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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

ナビ・ピレイさんNGOと3日間の対話(1)

2010年07月07日 | 人権
 =人権高等弁務官ナビ・ピレイさん来日=
 ◎ NGOと3日間の対話(1)


 国連人権高等弁務官のナビ・ピレイさんが、日本の人権状況を視察のために5月12日~15日来日しました。
 NGOとのミーティングを希望しているとの意向をヒューマンライツ・ナウの伊藤和子事務局長から連絡を受け、急遽、ヒューマンライツ・ナウ、アムネスティインターナショナル日本、市民外交センター、監獄人権センター、反差別国際運動、日本委員会の6団体で実行委員会を結成しました。
 過密スケジュールのなかで、ミーティングの時間設定は二転三転し、5月13日(木)午後6時~8時、弁護士会館の17階会議室で「日本の人権課題について-NGOの報告と提言」、14日(金)午前10時30分~11時30分、東京ウィメンズプラザ会議室で「人権侵害・差別の被害者との面談」が開催されました。さらに15日には、来日スタッフのキムさんと国民救援会、日本委員会の共催で事件関係者とのミーティングが行われました。

ミーティング終了後記念撮影。前列左から2番目がピレイさん、その右がローリー氏

 ◎ 13日―NGOの報告と提言

 国会空転の影響で、高等弁務官と鳩山首相との会見が昼の予定から突如夜の7時に変更になったため、高等弁務官が中座することになり、宇都宮日弁連会長への表敬訪問もこの会場内で行なわれました。高等弁務官の不在中は、来日スタッフのアジア・太平洋地区責任者のロリー氏(Mr. Rory Mungoven)が代行して会議は続行されました。
 最初に伊藤和子弁護士が「日本の人権状況の概観」を説明し、その後、死刑・刑事司法、女性の権利、表現の自由、障害者の権利、国内人権機関・個人通報制度などのテーマで、韓国から来日した元「従軍慰安婦」の犠牲者、ビラ配布弾圧事件の荒川庸生さんなど被害当事者を中心に発言しました。荒川さんは、個人通報制度の批准を政府に強く要請してほしいと訴えました。
 ピレイ高等弁務官は熱心に発言を聞き、法務大臣との面会の際に、「慰安婦」問題の完全な解決、個人通報制度の批准、死刑執行のモラトリアムと制度の廃止に向け、国民を巻き込んだ運動を展開するよう要請したと述べました。
 ピレイさんの退席後、代用監獄の廃止、取調べの全面可視化、誤判原因究明の第三者機関の設立などを足利事件弁護団の泉澤章弁護士が訴えました。
 その後は通訳なしの英語による報告が続けられ、表現の自由を脅かすビラ配布に対する不当な判決やグリーンピース鯨肉事件の問題点などをアムネスティ日本の寺中誠さん死刑制度や刑務所内の待遇問題に関して田鎖麻衣子弁護士障害者の権利問題池原毅和弁護士女性に対する差別や暴力についてアジア女性資料センターの本山央子さん国内人権機関の設立に関して日弁連の竹村二三夫弁護士と人権市民会議の山崎公士教授が報告しました。
 鳩山首相との会見を終えたピレイさんが再び会場に現われ、国内人権機関の設置や個人通報制度の批准など人権問題の改革に日本政府が前向きの姿勢であることを確認したこと、国内や国際人権の分野で日本が大きな役割を果たすよう要請したとの報告がありました。日本委員会からは鈴木亜英、山口弘文、吉田好一、松田順一、上野節子の5名が参加しました。
 ◎ 14日―人権侵害・被害者とのミーティング
 1時間だけの短い会合で、主にマイノリティ被害者が発言しました。最初に、ピレイさんから差別問題に関してこの2年間で6つの課題を設け、カースト制度を含めて検討してきたこと、日本政府に対してはUPRからも勧告をしている国内人権機関の設立を強く要望したと述べました。
 続いて、移住労働者、特に中国人研修生問題について、不当な職務質問や奴隷的労働の実態を写真で示しながら訴えました。ピレイさんからは、この問題に関しては撤廃を要求し改善の進捗状況を政府に聞いているとの回答がありました。ロリーさんから、各在日大使館はこの問題に関心を持っているかとの質問があり、発言者からは「あまりないようだ」との答えがありました。
 部落問題では、江戸時代から続く差別の歴史とカースト制度との類似性を述べ、現在も就職や結婚などに大きな問題があることを訴えました。狭山事件の石川一雄さんは「32年間の拘禁生活の後、現在は仮釈放中。まもなく無実で解放されるだろう」と発言しました。ピレイさんは「必ず正義が訪れる」と石川さんを励まし、死刑執行に対するモラトリアムを政府に要求したことを述べ、弁護士としても真摯に取り組みたいと語りました。
 先住民族のアイヌは、言葉や文化を奪われ、就職や結婚に差別があり、日常的に警察や市民から不当な取り扱いを受けていると訴えました。
 沖縄からは米軍基地の75%が存在していることの不当性と沖縄に対する差別について、4月25日に行われた普天間基地撤廃を求める大集会の新聞記事を示しながら訴えました。ピレイさんは、始めて聞く話だが、差別プログラムの中で解決したい、問題を調査、検討する専門部があるとアドバイスしました。
 最後に在日朝鮮・韓国人の問題として、高齢者や障害者に対する国民年金の不適用問題が出されました。この問題は2008年に自由権規約委員会から懸念と勧告が出されているが、早期の是正を改めて訴えました。朝鮮学校に対する「高校無償化」からの排除について、朝鮮学校の先生と生徒が不当差別の撤廃を求め、怒りを込めて発言しました。ピレイさんは情報の提供を感謝し、この問題が未解決であることに深い憂慮を示しました。
 最後に、今後の2年間に、出された差別問題に優先権をつけて検討すると述べ、ともに差別の撤廃に向けて取り組んでいきたいと結びました。
 日本委員会からは松田順一が参加しました。

 (続)

 『国際人権活動ニュース』(2010年6月25日 第105号)
 国連経社理特別協議資格NGO 国際人権活動日本委員会
URL:http://jwchr.s59.xrea.com/

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