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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

教員として「戦争をする国」には手を貸したくない

2015年03月22日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 ◆ 「君が代」強制は、生徒から教師を奪う (週刊金曜日)
平舘英明(ひらたてひであき・ジャーナリスト)

 ◆ 「10・23通達」ファシズム
 「戦争は学校のなかからはじまる。教員がその認識を持っていないと戦前の教育の繰り返しになる。わたしは、絶対(戦争する国には)手を貸したくない
 こう語るのは、東京都立高校教師の井上玲子さん(仮名・50代)である。とても控えめな印象を与える井上さんだが、「君が代」斉唱時に起立しなかったとして、これまで2回の戒告処分を受けている。加えて、現在は東京都教育委員会(都教委)を相手に処分取り消しを求める裁判の原告でもある。
 東京都は、石原慎太郎都知事の誕生(1999年)以降、「破壊的教育改革」によって激変した。その象徴が「10・23通達」だ。
 都教委は03年10月23日、「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」(10・23通達)を都立学校長に発出。校長の職務命令によって、教師が「日の丸」に向かって起立し、「君が代」を斉唱することを義務づけた
 10・23通達の直後、井上さんの学校の創立記念式典では、「君が代」斉唱がはじまると、都教委から派遣された職員らが会場を監視して回った。不起立を現認された同僚3人が、犯罪者のように取り囲まれて問い質された。その光景はファシズム(全体主義)そのものであり、井上さんは恐怖を感じた。
 しかし井上さんは「10・23通達に従えない」との思いを強くし、04年の入学式で不起立をして戒告処分となった。
 その後は卒・入学式から排除され、担任も外された。担任を希望しても、校長からは「起立斉唱を約束しないと任せられない」と拒否された。
 担任が持てたのは10年後の13年度。井上さんは、その入学式でも不起立をして再び戒告処分を受ける。
 都教委は、不起立の教師に対し、そのたびに処分を重くする累積加重処分を行なってきた。だが、12年に最高裁が減給以上の処分を「違法」と断じたため、都教委は処分を受けた教師への「服務事故再発防止研修」を強化した。
 研修センターでは都教委の職員の物々しい監視のもとで、同一の研修内容を何度も繰り返し実施される
 教師の「思想・良心の自由」「信教の自由」を剥奪して、「反省」を強要するのは、個人の尊厳を根底から否定するものだ。再発防止研修を受けた井上さんは、担当職員から「あなたのようなまじめで熱心な教員が、なぜこんなこと(不起立)をするのか」と問われた。
 あるとき、井上さんが「『君が代』斉唱のたびに『立て』と言われるのが精神的苦痛だ」と答えると、職員は「(起立するのが)苦痛と感じるのなら、あなたの考え方を変えてもらわなければならない」本音を口にした。
 まさに、研修という名のの「思想改造」と言える。戦前の特高警察が果たした思想弾圧と本質的に同じである。
 10・23通達以降、職務命令違反で処分された教師は現在のべ463人に達する。今もってファシズムは続いているのだ。
 ◆ 教え子を戦場に送らない
 井上さんが教師になったのは1988年。当時の都立高校は自由な雰囲気にあふれていた。教師間に上下の差はなく、授業も自分の裁量でできた。職員会議では「日の丸・君が代」に反対する議論が闊達に行なわれていた。
 ところが、石原教育改革で都立高校の現場は一変する。

 「人事評価制度」や「主幹制度」が導入され、職階制による上意下達のシステムが押しつけられた。職員会議では挙手や採決が禁止され、教師の意見は反映されなくなった。
 閉塞感や無力感、息苦しさの一方で、強権的支配への迎合も広がりつつある。都立高校では10・23通達後に採用された教師が多数を占めるようになった。若い教師のなかには通達の存在すら知らず、「上司」の命令にはひたすら従う姿が当たり前になった。
 教育内容への介入も強まった。都教委は12年、実教出版「高校日本史A」の「(『日の丸・君が代が』)一部の自治体で公務員への強制の動きがある」との記述が「都教委の考え方とは異なる」との理由から、実教教科書を使用しないよう圧力をかけた。
 また、14年には都内中学校で「日本海」と「東海」を併記した地図が使用されたことを受けて、「我が国の見解と異なる内容」としてこの教材を不適切とした。
 さらに、『朝日新聞』が発行した「知る沖縄戦」の使用状況に関する調査も行なっている。「知る沖縄戦」は、井上さんの高校でも沖縄の修学旅行の事前学習に使用した。そうした学習効果もあって、生徒たちは元ひめゆり学徒隊の話に真剣に耳を傾けるなど充実した修学旅行となった。だが、使用教材への過剰な介入は教師を萎縮させる。「この教材を使って大丈夫か」と常に考えて、自主規制する教師が増えれば、戦争の事実に触れることもできなくなる。
 安倍政権によって戦争の影が急速に迫るなか、井上さんは10・23通達が出たときの不安が現実になろうとしているのを実感している。
 「日の丸・君が代」の強制は思考停止の教師をつくり、その先には国策に従順な子ども(少国民)の育成がある。戦争で犠牲になるのは若者だ。だからこそ、井上さんは「生徒には間違っていることには勇気を持って『間違っている』と言える人になってもらいたい。真実を見極める力や批判力を身につけてもらいたい」と語る。
 そんな井上さんのクラスの生徒たちも裁判の行方に関心を寄せる。
 「先生、昨日(記者会見で)テレビに出ていたよね」と声をかけられることもある。井上さんが「裁判をやってよかった」と思えるのは、「日の丸・君が代」の強制に抵抗している教師がいることを生徒に伝えることができたことだ。
 「ひとりの人間がやれることは限られているし、自分が今やれることは『君が代』裁判を通してみんなに訴えていくこと。この国をいい方向に変えていけるように、その一助になればいいと思う」井上玲子さんの言葉である。
 「日の丸・君が代」は慣習や儀礼、ルールやマナーなどの問題に矮小化してはならない。「君が代」裁判は、「戦争する国」に抗う、歴史に刻む闘いなのだ。
 (注)大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に閲する条
例。


『週刊金曜日』(2015/3/13 1031号)

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