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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

NHKの東京オリンピック・パラリンピック大会報道の偏向ぶりを検証

2022年04月08日 | こども危機
 ◆ コロナ禍、強行開催の東京オリパラ大会のNHK報道を検証
   “賛否分かれる”と言いつつ“賛”偏重~“国威発揚”批判ゼロ
(『マスコミ市民』)
永野厚男(教育ジャーナリスト)


新宿区立四谷六小6年生のパラ観戦動員後、教室で感想文を書かせ、口頭発表させた"授業"について、NHK・竹岡直幸カメラマンは9月7日『おはよう日本』で、パラリンピアンに感謝・感動する内容の発表だけ報じた。

 北京(ペキン)でのオリンピック・パラリンピック大会(以下、オリ・パラと略記)大会が閉幕した。コロナ禍に加え、パラの期間はロシアのウクライナ侵略とも重なったが、IOCと当局は多額な金をかけ、超豪華な開・閉会式を強行。マスコミは賛美報道に終始した。
 少し古くなるが、NHKが御用放送局ぶりを発揮した東京オリ・パラの偏向報道を、『ニュースウオッチ9』(以下、NW9)に絞り、紹介し、分析・批判する。
 ◆ “国威発揚”・国家主義に反対する市民の動き、報道せず

 東京オリ閉会翌日、2021年8月9日放送のNW9は「異例の大会が閉幕。コロナ禍の五輪をどう見た?社会の多様性反映された?」と題し、15分間もオリを振り返った。
 この番組は、田中正良(まさよし)キャスターが最初「オリ史上、異例のコロナ禍の開催を巡っては、延期・中止を求める意見が根強く、賛否分かれる中での17日間の大会となった。今回のオリ、人々はどう見たのでしょうか」とイントロダクション。
 だが、筆者がビデオを起こした後掲の(1)~(13)のうち、「否」の内容の報道は(3)(10)(12)だけ。
 多くの市民が「否」とする理由と思われる次の①~④のうち、NHKは他の番組も含め、①には全く触れず、意図的に隠蔽。また②~④は、ごく短時間映像を流した等はあるが、反対理由等、内容の掘り下げはほとんどなかった。
 ①五輪憲章は「表彰式では各国・地域のNOCの旗・歌を使う」と規定。つまり選手団の旗・歌だ。しかし、東京都教育委員会が16年4月から、東京の公立学校の小4~高3全員に配布し続けている『オリパラ学習読本』は、「表彰式で国旗・国のぶよし歌を使う」とウソの記述を続け、高嶋伸欣琉球大名誉教授ら都民約100人が都側を被告に裁判係争中。このように国家権力側がオリパラで狙う”国威発揚”・国家主義(これ自体、平和・友好というオリの建て前に反するが)の本音と危険性。
 ②開・閉会式で市民が行ったデモ等、オリパラ自体への反対行動や、莫大な税金の浪費(選手村の贅沢な食事やボランティアの弁当を含む廃棄=食品ロス問題、ボランティアの余剰ユニフォーム問題等)への批判。
 ③各国要人や大会関係者、選手輸送の専用レーン設置等、コロナ対策よりオリ優先の誤った政策。
 ④閉会式当日、雰囲気を味わいたいと多くのオリ賛成派が国立競技場周辺に現れ、コロナ禍なのに“密”状態になった。
 NW9は最後の方で、星真琴(まこと)アナが「今回のオリでは、自らの発言や過去の行動によって、関係者が辞任する事態が相次ぎました。振り返ると、『復興五輪』や”“多様性と調和”という理念を掲げはしたものの、実は私たち自身が総括しきれないまま、オリを終えてしまった気がします」と述べた。
 だが時間配分、内容の掘り下げ共に「賛」の比重が非常に重く、特に(13)は前記①の国家権力側の本音を隠蔽し、「オリは多様性と調和だ」と、視聴者を誤導する意図が鮮明だった。
 ◆ 田中正良キャスターが“オリ=多様性と調和”大宣伝

(1)選手の乗るバスに向かい大きなメッセージボードを掲げ、大きく手を振り、エールを送り続ける熟年男性。
(2)無観客大会で自宅観戦する人たちに料理を運び続ける、ウーバーイーツの配達員。
(3)男性アナが「大会期間中、都内の感染者数は最多を更新。4度目の緊急事態宣言下、生活に厳しさを増し追い詰められる人たちも。都内の公園は食料の配布を求める人たちの列も」と紹介。
 「倒産しちゃって、平和の祭典って言ってるけど、全然平和じゃない。だったらコロナを何とかしてほしい」と言う男性と、「昔なら考えられないような人たちが並んでいる。オリを見ている状況じゃない。その時間もない人がこれだけたくさんいて、もう深くこの国が分断されてきてます」と語る支援団体・清野賢司(せいのけんじ)代表理事への短いインタビューは伝えた。
(4)サッカーW杯時は盛況だったスポーツバー店主。午後8時閉店に。「オリをはずみに」と準備を進めてきたが、売り上げは通常の4割程度に減。
(5)9か国22人が学ぶ夜間中学は、教室で食事をしながら前方のテレビで静かに観戦。男性教諭が「コロナで食事の時間、喋れないので、見て誰でもが楽しめるオリは(世界)共通でいい」と語る。
(6)(1)の熟年男性を再度登場させる。

(7)人権や貧困の問題に取り組み、今回政府代表として来日した、米国の国連大使「多様性を考えるきっかけに」と、短く(13)の予告。
(8)24年の五輪開催都市・パリ、閉会式を生中継したエッフェル塔の広場に、六千人の市民が集合。市民2名の「東京オリ、良かった。3年後への期待」の声だけ報道。
(9)22年に冬季五輪大会を控える中国。土ハ産党系メディア『環球時報(かんきゅうじほう)』8月9日付社説が「コロナ感染再拡大の危機的状況下の開催だが、期待を上回る盛り上がり、全人類の勝利だ」と評価、「東京大会成功で北京大会成功がより確実になった」と記述。
(10)一方、ロイター通信からは「日本が当初期待していた勝利や恩恵からは、ほど遠かった」という批評も。
(11)「東京オリの理念のーつは復興五輪」と女性アナが語り、3月の福島Jヴィレッジ・採火式の模様を流す。
(12)ロバート・キャンベル早稲田大特命教授(米国出身の日本文学研究者)の「日本政府の中で“復興五輪”というーつの名目・目標が掲げられ、広報されているけど、復興そのものに五輪が寄与したという痕跡は、私から見てあまりないように思う。残念ながら空約束に終わってしまった。かなり厳しい評価を下さなければならないと思う」という発言は、役職等紹介のナレーションを含めても約45秒だけ。
(13)豪華・贅沢(ぜいたく)な閉会式の行進と五輪マーク、“多様性と調和”というテロップ、更には加藤勝信(かつのぶ)官房長官(当時)との面会映像を、大きなマーチの音と共に流しながら、田中正良氏が「“多様性と調和”も東京大会の理念に掲げられました。米国のリンダ・トーマス・グリーンフィールド国連大使(以下、グリ氏)。米政府代表として閉会式に参加した閣僚級重要ポスト。“多様性”重視のバイデン政権を象徴する人。人種差別の残っていた南部ルイジアナ州生まれ。大学でも人種差別を身近に感じたという。こうした経験から30年超の外交官生活は多様性・公平性実現に力を注いできた」と、自ら長いナレーションで紹介。
 田中氏は「世界は東京五輪を通じて多様性のメッセージを受け取ったか」と切り出し、グリ氏に「人種差別や公平性の問題はバイデン政権の最優先課題」と語らせた。
 田中氏は続けて「東京五輪で特に印象的だったのが、選手たちが自らの思いを訴え続けた姿だと言います。サッカー女子予選リーグ、試合直前に日本と英国の選手、審判が片膝をつけ、人種差別への抗議を示した」と述べた上で、「体操女子シモーネ・バイルズ選手、男子シンクロ高飛び込みのトーマス・デーリー選手」の名を挙げ、「今回の大会では」GBTQなどの性的マイノリティーと公表し出場する選手が、約180人。過去最多」と、またも自らナレーシヨンしPR。
 そしてグリ氏に「私自身も人種差別を受け、その中で生き抜いてきた。『逆境でも何かを成し遂げられる』、その米国を私自身が体現している。若者は五輪の機会に意見表明し、世界に向けリーダーシップを発揮した。そんな若者たちに敬意を表したい。私たちはもっと寛容な社会を作らなければならない」などと語らせた。
 以上、グリ氏へのインタビューは、役職等の紹介や「五輪は“多様性と調和”だ」という宣伝のナレーションを含めると、約4分10秒もの長さだった。
『マスコミ市民』(2022年4月)

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