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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

手続のミスなどで免許失効、失職になる愚劣な教員免許更新制度

2013年04月30日 | 暴走する都教委
  《尾形修一の教員免許更新制反対日記》から
 ◆ 東京都の「採用取り消し」問題


 時間が経ってしまったけれど、東京で4月15日付で公表された、「東京都公立学校教員の採用取消しについて」と言う問題を考えておきたい。
 何度も書いたことだけれど、教員免許更新制と言う制度は、更新講習を受け、講習開設者より終了認定を受け、教育委員会に更新を申請し、認められるということをしないと、10年間で教員免許そのものが失効する。(もちろん病気休職等の場合など、延期することも可能だが、それも事前の申請が必要である。)
 教育公務員は教員免許があることが公務員の条件であるという解釈を文科省が取っている(古い最高裁判例がある)ので、教員免許が失効すると失職することになる。現実にそうした事例は起こった。そのことはこのブログで何回も書き、いかに意味のない愚劣な制度であるかをその都度書いてきた。
 だから、手続きのミスなどで免許失効、失職になるということは、それが一体何の意味があるのかは疑問だけど、制度そのものの中に想定されていた事態である。
 しかし、教員免許更新制に関わって「採用取り消し」が起こりうるということは、今まで指摘されてこなかったのではないか。
 考えてみれば、多くの自治体で教員採用試験の受験を35歳以上にも認めているわけだから、受験、合格時点では教員免許が有効だったのに、採用時点で失効しているということもあるはずである。でも、僕はそういう事態を想定しなかった。
 30歳を過ぎて教員に採用される人もいることは知っているが、おおよそそういう人の場合も、それまでずっと一般企業に勤めていて突然教員採用試験を受けるのではなく、大体は非常勤講師や産休代替教員などをしてきたという人が多いと思うからである。何らかのかたちで学校に関わっていれば、教員免許を更新しなければいけないことは伝わるはずだ。(正教員ではなく、非正規の非常勤講師や臨時教員であっても、免許を更新しなければ失職する)
 実際に起こったことをホームページで確認したい。4月15日付で、以下の4人の採用が1日にさかのぼって取り消しになったと発表された。
 (1) 区立小学校教諭 36歳 女
 (2) 区立中学校教諭(期限付任用教員) 35歳 女
 (3) 都立高等学校教諭 46歳 男
 (4) 都立特別支援学校教諭 35歳 女

 どうしてこういう事態が起こったかは僕にはよく理解できない。つまり、教員採用試験というのは、免許を持っている人だけでなく、免許取得見込みの大学生も受験できる。現役ですぐ合格するというのは、(小学校を除けば)、今はあまりないかもしれないが。その場合、合格して採用されたものの、①卒業に必要な単位を落として卒業できなかった ②卒業に必要な単位は取得して卒業はできたが、教員免許取得に必要な教職課程の単位を落として教員免許は取得できなかったという場合がありうる。現にそういう例が時々起こっているのは、知っている人も多いだろう。
 だから採用を決めた各学校は、3月になって免許を確認するはずである。多分歳のいった合格者のことは、当然免許は持っているものと思って疑わなかったんだろうけど。
 ところで、上記の③の人は46歳である。35は判るとして、46と言う新規採用はありうるのか。
 そこで東京都の平成25年度東京都公立学校教員採用候補者選考実施要綱を見てみる。一般選考は、条件が「昭和48年4月2日以降に出生し…」となっている。2012年度実施の試験で、1973年生まれまで受けられるわけだから、「39歳まで可能」ということになる。自分の時代に比べてずいぶん高齢まで可能となっている。
 しかも、それに加えて「特例選考」があるのである。東京で非常勤講師などを経験したもの、東京以外の国公立学校の教員を3年以上経験したものなどについては、なんと「昭和28年4月2日以降に出生し…」という資格になっている。ほんとか。60歳定年だっていうのに、59歳まで受験できるのか。
 この「特例選考」のなかに「社会人経験者」と言う項目もある。民間企業や官公庁勤務経験者は、免許があれば59歳まで受けられたのである。(なお、当然のことだが、今年実施の試験では昭和29年4月2日以降となっている。インターネットで5月9日まで願書を受け付けている。)
 なお、今年の試験を僕自身も受験可能である。免許更新講習を受けさえすればだが。(「過去に、東京都公立学校の正規任用教員として、受験する校種等・教科(科目等)で3年以上の勤務経験があり、平成25年3月31日現在、東京都公立学校の正規任用教員として在職していない者(平成25年3月31日付けの退職者は該当しません。)」と言う項目に該当する。)
 いやあ、ビックリした。こういう特例選考があったとは。これでは「46歳」があっても、何の不思議もない。
 昔の教員、他県の教員かもしれないが、社会人枠で受けた人で、今まで民間企業等で活躍してきたという可能性もある。「ペーパー・ティーチャー」になった人は一杯いるものである。
 採用試験が高倍率だったり、給与水準が低いのを嫌ったり、合格発表が遅く民間企業に先に決まったり、福祉や学芸員の資格も取っていてそちらが第一希望だったりと言った様々な理由がある。
 でも自分の子どもが学校に通う時期になって、特に高校の英語、情報、商業、工業などの教科では、民間で活躍したスキルがすぐに生かせる場合も多いから、あらためて教師を希望すると言う人もいるだろう。
 ところで、教員免許更新制は何のために作られたか。文科省がタテマエで言うことを引用すれば以下の理由になる。
 「教員免許更新制は、その時々で教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身に付けることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目指すものです。」
 「定期的に最新の知識技能を身に付ける」というのは、明らかにすでに教員になっていることを想定して言っている。その目的自体がおかしいが、それはさておき、このようにすでに教員となっているものが、「自信と誇り」を持つために「最新の知識技能」を身に付けよ(何でもいいからどこかの大学で30時間の講義を聞くことで)と言う制度である。
 一方、ペーパーティーチャ―はどうすればいいのか。文科省のサイトの「現在教員として勤務していない教員免許状所持者の方々へ」にはこうある。
 問1.
  現在、教員免許状を持っていますが教職には就いていません。平成21年4月から教員免許更新制が実施された場合、教員免許状はどのようになるのでしょうか。
 答1.
  既に教員免許状を持っている方(平成21年3月31日までに教員免許状を授与された方)で教職に就かれていない場合には、平成21年4月に教員免許更新制が実施された以後も、免許状更新講習を受講・修了しなくても免許状は失効しません
 ペーパーティーチャーは受けなくても失効しないのである。もちろん教員に就くときには年齢が来ていたら講習が必要と他の項目で書いてある。
 でも採用試験時に失効していないんだから、もし採用されたらその時に、または次の45歳や55歳の時に講習を受ければいいんだと思っても、何の不思議もない
 試験に合格しても、実際に学校に採用されるかどうかは判らない。実際に採用されるかどうかわからないのに、どうして教員免許更新講習を受けなければいけないのか。
 これらの人がどういう経歴の人かは知らない。でも「採用」とある以上は、仮に他の学校で経験があったとしても、少なくとも東京では初の教員体験である。初任者である以上、これらの教員にまず必要なのは「初任者研修」のはずである
 初任者研修がある人が、同時に免許更新講習を受ける必要があるのか。
 更新講習は、すでに10年、20年と教員を長くやってる人を対象にしているはずである。
 今回の事例ほど、教員免許更新制というものの馬鹿げた性格を浮き彫りにした事例はないだろう。
 教員に採用されてこれから頑張ろうと言う人が、免許そのものが失効してるから採用取り消しというのは、全く意味がない制度である。正教員としては一度も使わなかった免許が、ようやく生かせるという時に失効していたというのは、全く制度設計がおかしい
 もしこの更新制が必要だと言うなら、採用された年に受ければいいと言う特例を設ける必要がある
 もともと意味不明の、教師と言う職業をバカにするだけの制度だけど、さすがにここまでのケースが起こるとは、僕も考えが及ばなかった。改めて全く意味がない制度だという思意を強くする次第である。
『尾形修一の教員免許更新制反対日記』(2013年04月27日)
http://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/59473cb2a47d087ba652289e981d5564
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