【弁護団声明】
★ 土肥信雄氏の東京都に対する国家賠償請求訴訟の判決について
1 土肥氏が訴訟の提起に至った経緯(本件訴訟の全体像)について
原告の土肥氏は,東京都の都立学校教員として長年熟山こ勤務して,2005年(平成17年)4月からは都立三鷹高校の校長に着任しました。土肥氏は,東京都内に二百数十校ある都立高校の校長の中でも間違いなくトップクラスにランクされるべき素晴らしい校長でありました。このことは,この裁判において証拠として提出された,教員,生徒,保護者らの合計130通にも上る膨大な数の陳述書,あるいは,生徒や保護者から手渡された心のこもった色紙、さらには生徒達が土肥氏が退職するに当たって贈呈した表彰状などからも,何人も否定できない事実です。
しかしながら,土肥氏が2009年(平成21年)3月の定年退職後にも教員として活躍するために,非常勤教員の採用試験に申込みをしたところ,応募した校長のほとんどが合格となったにもかかわらず,土肥氏は東京都教育委員会(以下,「都教委」といいます。)により不合格とされました。
極めて優れた教育実績を残してきた土肥氏が不合格とされた理由は,都教委の都立高校の校長に対する不当な干渉に対し,土肥氏が校長としての職責を全うし毅然とした態度をもって,それが不当な干渉であると告発してきたことを,都教委が疎ましく思っていたからに他なりません。
都教委は,都立高校の校長に対して,職員会議における意向を聞くための挙手・採決を禁止して校長による職員会議の運営方法に不当な制約を加えたり,教職員の業績評価について校長が絶対評価を行うべきところを逆に一定の割合を示して相対評価を行うよう指導したり,式典における国歌斉唱実施のために校長が教職員に対して個別的職務命令書を発出することを強要したりするなど,教育現場への不当な干渉を続けてきました。
土肥氏は,東京大学卒業後に勤務した大手商社時代に談合に嫌気がさして職を辞したエピソードからも分かるように極めて正義感の強い人物です。土肥氏は,都教委による不当な干渉を黙って見過ごすことができませんでした。また,土肥氏は,都教委の不当な干渉により教育現場における教員の言論の自由が失われ,むしろ都教委の意図する教育現場の活性化とは真逆の教育現場に対する統制を強める結果となっており,将来的には生徒の言論の自由についても失われる恐れがあると強く危倶しました。
土肥氏は,三鷹高校校長在任中の2008年(平成20年)8月22日に記者会見を開くなどして,都教委による不当な干渉が行われている実態を明らかにしました。これにより東京都民ひいては日本国民は,日本の首都である東京都において,これに全く相応しくない教育行政が行われている実態を知るに至ったのです。
都教委は,このような土肥氏の勇気ある言動に対し,自らの教育行政の在り方について真筆な反省をするのではなく,逆に土肥氏のことを,非常勤教員採用試験の不合格という形で教育現場から抹殺しようとしたのです。
そこで,土肥氏は,都教委による教育現場への不当を干渉と,土肥氏に対する不合格処分とが,いずれも違法な行為(具体的な法律構成としては,不当な支配,業務妨害,校長の裁量権侵害,教育の自由の侵害,人格権侵害,都教委の裁量権の逸脱・濫用など)であるとして,2009(平成21)年6月4日に,東京地方裁判所に東京都を被告とする国家賠償請求訴訟を提起したのです。
2 本件訴訟の審理について
本件訴訟は東京地方裁判所の労働専門部である民事第19部に係属しました。本件訴訟の争点は,概ね次の8つでした。
① 生徒の表現行為に対する検閲の強要
② 職員会議において職員の意向を確認する挙手・採決を禁止する旨の通知
③ 原告の言論に対する弾圧①(都教委が2008(平成20)年10月に土肥氏に対して3回指導を行い「米長氏が三鷹高校に来る」と桐喝して言論弾圧を行った点等)
④ 校長による教職員の業績評価に対する違法・不当な干渉
⑤ 原告の言論に対する弾圧②(都教委が「C・D評価は20%以上出すように。」等と指導して相対評価を強要したことを公表した土肥氏の行為が守秘義務違反であるとして自粛を求め,服務事故報告書を作成した点等。)
⑥ 校長に対する職務命令の強要と名誉毀損
⑦ 都教委の悪意的,独善的,強権的な言動に関する事情
⑧ 非常勤教員採用試験において不合格としたことが裁量権の逸脱・濫用であること
本件訴訟の審理としては,原告被告双方から各争点に関する詳細な主張の応酬がなされ,これを踏まえた上で,都教委側の証人6名と土肥氏本人の尋問が行われ,昨年2011年(平成23年)8月25日に口頭弁論を終結して判決言渡期日が指定されました(なお,口頭弁論終結直前での裁判長の交代と判決言渡期日の変更がありました)。
証人尋問に関しては,教員,生徒,保護者等の証人候補者(以下,「証人候補者」といいます。)について,土肥氏が証人申請を行い,各証人候補者から陳述書を提出してもらいました。このとき,土肥氏が申請した証人候補者について都教委は反対尋問の必要がない(証人候補者が提出した陳述書の内容について争う機会を設けなくてもよい)と述べたことから,裁判所は,証人候補者を採用しませんでした。
しかしながら,各証人候補者からの陳述書には,各論点について土肥氏の主張を裏付ける記載があったので,これによって立証はできていたと思っています。
本件訴訟の審理の過程では,土肥氏は,生徒のみならず,教員や保護者との間でも他に例を見ないほどの高度な信頼関係を構築し,その信頼関係を土台として,三鷹高校校長在任期間中に,校内での盗難件数やいじめの大幅な減少など,校長として数多くの教育実績を残していたことなどが明らかになりました。
他方で,驚くべきことに,都教委が非常勤教員採用試験において土肥氏の三鷹高校校長としての教育実績については全く考慮に入れず,意図的に無視していた実態が浮き彫りになりました。
3 判決の結果について
東京地方裁判所民事第19部は,本日言い渡した判決において,土肥氏の請求を棄却しました。
上述した膨大な数の証拠や本件訴訟の審理の過程を全く踏まえていない、極めて不当な判決であるといわざるを得ません。
土肥氏は、控訴を決意しており、一審判決は必ずや控訴審において覆されることになるものと確信しています。
★ 土肥信雄氏の東京都に対する国家賠償請求訴訟の判決について
2012年(平成24年)1月30日
原告 土肥信雄 訴訟代理人
弁護士 吉 峯 啓 晴
原告 土肥信雄 訴訟代理人
弁護士 吉 峯 啓 晴
1 土肥氏が訴訟の提起に至った経緯(本件訴訟の全体像)について
原告の土肥氏は,東京都の都立学校教員として長年熟山こ勤務して,2005年(平成17年)4月からは都立三鷹高校の校長に着任しました。土肥氏は,東京都内に二百数十校ある都立高校の校長の中でも間違いなくトップクラスにランクされるべき素晴らしい校長でありました。このことは,この裁判において証拠として提出された,教員,生徒,保護者らの合計130通にも上る膨大な数の陳述書,あるいは,生徒や保護者から手渡された心のこもった色紙、さらには生徒達が土肥氏が退職するに当たって贈呈した表彰状などからも,何人も否定できない事実です。
しかしながら,土肥氏が2009年(平成21年)3月の定年退職後にも教員として活躍するために,非常勤教員の採用試験に申込みをしたところ,応募した校長のほとんどが合格となったにもかかわらず,土肥氏は東京都教育委員会(以下,「都教委」といいます。)により不合格とされました。
極めて優れた教育実績を残してきた土肥氏が不合格とされた理由は,都教委の都立高校の校長に対する不当な干渉に対し,土肥氏が校長としての職責を全うし毅然とした態度をもって,それが不当な干渉であると告発してきたことを,都教委が疎ましく思っていたからに他なりません。
都教委は,都立高校の校長に対して,職員会議における意向を聞くための挙手・採決を禁止して校長による職員会議の運営方法に不当な制約を加えたり,教職員の業績評価について校長が絶対評価を行うべきところを逆に一定の割合を示して相対評価を行うよう指導したり,式典における国歌斉唱実施のために校長が教職員に対して個別的職務命令書を発出することを強要したりするなど,教育現場への不当な干渉を続けてきました。
土肥氏は,東京大学卒業後に勤務した大手商社時代に談合に嫌気がさして職を辞したエピソードからも分かるように極めて正義感の強い人物です。土肥氏は,都教委による不当な干渉を黙って見過ごすことができませんでした。また,土肥氏は,都教委の不当な干渉により教育現場における教員の言論の自由が失われ,むしろ都教委の意図する教育現場の活性化とは真逆の教育現場に対する統制を強める結果となっており,将来的には生徒の言論の自由についても失われる恐れがあると強く危倶しました。
土肥氏は,三鷹高校校長在任中の2008年(平成20年)8月22日に記者会見を開くなどして,都教委による不当な干渉が行われている実態を明らかにしました。これにより東京都民ひいては日本国民は,日本の首都である東京都において,これに全く相応しくない教育行政が行われている実態を知るに至ったのです。
都教委は,このような土肥氏の勇気ある言動に対し,自らの教育行政の在り方について真筆な反省をするのではなく,逆に土肥氏のことを,非常勤教員採用試験の不合格という形で教育現場から抹殺しようとしたのです。
そこで,土肥氏は,都教委による教育現場への不当を干渉と,土肥氏に対する不合格処分とが,いずれも違法な行為(具体的な法律構成としては,不当な支配,業務妨害,校長の裁量権侵害,教育の自由の侵害,人格権侵害,都教委の裁量権の逸脱・濫用など)であるとして,2009(平成21)年6月4日に,東京地方裁判所に東京都を被告とする国家賠償請求訴訟を提起したのです。
2 本件訴訟の審理について
本件訴訟は東京地方裁判所の労働専門部である民事第19部に係属しました。本件訴訟の争点は,概ね次の8つでした。
① 生徒の表現行為に対する検閲の強要
② 職員会議において職員の意向を確認する挙手・採決を禁止する旨の通知
③ 原告の言論に対する弾圧①(都教委が2008(平成20)年10月に土肥氏に対して3回指導を行い「米長氏が三鷹高校に来る」と桐喝して言論弾圧を行った点等)
④ 校長による教職員の業績評価に対する違法・不当な干渉
⑤ 原告の言論に対する弾圧②(都教委が「C・D評価は20%以上出すように。」等と指導して相対評価を強要したことを公表した土肥氏の行為が守秘義務違反であるとして自粛を求め,服務事故報告書を作成した点等。)
⑥ 校長に対する職務命令の強要と名誉毀損
⑦ 都教委の悪意的,独善的,強権的な言動に関する事情
⑧ 非常勤教員採用試験において不合格としたことが裁量権の逸脱・濫用であること
本件訴訟の審理としては,原告被告双方から各争点に関する詳細な主張の応酬がなされ,これを踏まえた上で,都教委側の証人6名と土肥氏本人の尋問が行われ,昨年2011年(平成23年)8月25日に口頭弁論を終結して判決言渡期日が指定されました(なお,口頭弁論終結直前での裁判長の交代と判決言渡期日の変更がありました)。
証人尋問に関しては,教員,生徒,保護者等の証人候補者(以下,「証人候補者」といいます。)について,土肥氏が証人申請を行い,各証人候補者から陳述書を提出してもらいました。このとき,土肥氏が申請した証人候補者について都教委は反対尋問の必要がない(証人候補者が提出した陳述書の内容について争う機会を設けなくてもよい)と述べたことから,裁判所は,証人候補者を採用しませんでした。
しかしながら,各証人候補者からの陳述書には,各論点について土肥氏の主張を裏付ける記載があったので,これによって立証はできていたと思っています。
本件訴訟の審理の過程では,土肥氏は,生徒のみならず,教員や保護者との間でも他に例を見ないほどの高度な信頼関係を構築し,その信頼関係を土台として,三鷹高校校長在任期間中に,校内での盗難件数やいじめの大幅な減少など,校長として数多くの教育実績を残していたことなどが明らかになりました。
他方で,驚くべきことに,都教委が非常勤教員採用試験において土肥氏の三鷹高校校長としての教育実績については全く考慮に入れず,意図的に無視していた実態が浮き彫りになりました。
3 判決の結果について
東京地方裁判所民事第19部は,本日言い渡した判決において,土肥氏の請求を棄却しました。
上述した膨大な数の証拠や本件訴訟の審理の過程を全く踏まえていない、極めて不当な判決であるといわざるを得ません。
土肥氏は、控訴を決意しており、一審判決は必ずや控訴審において覆されることになるものと確信しています。
以上
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