◆ 委託推進で安上がり 小学生の放課後が貧弱に(週刊新社会)
安倍晋三内閣の教育改革が戦争できる国づくりに向け猛威をふるっているが、下村博文文科大臣のお膝元の東京都板橋区(人口56万人)では、小学生の放課後生活を支える児童福祉施設を縮小削減改変する動きが急ピッチで進められている。その現状と問題点を検討する。
◆ 板橋区は学童クラブ廃止に舵を切った
板橋区は昨年8月末、突然学童クラブ廃止の方針を発表した。
学童クラブは保護者の就労等で、放課後や三期休業日に保護を必要とする小学生の生活を支え、健全育成を担う児童福祉法に則った施設である。
「新あいキッズ」という名の学童クラブ登録を認めない事業提案に、就労している保護者を中心に不安、抗議の声が多数出され、説明会を要求。
明確な説明ができない区に対し拙速な実施を見合わせるように、地域住民、組合なども巻き込んで反対の動きが起こったが、区は12月に条例制定を強行し、4月から11校で実施した。
その結果、表に示すように、今年度板橋区で保護を必要とする小学生の放課後の居場所は、通っている小学校によって、三つに分かれている。
◆ 学童クラブの子どもたち
今は10カ所だけになった直営学童クラブは、1964年度に3校で空き教室を使い非常勤職員を担当に開始された。その後常勤化され、1小学校ーカ所を基本に大半児童館併設で増設された。
子どもたちは「ただいま!」と学校から学童クラブに直接帰ってくる。○○先生ではなく○○ちゃんと呼ばれる指導員に連絡帳を手渡し、子どもたちは畳の空間も含めた室内で、宿題をしたり、友だちと遊具を使って遊んだり、本や漫画を読んだり、下準備された工作や手芸をしたり、思い思いに過ごす。
指導員に断って児童館に行ったり、傍の公園や玄関前スペースで運動的遊びに興じたりもできる。おやつの時間は学年を超えたグループでおしゃべり。日によっては誕生会やお楽しみ会、手芸工作など全員で行う行事もあり、小学校の校庭や少し離れに公園、児童館や諸施改に遊びに行くような企画も入る。
指導員は子どもの安全に気を配りつつ一緒に遊び、けんかを仲裁し、遊びに入れない子を誘導し、時間差で帰ってくる子を迎え、合間に連絡帳に記載する。
翌日も楽しく来られるように、帰宅時の声掛けも大切。親の就労保障のために、学童クラブは子どもが「来なくてはいけない」場所であるから。
◆ 全児童対策事業開始
このような学童クラブが様変わりしたのが、2009年である。学童クラブと一般児童対象の放課後子ども教室を一体化した板橋版放課後対策事業(あいキッズ)が4校で開始された。
学校内空き教室を使い、学童クラブの定員を設けないことで待機児解消をはかり、民間委託をぺースアップする安上がり政策でもあった。
委託業者によって事業内容に差があると聞いているが、施設的には学校内に入り悪くなっている所が多い。校庭や体育館の利用が自由にできるかのように言われるが、当然学校事業優先。学童クラブ登録児は主に使う部屋があるが、独自事業が少ないこともあり、所属感、仲間意識は育ちにくいようだ。
なによりも職員が安定しないことが、子どもたちにもマイナス。パート職員は低賃金のため定着しにくく、せっかく慣れた常勤職員も、法人が新たな所を受託するとそちらに移るためである。始終職員を募集している法人、一年で打ち切りとなった法人もある。
◆ 安上がり施策の犠牲者は子どもたち
新あいキッズ事業は、5時までは全児童一緒に過ごすことを主眼においており、保護的機能は弱い。担当の教育長は区議会で、2015年度全52小学校での新あいキッズ実施で1億4000万経費が削減できると答弁している。
区分を廃止するから職員を削減しても大丈夫との説明である。その人数では子どもに関われず、監視しているしかないと現場職員は言う。そのため、学外の要支援児専用学童クラブ「放課後デイ」に移って行く保護者も出てきている。
事業内容は、反対の取組みや議会での質疑の影響もあって当初案が少し変更されたが、見切り発車のため、不明確な点や混乱も多い。
5時まで就労の一年生の受け入れが遅れて困った、連絡帳がなくて不安などの保護者の声がある。校庭遊びの制限が増えたとの一般児童の不満もある。施設改修が遅れ現場の指導員が作業に追われたとの話もあり、問題山積みのスタートだ。
全校で新あいキッズ実施予定の来年度、学校とは別な「社会」である児童館から小学生が排除される危険性がある。児童福祉の後退、反動強まる学校への閉じ込めが始まっているのではないだろうか。
(続)
『週刊新社会』(2014/5/13)
安倍晋三内閣の教育改革が戦争できる国づくりに向け猛威をふるっているが、下村博文文科大臣のお膝元の東京都板橋区(人口56万人)では、小学生の放課後生活を支える児童福祉施設を縮小削減改変する動きが急ピッチで進められている。その現状と問題点を検討する。
◆ 板橋区は学童クラブ廃止に舵を切った
板橋区は昨年8月末、突然学童クラブ廃止の方針を発表した。
学童クラブは保護者の就労等で、放課後や三期休業日に保護を必要とする小学生の生活を支え、健全育成を担う児童福祉法に則った施設である。
「新あいキッズ」という名の学童クラブ登録を認めない事業提案に、就労している保護者を中心に不安、抗議の声が多数出され、説明会を要求。
明確な説明ができない区に対し拙速な実施を見合わせるように、地域住民、組合なども巻き込んで反対の動きが起こったが、区は12月に条例制定を強行し、4月から11校で実施した。
その結果、表に示すように、今年度板橋区で保護を必要とする小学生の放課後の居場所は、通っている小学校によって、三つに分かれている。
◆ 学童クラブの子どもたち
今は10カ所だけになった直営学童クラブは、1964年度に3校で空き教室を使い非常勤職員を担当に開始された。その後常勤化され、1小学校ーカ所を基本に大半児童館併設で増設された。
子どもたちは「ただいま!」と学校から学童クラブに直接帰ってくる。○○先生ではなく○○ちゃんと呼ばれる指導員に連絡帳を手渡し、子どもたちは畳の空間も含めた室内で、宿題をしたり、友だちと遊具を使って遊んだり、本や漫画を読んだり、下準備された工作や手芸をしたり、思い思いに過ごす。
指導員に断って児童館に行ったり、傍の公園や玄関前スペースで運動的遊びに興じたりもできる。おやつの時間は学年を超えたグループでおしゃべり。日によっては誕生会やお楽しみ会、手芸工作など全員で行う行事もあり、小学校の校庭や少し離れに公園、児童館や諸施改に遊びに行くような企画も入る。
指導員は子どもの安全に気を配りつつ一緒に遊び、けんかを仲裁し、遊びに入れない子を誘導し、時間差で帰ってくる子を迎え、合間に連絡帳に記載する。
翌日も楽しく来られるように、帰宅時の声掛けも大切。親の就労保障のために、学童クラブは子どもが「来なくてはいけない」場所であるから。
◆ 全児童対策事業開始
このような学童クラブが様変わりしたのが、2009年である。学童クラブと一般児童対象の放課後子ども教室を一体化した板橋版放課後対策事業(あいキッズ)が4校で開始された。
学校内空き教室を使い、学童クラブの定員を設けないことで待機児解消をはかり、民間委託をぺースアップする安上がり政策でもあった。
委託業者によって事業内容に差があると聞いているが、施設的には学校内に入り悪くなっている所が多い。校庭や体育館の利用が自由にできるかのように言われるが、当然学校事業優先。学童クラブ登録児は主に使う部屋があるが、独自事業が少ないこともあり、所属感、仲間意識は育ちにくいようだ。
なによりも職員が安定しないことが、子どもたちにもマイナス。パート職員は低賃金のため定着しにくく、せっかく慣れた常勤職員も、法人が新たな所を受託するとそちらに移るためである。始終職員を募集している法人、一年で打ち切りとなった法人もある。
◆ 安上がり施策の犠牲者は子どもたち
新あいキッズ事業は、5時までは全児童一緒に過ごすことを主眼においており、保護的機能は弱い。担当の教育長は区議会で、2015年度全52小学校での新あいキッズ実施で1億4000万経費が削減できると答弁している。
区分を廃止するから職員を削減しても大丈夫との説明である。その人数では子どもに関われず、監視しているしかないと現場職員は言う。そのため、学外の要支援児専用学童クラブ「放課後デイ」に移って行く保護者も出てきている。
事業内容は、反対の取組みや議会での質疑の影響もあって当初案が少し変更されたが、見切り発車のため、不明確な点や混乱も多い。
5時まで就労の一年生の受け入れが遅れて困った、連絡帳がなくて不安などの保護者の声がある。校庭遊びの制限が増えたとの一般児童の不満もある。施設改修が遅れ現場の指導員が作業に追われたとの話もあり、問題山積みのスタートだ。
全校で新あいキッズ実施予定の来年度、学校とは別な「社会」である児童館から小学生が排除される危険性がある。児童福祉の後退、反動強まる学校への閉じ込めが始まっているのではないだろうか。
(続)
『週刊新社会』(2014/5/13)
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