◆ 反対運動で基本方針の変更も 子どもの安全・安心を守る(週刊新社会)
東京都板橋区の放課後対策事業である「新あいキッズ」は、多くの抗議、不安の声にも関わらず、2015年度全校実施予定を変更していない。新あいキッズは児童館の事業内容や館数、配慮を要する児童の放課後生活に大きな影響を及ぼしている。
◆ 区「二重投資はしない。小学生はあいキッズ」
学童クラブを小学校内で一体的に運営する「あいキッズ」が始まった2009年から、児童館のあり方検討を区上層部が強く指示するようになった。
児童館担当の子ども政策課が職員の声も集め、何度も案を提出したが、そのたびに駄目出しされて一時、小学生は登校拒否など極特例的利用以外認めないとまで言われていた。
理由は、「区の方針は学校施設の中に児童の安心・安全な居場所を確保することで、遊び場の選択肢を増やすことではない」である。
◆ 「子どもが主役」の児童館から小学生排除?!
児童館は0歳から18歳までが利用できる地域に根付いた児童福祉施設である。1967年の開設以降小学生が中心的利用者であり、少子化、授業の長時間化、あいキッズ開始等があっても、児童館を利用する小学生は決して少なくない。
放課後、土曜日、学期ごとの休みには小学生は家から児童館に来る。小学校52校に対して、児童館は38館で、学区域規制もないため、近隣小学校から児童が集まってくる。
指導員が手芸や製作、卓球やドッジボールなどの指導をする。児童は各自の判断で、好きな部屋で友だちや指導員と一緒におしゃべりをしたり、遊具で遊び、自由に使える材料で製作などをして過ごす。
児童館の大きなイベントであるお祭りやお化け大会、クリスマス会などでは高学年児童は中学生と共に実行委員になり、指導員の交通整理のもとで、企画、準備、当日の運営を担う。実行委員になれる学年を楽しみに待つ児童も多い。
児童館は、学校の評価、人間関係の枠を超え、自分の考えで過ごせる貴重な「社会」なのである。
◆ 乳幼児利用増加だが、小学生との共用は可能
「幼児教室」は区立幼稚園不足のカバー策として始められ、学校がある日の午前中に4、5歳児が対象の保護者同伴事業であった。
現在は、首が座ったばかりの赤ちゃんから、元気に走り回れる2、3歳児の子どもまでを主な対象に、年齢に応じた活動が行われている。
親子体操や歌、手遊び、製作、誕生会や季節の行事など多彩な集団活動が展開され、利用数も増えている。
集団活動に参加しない親子は他の部屋で自由遊びを見守りながら、ママ同士おしゃべりに花をさかせるなど在宅親子の子育て支援の場となっている。
近年は昼食を食べることができる児童館も多くなり、午後は小学生と部屋の住み分けで対応。学期ごとの休みには、指導員の仲立ちで、小学生が楽しそうに幼児と遊んでいる姿もみられる。
◆ 来年度、乳幼児子育て支援施設に改変の予定!
小学生の放課後はあいキッズ、児童館は乳幼児子育て支援事業に軸足を移し、館数は大幅削減というのが、児童館あり方検討の現在の基本方針である。
しかし、新あいキッズ反対の動きを受け、館数削減はペースダウンするなど再検討がなされており、基本方針の変更を迫る余地がまったく残されていないわけではない。
小学生を学校だけに閉じ込めるような児童館の利用制限や大幅削減への疑問は、実態を知り、子どものことを考える人たちの中では根強い。
区は新あいキッズで経費削減を意図するのだろうが、一方で、制度説明プリントにある実施運営主体-学校「学校と共通の意識で事業展開することで、子どもたちへの一貫した育成が実現」という文言にも文科省の意向を受けた区の狙いがあるのでは、と怖さを感じる。
◆ 全児童から排除される要支援児童
学童クラブにおいては、多数の就労家庭要支援児が、指導員の手助けを受けて他の児童と放課後の生活を共にしてきた。
しかし、新あいキッズでは次のような理由で、困難なケースが多くなると危惧される。
・学童クラブ登録を廃止するので、安定した小集団がなくなり、児童同士の関係を紡ぎにくい。
・差別解消法制定後にもかかわらず、あいキッズ条例には、「障害」児排除の文言が盛り込まれ、施行規則では「利用制限必要項目」に「運営上支障」を掲げている。
・人員減、民間委託化でこれまでのような経験豊かな非常勤指導員配置は厳しい。
・要支援児だけには、受入れ人数枠もある。
さらに教育長は議会で「区全体で対応を考える」と暗に放課後デイ(要支援児だけの民間学童)をほのめかした。板橋区はインクルーシブ(障害の有無によらず、誰もが地域の学校で学べる教育)に逆行している。
◆ 委託あいキッズへの移行で職員は?子どもたちは?
児童館での乳幼児事業は現在は常勤(正規)職員も共に運営に当たっているが、長いこと非正規のパート職員が担ってきた。学童クラブで要支援児を主に見ていたのも、非常勤職員である。
板橋区の組織改編の合理化案は、経験豊かな非正規職員の職も奪いかねず、子どもたちからは安定した職員との関わりを奪うといった問題もある。
板橋区は新あいキッズで安全安心というが、未経験な職員ばかりの所では、保護の面でもゆとりなく、安全・安心なものとはいえない。
今の方針が進めば、小学生は放課後も反動化・管理が強まる学校に閉じ込められるか、ゲーセンか、大人の目の届かないところに行くしかなくなる。
「先生」とは違う立場の大人と出会い、自分を表現し、他人と意見を交わし、一つのものを仕上げていく、そういった力を培う機会も奪われる恐れがある。
自己を主張しない指示待ち人間を喜ぶのは誰なのだろうか?
今後、板橋区が小学生の放課後施策をどのように展開するか、保護者や労働者が、子どものことや働く自分自身のことをどのように考え動くのか、注目していきたい。
『週刊新社会』(2014/5/20)
東京都板橋区の放課後対策事業である「新あいキッズ」は、多くの抗議、不安の声にも関わらず、2015年度全校実施予定を変更していない。新あいキッズは児童館の事業内容や館数、配慮を要する児童の放課後生活に大きな影響を及ぼしている。
◆ 区「二重投資はしない。小学生はあいキッズ」
学童クラブを小学校内で一体的に運営する「あいキッズ」が始まった2009年から、児童館のあり方検討を区上層部が強く指示するようになった。
児童館担当の子ども政策課が職員の声も集め、何度も案を提出したが、そのたびに駄目出しされて一時、小学生は登校拒否など極特例的利用以外認めないとまで言われていた。
理由は、「区の方針は学校施設の中に児童の安心・安全な居場所を確保することで、遊び場の選択肢を増やすことではない」である。
◆ 「子どもが主役」の児童館から小学生排除?!
児童館は0歳から18歳までが利用できる地域に根付いた児童福祉施設である。1967年の開設以降小学生が中心的利用者であり、少子化、授業の長時間化、あいキッズ開始等があっても、児童館を利用する小学生は決して少なくない。
放課後、土曜日、学期ごとの休みには小学生は家から児童館に来る。小学校52校に対して、児童館は38館で、学区域規制もないため、近隣小学校から児童が集まってくる。
指導員が手芸や製作、卓球やドッジボールなどの指導をする。児童は各自の判断で、好きな部屋で友だちや指導員と一緒におしゃべりをしたり、遊具で遊び、自由に使える材料で製作などをして過ごす。
児童館の大きなイベントであるお祭りやお化け大会、クリスマス会などでは高学年児童は中学生と共に実行委員になり、指導員の交通整理のもとで、企画、準備、当日の運営を担う。実行委員になれる学年を楽しみに待つ児童も多い。
児童館は、学校の評価、人間関係の枠を超え、自分の考えで過ごせる貴重な「社会」なのである。
◆ 乳幼児利用増加だが、小学生との共用は可能
「幼児教室」は区立幼稚園不足のカバー策として始められ、学校がある日の午前中に4、5歳児が対象の保護者同伴事業であった。
現在は、首が座ったばかりの赤ちゃんから、元気に走り回れる2、3歳児の子どもまでを主な対象に、年齢に応じた活動が行われている。
親子体操や歌、手遊び、製作、誕生会や季節の行事など多彩な集団活動が展開され、利用数も増えている。
集団活動に参加しない親子は他の部屋で自由遊びを見守りながら、ママ同士おしゃべりに花をさかせるなど在宅親子の子育て支援の場となっている。
近年は昼食を食べることができる児童館も多くなり、午後は小学生と部屋の住み分けで対応。学期ごとの休みには、指導員の仲立ちで、小学生が楽しそうに幼児と遊んでいる姿もみられる。
◆ 来年度、乳幼児子育て支援施設に改変の予定!
小学生の放課後はあいキッズ、児童館は乳幼児子育て支援事業に軸足を移し、館数は大幅削減というのが、児童館あり方検討の現在の基本方針である。
しかし、新あいキッズ反対の動きを受け、館数削減はペースダウンするなど再検討がなされており、基本方針の変更を迫る余地がまったく残されていないわけではない。
小学生を学校だけに閉じ込めるような児童館の利用制限や大幅削減への疑問は、実態を知り、子どものことを考える人たちの中では根強い。
区は新あいキッズで経費削減を意図するのだろうが、一方で、制度説明プリントにある実施運営主体-学校「学校と共通の意識で事業展開することで、子どもたちへの一貫した育成が実現」という文言にも文科省の意向を受けた区の狙いがあるのでは、と怖さを感じる。
◆ 全児童から排除される要支援児童
学童クラブにおいては、多数の就労家庭要支援児が、指導員の手助けを受けて他の児童と放課後の生活を共にしてきた。
しかし、新あいキッズでは次のような理由で、困難なケースが多くなると危惧される。
・学童クラブ登録を廃止するので、安定した小集団がなくなり、児童同士の関係を紡ぎにくい。
・差別解消法制定後にもかかわらず、あいキッズ条例には、「障害」児排除の文言が盛り込まれ、施行規則では「利用制限必要項目」に「運営上支障」を掲げている。
・人員減、民間委託化でこれまでのような経験豊かな非常勤指導員配置は厳しい。
・要支援児だけには、受入れ人数枠もある。
さらに教育長は議会で「区全体で対応を考える」と暗に放課後デイ(要支援児だけの民間学童)をほのめかした。板橋区はインクルーシブ(障害の有無によらず、誰もが地域の学校で学べる教育)に逆行している。
◆ 委託あいキッズへの移行で職員は?子どもたちは?
児童館での乳幼児事業は現在は常勤(正規)職員も共に運営に当たっているが、長いこと非正規のパート職員が担ってきた。学童クラブで要支援児を主に見ていたのも、非常勤職員である。
板橋区の組織改編の合理化案は、経験豊かな非正規職員の職も奪いかねず、子どもたちからは安定した職員との関わりを奪うといった問題もある。
板橋区は新あいキッズで安全安心というが、未経験な職員ばかりの所では、保護の面でもゆとりなく、安全・安心なものとはいえない。
今の方針が進めば、小学生は放課後も反動化・管理が強まる学校に閉じ込められるか、ゲーセンか、大人の目の届かないところに行くしかなくなる。
「先生」とは違う立場の大人と出会い、自分を表現し、他人と意見を交わし、一つのものを仕上げていく、そういった力を培う機会も奪われる恐れがある。
自己を主張しない指示待ち人間を喜ぶのは誰なのだろうか?
今後、板橋区が小学生の放課後施策をどのように展開するか、保護者や労働者が、子どものことや働く自分自身のことをどのように考え動くのか、注目していきたい。
『週刊新社会』(2014/5/20)
指導者の能力不足を痛感しました。我が子は大人しい子でのんびりしていますが、やはり小1になったばかりの頃ですと、環境の変化もあり素直に言うことを聞けないこともありました。毎日、迎えに行くと子どもの悪いところばかり上げつらい、今日はこんなことでスタッフが苦労した、あんなことでいうことを聞かずスタッフが大変だった、と愚痴を言ってきました。
でもあいキッズに移行する前からいるパートのスタッフたちは、あれはスタッフが悪い、あんな頭ごなしの言い方をしたら子どもが反発するのは当たり前だ、あの子はいい子だから、と言ってくれました。
あれから1年、今は子どもも落ち着いていて、元通りになっています。しかしスタッフの方々の能力不足は変わらず。あいキッズ一般ができてからバタバタで、子どもをしっかり把握できておりあず、職場に時々電話が掛かってくることも。我が子があいキッズ学童ですが、一般と一緒になっていて管理しきれていない様子です。
民間に委託するにしても、スタッフに一定以上の経験がいることを要件にするなど、区もしっかりと管理をすべきだと思います。