パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

ナビ・ピレイさんNGOと3日間の対話(2)

2010年07月08日 | 人権
 =人権高等弁務官ナビ・ピレイさん来日=
 ◎ NGOと3日間の対話(2)

 ◎ 15日―リンさんとの会談

15日、救援会の事件関係者とミーティング。左端がリン・キムさん。

 国民救援会と日本委員会の共催で国連人権高等弁務官スタッフのリンキムさん(Ms. Jung-Rin KIM)を囲んで、15日(土)午後6時から約2時間、平和と労働センターの会議室でミーティングを行いました。この日、ピレイ人権高等弁務官は帰国しましたが、リンさんはさらに市民団体から情報を収集したいと滞在を延ばし、このミーティングが実現しました。
 坂屋光裕さん(国民救援会)の司会で、ビラ配布弾圧事件の宇治橋眞一さんと荒川庸生さん、痴漢冤罪国賠訴訟の沖田光男さん、東電OL事件支援者の客野美喜子さんと通訳をしてくれた熊野さん、日本委員会からは吉田好一、松田順一、上野節子が参加しました。
 最初に吉田さんから「日本委員会」の最近の活動を紹介。拷問禁止委員会やUPR(普遍的定期審査)、自由権規約委員会への参加傍聴や発言を行ってきたこと、現在、「個人通報制度」の批准を求める団体署名に取り組んでいることなどを報告しました。
 リンさんから「すでに多くの国が批准している。日本は先進国、反対する合理的な理由はないのではないか。市民社会では導入を望んでいることを強く感じた」と感想を述べ、「鳩山首相は、ピレイ人権高等弁務官と会談した際、導入を約束しているので安心しているが、早期実現のため今回の来日を運動を進める道具として政府にプレッシャーをかけてほしい」とも述べました。
 また、「人権問題に関して個人通報制度のほかに特別の手続きが取れるシステムがある。市民社会からの申し立てに基づき、特別報告者が中心となって政府に問題点を質問したり、人権理事会に報告することができる」と、システムの活用を併せて強調しました。
 続いて、控訴審でも有罪とされた宇治橋さんが、国家公務員法の規定は表現の自由に関する憲法や人権規約に違反することを訴え、判決が「欧米ではビラまきが自由でも各国の事情がある。党派的偏向の強い行動で公務員の中立性を損なう恐れが大きい」と述べていることを批判しました。最近、東京高裁は同じようなビラまき事件に対し無罪の判決を出していることにもふれました(堀越事件)。
 リンさんは宇治橋さんの説明を聞き、「人権は基本的には普遍的なもの。いかなる国の文化や状況にも関係なく尊重されるべきだ。日本がそのような言い訳をすることは考えられない。日本の司法の水準は国際水準に合致していない。人権について司法教育をすることが必要」と語りました。
 葛飾ビラ配布事件の荒川さんは、「最高裁は国際人権規約を無視している、なぜ、日本ではビラ配布に対する弾圧が多発するのか」について説明しました。警察、検察は権力構造であり間違いはあるだろう。しかし、問題は裁判所がそれを認めてしまうことであると述べました。逮捕や裁判所の対応をみると、ビラ弾圧は表現の自由に対する萎縮効果を生んでいると訴えました。
 東電OL事件で無期刑に服しているゴビンダさんの支援活動を行っている客野さんは、事件の概要と問題点の説明をした後、別件逮捕や無罪判決後の再拘留の違法性、証人を含む取調べの全面可視化の問題、状況証拠の全面開示の法制化などを訴えました。逮捕時に30歳であったゴビンダさんは現在43歳、無実が証明され一日も早く釈放されることを願いながら模範囚であることに励み、元気に服役していると報告しました。
 リンさんは「話を聞いて悲しくなった。話を聞くほど日本の司法制度の脆弱さを感じた。日本は経済的にも人権でも発展していると見られている。このことを日本政府に言うようピレイ高等弁務官に進言する。参考までにカンボジア問題の特別報告官はネパール人だ」と述べました。
 痴漢冤罪事件の沖田さんから、東京高裁の差戻し判決が(痴漢事件は不起訴であったにも関わらず)損害賠償請求を退けたため、再び最高裁に上告してたたかっていることを報告しました。
 最後に坂屋さんが「日本の状況はリンさんの出身国である韓国やヨーロッパと比較してどうか」と質問しました。
 リンさんからは次のような示唆に富んだ回答がありました。
 「国によって事情が違う。韓国では問題があると『声』を上げる。『声』を上げ続ければ一般の人が考える。この点で韓国の人権委員会は大きな役割を果たしており、人権委員会が個人に代わって公権力に抗議をしてくれている。日本においても早く同じような機関が創設されれば人々の認識を変えることができる。また、そうなれば国際的に日本は重要な役割を果たすことができる。現在、日本は国際的な役割と国内の役割に大きなギャップがある。今回日本の政府首脳と会った際も、国内の問題では盛り上がらなかった。日本のNGOは非難するだけではなく建設的なアプローチをするべきだ。現在政府が代わって有利な状況だ。今の勢いを続けてほしい。そうすれば展開があると思う。人権高等弁務官事務所(OHCHR)は皆さんを支援しているので、いつでも連絡してほしい。お手伝いできると思う。今日は時間を与えてくれ、情報を提供してくれたことに感謝する」と結んだ。
 (まとめ/松田順一)

 『国際人権活動ニュース』(2010年6月25日 第105号)
 国連経社理特別協議資格NGO 国際人権活動日本委員会
URL:http://jwchr.s59.xrea.com/

コメント    この記事についてブログを書く
« ナビ・ピレイさんNGOと3... | トップ | 消費増税 財界優遇の不公平 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

人権」カテゴリの最新記事