《『労働情報』時評自評》
◆ 改正派遣法の付帯決議や指針
~権利確立へ活かす取り組みを
安保法制と並ぶ対決法案=労働者派遣法見直し法案は、同一労働同一賃金を推進する法案とともに衆議院本会議で採決となった。
「正社員ゼロ法案」という労働界挙げた反対運動の頑張りが世論も突き動かして、国会では厳しい追及が行われた。
参議院で決議された39項目にわたる付帯決議は、法案の問題点がいかに多かったかを示しているが、そこで確認されたことは政省令・指針・業務取扱要領に反映されている。それらの内容を熟知し、労働者の雇用と権利を守る方針を確立し、取り組みを始めなければならない。
例えばこれまでの裁判例では、常用代替防止が法の基本趣旨であれば、自ずと派遣労働者の雇用継続への期待などは法的保護に値しないとされてきたが、今回の見直しは労働者派遣法がその両立を求める趣旨を徹底したという。
付帯決議では、その冒頭で常用代替防止について、現に派遣きれている労働者の代替に限らず、常用雇用労働者の雇用の機会が不当に狭められることを防止することを含むという突っ込んだ確認をしているが、これは与野党一致の行政府の解釈として、過半数組合等による意見聴取手続きにおいても貫かれなければならない原則となる。
また、付帯決議の第二項では、これまでにはなかった「直接雇用の原則」が確認されている。これは常用代替防止の原則とならび、派遣は働き方の一つの選択ではなく、正規雇用への移行が本来の姿であることを示したもので、国会答弁でも繰り返し確認されてきた。
派遣先労使には、この常用代替防止の意義を意見聴取手続きに反映させるとともに、直接雇用の原則にたって派遣労働者を雇い入れるなど雇用の安定化に向けた取り組みを進めることが求められる。
指針では、派遣先に過半数組合等から異議が出たときには、可能な限りこれを尊重するよう求めており、今回強化された説明及び資料提供義務の履行とともに、徹底を求める必要がある。
雇用安定化措置は、雇用継続が1年以上見込まれる労働者のみならず、省令で過去通算して1年にわたり同じ派遣元に雇用されて働いてきた労働者にも及ぶことになっている。
労働契約が解消されても登録状態が続く限り派遣元はこの義務から免れない。
そして、雇用継続の見込みが1年の場合には努力義務、3年の場合には措置義務となるが、努力義務であっても法律上の義務であり、①派遣先の直接雇用、②派遣元での期間の定めのない雇用、③他の派遣先での就労機会の確保、④その他の措置を、前記直接雇用の原則にしたがって完全に履行することが求められる。
以上は、ごく一部であるが、それがどれだけ労働者の権利を守れるものかは未知数だ。悪法は、いくら補ってもその性質は変わらないことも事実だろう。しかし、その下で派遣労働を生活の糧に生きる労働者がいることもまた事実である。
派遣先・派遣元が侵してはならない法原則や義務付けを労働者の権利実現に活かす取り組みに向けて決意を新たにさせられる。
『労働情報921号』(2015/10/15)
◆ 改正派遣法の付帯決議や指針
~権利確立へ活かす取り組みを
中野麻美(弁護士 NPO法人派遣労働ネットワーク)
安保法制と並ぶ対決法案=労働者派遣法見直し法案は、同一労働同一賃金を推進する法案とともに衆議院本会議で採決となった。
「正社員ゼロ法案」という労働界挙げた反対運動の頑張りが世論も突き動かして、国会では厳しい追及が行われた。
参議院で決議された39項目にわたる付帯決議は、法案の問題点がいかに多かったかを示しているが、そこで確認されたことは政省令・指針・業務取扱要領に反映されている。それらの内容を熟知し、労働者の雇用と権利を守る方針を確立し、取り組みを始めなければならない。
例えばこれまでの裁判例では、常用代替防止が法の基本趣旨であれば、自ずと派遣労働者の雇用継続への期待などは法的保護に値しないとされてきたが、今回の見直しは労働者派遣法がその両立を求める趣旨を徹底したという。
付帯決議では、その冒頭で常用代替防止について、現に派遣きれている労働者の代替に限らず、常用雇用労働者の雇用の機会が不当に狭められることを防止することを含むという突っ込んだ確認をしているが、これは与野党一致の行政府の解釈として、過半数組合等による意見聴取手続きにおいても貫かれなければならない原則となる。
また、付帯決議の第二項では、これまでにはなかった「直接雇用の原則」が確認されている。これは常用代替防止の原則とならび、派遣は働き方の一つの選択ではなく、正規雇用への移行が本来の姿であることを示したもので、国会答弁でも繰り返し確認されてきた。
派遣先労使には、この常用代替防止の意義を意見聴取手続きに反映させるとともに、直接雇用の原則にたって派遣労働者を雇い入れるなど雇用の安定化に向けた取り組みを進めることが求められる。
指針では、派遣先に過半数組合等から異議が出たときには、可能な限りこれを尊重するよう求めており、今回強化された説明及び資料提供義務の履行とともに、徹底を求める必要がある。
雇用安定化措置は、雇用継続が1年以上見込まれる労働者のみならず、省令で過去通算して1年にわたり同じ派遣元に雇用されて働いてきた労働者にも及ぶことになっている。
労働契約が解消されても登録状態が続く限り派遣元はこの義務から免れない。
そして、雇用継続の見込みが1年の場合には努力義務、3年の場合には措置義務となるが、努力義務であっても法律上の義務であり、①派遣先の直接雇用、②派遣元での期間の定めのない雇用、③他の派遣先での就労機会の確保、④その他の措置を、前記直接雇用の原則にしたがって完全に履行することが求められる。
以上は、ごく一部であるが、それがどれだけ労働者の権利を守れるものかは未知数だ。悪法は、いくら補ってもその性質は変わらないことも事実だろう。しかし、その下で派遣労働を生活の糧に生きる労働者がいることもまた事実である。
派遣先・派遣元が侵してはならない法原則や義務付けを労働者の権利実現に活かす取り組みに向けて決意を新たにさせられる。
『労働情報921号』(2015/10/15)
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