるよう提示しているが、報道は順位に焦点を当て、政府も調査分析から学ぼうとしていない点は問題だ。


岡島 今年度実施された「全国学テ」が測ろうとしているものとこの調査は「学力」のとらえ方が違うように感じるが、調査方法も含め、日本で昨年行なわれた学力調査とのちがいは。

福田 「全国学テ」は、全員同じ「問題」を解くため、時間に制限され設問形態がきわめて限定されてしまった。きめ細かな指導の資料になりにくい大雑把なテストだ。「全国学テ」をすれば順位と点数だけに目が向いてしまう。テストに測られていないもっと重要な学力が見えにくくなってしまう。
 PISA調査は、抽出方式だから、一領域に百問を用意し、設問の組合わせを変え、さまざまな側面から調べている。調査を受けた子どもや学校の点数、順位は出ないが、その国の状況や特徴、つまり学び方の質を調べられる

 (続)


『月刊JTU』FEB/2008(Special Edition)

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