☆ 12月17日(木)10:30~東京地裁527 再雇用拒否3次訴訟・結審
◆ 東京都立学校「日の丸・君が代」強制 再雇用拒否第3次訴訟第1審裁判報告 (リベルテ)
1 はじめに
2003年10月23日、東京都教育委員会から、東京都立学校の卒業式・入学式の実施について、いわゆる「10・23通達」が出されました。これ以降、卒入学式において、校長の職務命令に反して「君が代」斉唱時に「日の丸」に向かって起立しなかった教職員の方々が、懲戒処分、あるいは定年退職後の「再雇用職員」等への採用の一律拒否といった不利益をうけている現状があります。
第3次再雇用拒否訴訟は、このような現状の中、再雇用職員としての採用を拒否された原告の方々が、再雇用拒否の違憲・違法を主張し、損害賠償請求を求めるものです。
2 事件の概要と裁判の状況等
(1)この裁判は、2011年(平成23年)3月31日付で、東京都立高等学校・東京都立特別支援学校の教員を定年退職した原告の方々が、同年4月1日以降、日勤講師制度に基づく非常勤教員として勤務することを希望して、その申込みをしましたが、過去に「君が代」斉唱時に職務命令違反の不起立があったことのみを理由として、東京都教育委員会から採用拒否されたため、損害賠償請求を求めているものです。
この裁判では、10・23通達の違憲性として、憲法19条(思想・良心の自由)、20条(信教・信仰の自由)、26条(教育の自由)、13条(個人の尊重・幸福追求の権利)、23条(学問の自由〉違反を、違法性として旧教育基本法10条(現行教育基本法16条)を、そして国際自由権規約18条違反を主張しています。
また、職務命令の違憲性として憲法19条、20条違反を、採用拒否の違憲性として憲法19条、20条違反を、そして、採用拒否についての東京都教育委員会の裁量権逸脱・濫用による違法を主張しています。
(2)証人尋問について
平成27年9月10日に原告3人の本人尋問、元東京都教育委員会人事部選考課課長の貝瀬氏の証人尋問の手続が行われました。
原告3人の本人尋問においては、原告3人それぞれが教職員として長年誠実に職務を行っていたこと、10・23通達による教育現場への不当な支配がどれほど学校教育の自主性が損なっているのかが、原告の言葉で具体的に伝えられました。
都立高校では、信仰や民族的な出自など様々な理由から起立しない生徒に対して、学校の管理者が式場にて起立するように強制するような事態も生じています。
また、10・23通達の教育現場への不当な支配の影響は、特別支援学校(養護学校)での卒業式の変容を見れば明白に分かります。
様々なハンデイキャップをもった児童・生徒のために特別支援学校では、檀上形式ではなく、児童生徒がハンデイキヤップを乗り越えて自ら卒業鉦書を受け取ることができるように、フロア形式を採用するなど、校長や教職員、保護者らが協力して工夫して卒業式をつくってきました。
しかし、10・23通達後は、檀上方式による卒業証書授与しか許されず、児童生徒らが独力では階段やスロープをのぼれない式になってしまいました。改善を求める保護者や教職員の要望は、10・23通達を根拠に校長から拒まれました。
また、校長らは、国家斉唱時に体調が急変したり、突然トイレに行きたくなった児童・生徒の補助・看護をするよりも起立斉唱するようにと、信じられない指示さえ出している現状が示されました。
原告の本尋問の後に、元都教委人事部選考課長の貝瀬氏の証人尋問が行われました。貝瀬氏は原告らが採用拒否された当時、人事部の選考課長であり、原告らの採用拒否を決めた人物です。
貝瀬氏は、都教委側の弁護士による主尋問についてはすらすらと返答するものの、当方からの反対尋問では、都教委側に不都合な点については「知らない、覚えていない」を繰り返すのみであり、大変不誠実な態度でした。
しかしながら、この証人尋問で、本件再雇用拒否の理由は、「総合評価」とはいうものの、不起立のみであること、また、非常勤教員制度はそれ以前の再雇用制度の受け皿であることが明らかになりました。
(3)他の裁判の状況について
この裁判が提起されるより前に、既に、日の丸・君が代を理由とした再雇用職員等への採用拒否については、複数の訴訟が先行して提起されています。それらの裁判は、最高裁まで行ったうえで、原告側全面敗訴判決が確定してしまっていました(2011年5月30日の南葛採用拒否事件最高裁判決、同年6月6日の嘱託採用拒否事件最高裁判決等)。
しかし、いわゆる「第2次再雇用拒否訴訟」において、本年5月25日、東京地裁は上記のような流れに反して、画期的な判決を言い渡しました。
すなわち、同判決では、東京都による原告らに対する「不起立」のみを理由とした採用拒否は、裁量権を逸脱・濫用した違法なものであると判断し、原告の請求を認めました。
同訴訟においても、原告の思想・良心の自由侵害、教育の自由侵害、教育基本法違反といった違憲・違法の主張も主張しましたが、同判決は、裁量権逸脱・濫用として違法である以上、他の争点については判断する必要がないという論法により、上記違憲・違法の主張については判断しませんでした。
なお、同訴訟については被告である東京都が控訴し、本年の12月10日に控訴審の判決が出されます。
3 今後の進行
第3次再雇用拒否訴訟は、本年の12月17日に結審し、来年に判決が出る予定となっています。第2次に続き、第3次再雇用拒否訴訟においても勝訴を獲得するために万全の準備をしていきます。
『東京・教育の自由裁判をすすめる会ニュース(リベルテ) 41号』(2015/10/24)
◆ 東京都立学校「日の丸・君が代」強制 再雇用拒否第3次訴訟第1審裁判報告 (リベルテ)
弁護団 弁護士 西山 寛
1 はじめに
2003年10月23日、東京都教育委員会から、東京都立学校の卒業式・入学式の実施について、いわゆる「10・23通達」が出されました。これ以降、卒入学式において、校長の職務命令に反して「君が代」斉唱時に「日の丸」に向かって起立しなかった教職員の方々が、懲戒処分、あるいは定年退職後の「再雇用職員」等への採用の一律拒否といった不利益をうけている現状があります。
第3次再雇用拒否訴訟は、このような現状の中、再雇用職員としての採用を拒否された原告の方々が、再雇用拒否の違憲・違法を主張し、損害賠償請求を求めるものです。
2 事件の概要と裁判の状況等
(1)この裁判は、2011年(平成23年)3月31日付で、東京都立高等学校・東京都立特別支援学校の教員を定年退職した原告の方々が、同年4月1日以降、日勤講師制度に基づく非常勤教員として勤務することを希望して、その申込みをしましたが、過去に「君が代」斉唱時に職務命令違反の不起立があったことのみを理由として、東京都教育委員会から採用拒否されたため、損害賠償請求を求めているものです。
この裁判では、10・23通達の違憲性として、憲法19条(思想・良心の自由)、20条(信教・信仰の自由)、26条(教育の自由)、13条(個人の尊重・幸福追求の権利)、23条(学問の自由〉違反を、違法性として旧教育基本法10条(現行教育基本法16条)を、そして国際自由権規約18条違反を主張しています。
また、職務命令の違憲性として憲法19条、20条違反を、採用拒否の違憲性として憲法19条、20条違反を、そして、採用拒否についての東京都教育委員会の裁量権逸脱・濫用による違法を主張しています。
(2)証人尋問について
平成27年9月10日に原告3人の本人尋問、元東京都教育委員会人事部選考課課長の貝瀬氏の証人尋問の手続が行われました。
原告3人の本人尋問においては、原告3人それぞれが教職員として長年誠実に職務を行っていたこと、10・23通達による教育現場への不当な支配がどれほど学校教育の自主性が損なっているのかが、原告の言葉で具体的に伝えられました。
都立高校では、信仰や民族的な出自など様々な理由から起立しない生徒に対して、学校の管理者が式場にて起立するように強制するような事態も生じています。
また、10・23通達の教育現場への不当な支配の影響は、特別支援学校(養護学校)での卒業式の変容を見れば明白に分かります。
様々なハンデイキャップをもった児童・生徒のために特別支援学校では、檀上形式ではなく、児童生徒がハンデイキヤップを乗り越えて自ら卒業鉦書を受け取ることができるように、フロア形式を採用するなど、校長や教職員、保護者らが協力して工夫して卒業式をつくってきました。
しかし、10・23通達後は、檀上方式による卒業証書授与しか許されず、児童生徒らが独力では階段やスロープをのぼれない式になってしまいました。改善を求める保護者や教職員の要望は、10・23通達を根拠に校長から拒まれました。
また、校長らは、国家斉唱時に体調が急変したり、突然トイレに行きたくなった児童・生徒の補助・看護をするよりも起立斉唱するようにと、信じられない指示さえ出している現状が示されました。
原告の本尋問の後に、元都教委人事部選考課長の貝瀬氏の証人尋問が行われました。貝瀬氏は原告らが採用拒否された当時、人事部の選考課長であり、原告らの採用拒否を決めた人物です。
貝瀬氏は、都教委側の弁護士による主尋問についてはすらすらと返答するものの、当方からの反対尋問では、都教委側に不都合な点については「知らない、覚えていない」を繰り返すのみであり、大変不誠実な態度でした。
しかしながら、この証人尋問で、本件再雇用拒否の理由は、「総合評価」とはいうものの、不起立のみであること、また、非常勤教員制度はそれ以前の再雇用制度の受け皿であることが明らかになりました。
(3)他の裁判の状況について
この裁判が提起されるより前に、既に、日の丸・君が代を理由とした再雇用職員等への採用拒否については、複数の訴訟が先行して提起されています。それらの裁判は、最高裁まで行ったうえで、原告側全面敗訴判決が確定してしまっていました(2011年5月30日の南葛採用拒否事件最高裁判決、同年6月6日の嘱託採用拒否事件最高裁判決等)。
しかし、いわゆる「第2次再雇用拒否訴訟」において、本年5月25日、東京地裁は上記のような流れに反して、画期的な判決を言い渡しました。
すなわち、同判決では、東京都による原告らに対する「不起立」のみを理由とした採用拒否は、裁量権を逸脱・濫用した違法なものであると判断し、原告の請求を認めました。
同訴訟においても、原告の思想・良心の自由侵害、教育の自由侵害、教育基本法違反といった違憲・違法の主張も主張しましたが、同判決は、裁量権逸脱・濫用として違法である以上、他の争点については判断する必要がないという論法により、上記違憲・違法の主張については判断しませんでした。
なお、同訴訟については被告である東京都が控訴し、本年の12月10日に控訴審の判決が出されます。
3 今後の進行
第3次再雇用拒否訴訟は、本年の12月17日に結審し、来年に判決が出る予定となっています。第2次に続き、第3次再雇用拒否訴訟においても勝訴を獲得するために万全の準備をしていきます。
『東京・教育の自由裁判をすすめる会ニュース(リベルテ) 41号』(2015/10/24)
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