《尾形修一の紫陽花(あじさい)通信から》
◆「行革」すべきは「審議会」だ!―学術会議問題⑤

(審議会委員の兼職状況)
政治・社会の問題で考えたいことが多い。新型コロナウイルス問題も日々情報が更新されるので、なかなかまとめて書く機会が取れない。最高裁で非正規労働者の待遇をめぐる訴訟の判決が出たが、問題の枠組に詳しくないので簡単には書けない感じだ。そんな中で「学術会議問題」のスピンオフとして、気になっている問題を書いておきたい。
どうも菅義偉首相は学術会議を敵視しているようだが、それに合わせて「反学術会議キャンペーン」のフェイクニュースが飛び交っている。
その中で国費を10億円使っているという話がよく使われている。しかし、職員50人の人件費、事務費で約5億5千万円、国際的な学術会議の分担金が1億円なんだそうだ。
職員は独自採用ではなく、各省庁から派遣される国家公務員だそうで、数年ごとに異動するという。これはどうしようもない固定費ばかりだ。
学術会議会員は「特別公務員」だと首相は強調しているが、給与は出ない。
総会や分科会に出席すれば手当が支給されるが、それは会長は日額2万8800円、会員は1万9600円だそうだ。
手当の総額は本年度予算では約7200万円、協力している「連携会員」(約2000人)分として1億300万円。交通費・宿泊費は別枠で実費精算されるが、年度末には予算が足りなくなって「受領辞退」の文書を書いて貰っているという。ネット会議を多用するけれど、そればかりでは無理なので自腹を切って出張している状態なんだという。(以上、東京新聞10月10日付)
つまり学術会議というのは、ほとんどボランティア精神というか、日本の学問に対する義務感でやっている組織なのである。
まあ東京在住なら足は出ないかもしれないが、時間を取られることを考えれば得にはならない。
自民党政府は学術会議会員を「除外」するのではなく、どうして長い時間を掛けて「政府寄りの学者」を送り込んで内部から変えようとしないのか。僕はそんな疑問もあるのだが、これでは保守系学者は学術会議会員を望まないだろう。
マスコミでは知られていても業績が十分ではない学者もいる。だから推薦されないのかもしれないが、それ以上に重要な問題は政府寄りの学者は、学術会議よりも政府の各種審議会を優先するということではないか。
その方が直接「国策」に関与できることになるし、政府から求められる度合いも大きい。
政府にいくつ「○○審議会」があるのだろうか。2年前の資料だが、各省庁に計129もあると出ている。内閣府だけで21個もある。そして最近は「私的諮問機関」というのもたくさん作られる。
それではそれらの審議会の委員になると、報酬はあるのだろうか。それはいくらぐらいだろうか。この情報公開の時代に、この情報が判らない。地方の情報はあるけれど、中央省庁の審議会は判らない。
どこかに出ていれば教えて欲しいと思う。僕が調べられた範囲では、ずいぶん古いけれど、2004年段階で共産党が追及した時の資料がある。まずは同じ人が各審議会委員を兼ねているという問題。2つ以上兼務している人が1760人中466人もいるという。
故・日隅一雄氏のブログによると、審議会員の報酬も高額である。全省庁の審議会予算の委員報酬額の合計は、11億6400万円を超えるという。(2004年段階)
委員の最高報酬額は、宇宙開発委員会(文科省所管)会長の月額131万7000円だという。定員総数約1760人なので、単純に割れば、平均報酬は年額66万円。しかし、特定の審議会会長はなぜ、特定の審議会の委員が、年間1000万円を超えるような報酬を得ているのか?と日隅氏は書いている。
学術会議が事務職員の給与を含めて総額10億円だというのに、10数年前に審議会委員の報酬だけで11億円を超えていたのだ。今はもっと増えているに違いない。
こんなに審議会がいるのか。いるとしてこれほど高額な報酬が必要か。
「行政改革」の対象にすべきは、審議会のあり方の方だろう。
こういう「オイシイ仕事」は反政府の声を挙げた学者には回ってこない。「有識者」と言われて委員になるのは、決まって政府寄りの学者ばかりである。そういう仕事で忙しければ、学術会議なんか関わる気にならないだろう。
特に右派系ではないが、政府に重用された有名な学者に山内昌之氏(東大名誉教授)がいる。国際関係論、イスラム史の大家で、僕もかなり読んできた。
いつの間にか政府の審議会などに起用されるようになったが、そのいきさつなどは知らない。ただ例示としてウィキペディアを見てみると、以下のように記載されている。
内閣官房では、
・安心社会実現会議委員、
・アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会委員。
文部科学省では
・文化審議会委員、
・中央教育審議会社会科専門部会委員、
・文化庁「文化発信戦略に関する懇談会」座長、
・「教育再生実行会議」委員(2013年1月~)。
外務省では
・外務人事審議会委員、
・「日本アラブ対話フォーラム」委員。
経済産業省では
・総合資源エネルギー調査会委員を務める。
これは数年前の記述で、今はもう終わっている仕事が多いと思うけれど、一人でこれほどを兼ねているのかと思う。どんな有能な学者であっても、多すぎるのではないだろうか。
報酬をさておいても、これじゃ政府のあり方としておかしくないだろうか。
『尾形修一の紫陽花(あじさい)通信』(2020年10月18日)
https://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/0602239f7ee12b0f39f948c02dda8cdd
◆「行革」すべきは「審議会」だ!―学術会議問題⑤

(審議会委員の兼職状況)
政治・社会の問題で考えたいことが多い。新型コロナウイルス問題も日々情報が更新されるので、なかなかまとめて書く機会が取れない。最高裁で非正規労働者の待遇をめぐる訴訟の判決が出たが、問題の枠組に詳しくないので簡単には書けない感じだ。そんな中で「学術会議問題」のスピンオフとして、気になっている問題を書いておきたい。
どうも菅義偉首相は学術会議を敵視しているようだが、それに合わせて「反学術会議キャンペーン」のフェイクニュースが飛び交っている。
その中で国費を10億円使っているという話がよく使われている。しかし、職員50人の人件費、事務費で約5億5千万円、国際的な学術会議の分担金が1億円なんだそうだ。
職員は独自採用ではなく、各省庁から派遣される国家公務員だそうで、数年ごとに異動するという。これはどうしようもない固定費ばかりだ。
学術会議会員は「特別公務員」だと首相は強調しているが、給与は出ない。
総会や分科会に出席すれば手当が支給されるが、それは会長は日額2万8800円、会員は1万9600円だそうだ。
手当の総額は本年度予算では約7200万円、協力している「連携会員」(約2000人)分として1億300万円。交通費・宿泊費は別枠で実費精算されるが、年度末には予算が足りなくなって「受領辞退」の文書を書いて貰っているという。ネット会議を多用するけれど、そればかりでは無理なので自腹を切って出張している状態なんだという。(以上、東京新聞10月10日付)
つまり学術会議というのは、ほとんどボランティア精神というか、日本の学問に対する義務感でやっている組織なのである。
まあ東京在住なら足は出ないかもしれないが、時間を取られることを考えれば得にはならない。
自民党政府は学術会議会員を「除外」するのではなく、どうして長い時間を掛けて「政府寄りの学者」を送り込んで内部から変えようとしないのか。僕はそんな疑問もあるのだが、これでは保守系学者は学術会議会員を望まないだろう。
マスコミでは知られていても業績が十分ではない学者もいる。だから推薦されないのかもしれないが、それ以上に重要な問題は政府寄りの学者は、学術会議よりも政府の各種審議会を優先するということではないか。
その方が直接「国策」に関与できることになるし、政府から求められる度合いも大きい。
政府にいくつ「○○審議会」があるのだろうか。2年前の資料だが、各省庁に計129もあると出ている。内閣府だけで21個もある。そして最近は「私的諮問機関」というのもたくさん作られる。
それではそれらの審議会の委員になると、報酬はあるのだろうか。それはいくらぐらいだろうか。この情報公開の時代に、この情報が判らない。地方の情報はあるけれど、中央省庁の審議会は判らない。
どこかに出ていれば教えて欲しいと思う。僕が調べられた範囲では、ずいぶん古いけれど、2004年段階で共産党が追及した時の資料がある。まずは同じ人が各審議会委員を兼ねているという問題。2つ以上兼務している人が1760人中466人もいるという。
故・日隅一雄氏のブログによると、審議会員の報酬も高額である。全省庁の審議会予算の委員報酬額の合計は、11億6400万円を超えるという。(2004年段階)
委員の最高報酬額は、宇宙開発委員会(文科省所管)会長の月額131万7000円だという。定員総数約1760人なので、単純に割れば、平均報酬は年額66万円。しかし、特定の審議会会長はなぜ、特定の審議会の委員が、年間1000万円を超えるような報酬を得ているのか?と日隅氏は書いている。
学術会議が事務職員の給与を含めて総額10億円だというのに、10数年前に審議会委員の報酬だけで11億円を超えていたのだ。今はもっと増えているに違いない。
こんなに審議会がいるのか。いるとしてこれほど高額な報酬が必要か。
「行政改革」の対象にすべきは、審議会のあり方の方だろう。
こういう「オイシイ仕事」は反政府の声を挙げた学者には回ってこない。「有識者」と言われて委員になるのは、決まって政府寄りの学者ばかりである。そういう仕事で忙しければ、学術会議なんか関わる気にならないだろう。
特に右派系ではないが、政府に重用された有名な学者に山内昌之氏(東大名誉教授)がいる。国際関係論、イスラム史の大家で、僕もかなり読んできた。
いつの間にか政府の審議会などに起用されるようになったが、そのいきさつなどは知らない。ただ例示としてウィキペディアを見てみると、以下のように記載されている。
内閣官房では、
・安心社会実現会議委員、
・アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会委員。
文部科学省では
・文化審議会委員、
・中央教育審議会社会科専門部会委員、
・文化庁「文化発信戦略に関する懇談会」座長、
・「教育再生実行会議」委員(2013年1月~)。
外務省では
・外務人事審議会委員、
・「日本アラブ対話フォーラム」委員。
経済産業省では
・総合資源エネルギー調査会委員を務める。
これは数年前の記述で、今はもう終わっている仕事が多いと思うけれど、一人でこれほどを兼ねているのかと思う。どんな有能な学者であっても、多すぎるのではないだろうか。
報酬をさておいても、これじゃ政府のあり方としておかしくないだろうか。
『尾形修一の紫陽花(あじさい)通信』(2020年10月18日)
https://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/0602239f7ee12b0f39f948c02dda8cdd
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます