《横浜の歴史教科書採択》
◇ 政経塾出身者は「つくる会」お好き?
横浜市教育委員会は4日、「新しい歴史教科書をつくる会」(藤岡信勝会長)の会員らが執筆した中学歴史教科書(自由社)を市内8区で使うことを決めた。辞職表明した中田宏市長の「置き土産」説も浮上している。「つくる会」教科書は東京都杉並区でも使われているが、同区の山田宏区長も中田市長も松下政経塾出身。政経塾出身者は「つくる会」がお好き?(関口克己、秦淳哉)
◇ 市長 置き土産説も
同市では、市全域一括ではなく区ごとに使う教科書を決める。四年ぶりの審議で、候補とされたのは自由社版を含む七社の歴史教科書。市内十八区の各区ごとに六人の教育委員が無記名投票を行い、過半数の委員が自由社版を推した八区で同社版の採択が決まった。
ただ、このシステムはも不透明だ。というのも、投票は市の教科書取扱審議会がまとめた教職員の意向などを参考にするが、教職員の側で人気が皆無だった緑区と金沢区で、なぜか採択が決められたからだ。
もう一つ、気になるのは教育委員の選び方だ。元市総務局長の今田忠彦委員(現・委員長)はただ一人、四年前に「つくる会」教科書を推したが、不採択に。その後、今田氏を除く五人全員が交代した。
委員は行政側が選び、市議会に諮る。ある市教委関係者は「中田市長の意向を尊重した人事だ」と語る。このため、市長の「置き土産」説がにわかに浮上した。
「つくる会」は、これまでの歴史教科書を「自虐的」と批判する学者らで構成する。例えば、自由社版では、太平洋戦争の項目で「日本は米英に宣戦布告し、この戦争は『自存自衛』のための戦争であると宣言した」などと記載されている。
市民団体「子どもと教科書全国ネット21」の俵義文事務局長は自由社版を「戦争美化・正当化の色が濃い」と懸念。「つくる会」教科書の採択率は全国で0・4%(二〇〇五年九月)だったが、政令市初のこの採択で1%超になるため「インパクトは大きい」と話す。
◇ 4年前同窓区長の杉並で採択
ところで、中田市長は松下政経塾の出身。四年前に「つくる会」教科書を採択した東京都杉並区の山田宏区長も同窓だ。同塾出身の国会議員(衆院解散時)は三十人。集団的自衛権行使に積極的な前原誠司・民主党副代表、靖国神社参拝に熱心な高市早苗・元沖縄北方担当相などがいる。
中田市長も自らのホームページに「(戦後日本は)たった一度の敗戦により、先人たちから受け継いだ素晴らしい財産を捨て去ってしまいました」と”自虐批判”を記す。衆院議員時代の〇一年には「つくる会」を支援する超党派国会議員の会の発足に加わった。
政経塾には「つくる会」に通じるタカ派傾向が顕著なのか。
「松下政経塾とは何か」の著書があるジャーナリストの出井康博氏は「中田氏は山田区長の後追いをしたにすぎない」と否定的だ。「国会議員から首長への転身も、住民基本台帳ネットワーク反対の姿勢も、そして今回も後追いばかり。政経塾出身者は政治家になる手段に塾を使っている人が多い。むしろ、思想信条がない点に危うさを感じる」
一方、ノンフィクション作家の斎藤貴男さんは「政経塾はグローバルビジネス、つまり、新自由主義を信奉する。その強引な展開には、国家のパワーや軍事力が不可欠な現実もあり、その辺りが「つくる会」の国家信奉と相通じるのでは」と分析。今回の採択にも疑問を投げかけている。
『東京新聞』(2009/8/6【ニュースの追跡】)
◇ 政経塾出身者は「つくる会」お好き?
横浜市教育委員会は4日、「新しい歴史教科書をつくる会」(藤岡信勝会長)の会員らが執筆した中学歴史教科書(自由社)を市内8区で使うことを決めた。辞職表明した中田宏市長の「置き土産」説も浮上している。「つくる会」教科書は東京都杉並区でも使われているが、同区の山田宏区長も中田市長も松下政経塾出身。政経塾出身者は「つくる会」がお好き?(関口克己、秦淳哉)
◇ 市長 置き土産説も
同市では、市全域一括ではなく区ごとに使う教科書を決める。四年ぶりの審議で、候補とされたのは自由社版を含む七社の歴史教科書。市内十八区の各区ごとに六人の教育委員が無記名投票を行い、過半数の委員が自由社版を推した八区で同社版の採択が決まった。
ただ、このシステムはも不透明だ。というのも、投票は市の教科書取扱審議会がまとめた教職員の意向などを参考にするが、教職員の側で人気が皆無だった緑区と金沢区で、なぜか採択が決められたからだ。
もう一つ、気になるのは教育委員の選び方だ。元市総務局長の今田忠彦委員(現・委員長)はただ一人、四年前に「つくる会」教科書を推したが、不採択に。その後、今田氏を除く五人全員が交代した。
委員は行政側が選び、市議会に諮る。ある市教委関係者は「中田市長の意向を尊重した人事だ」と語る。このため、市長の「置き土産」説がにわかに浮上した。
「つくる会」は、これまでの歴史教科書を「自虐的」と批判する学者らで構成する。例えば、自由社版では、太平洋戦争の項目で「日本は米英に宣戦布告し、この戦争は『自存自衛』のための戦争であると宣言した」などと記載されている。
市民団体「子どもと教科書全国ネット21」の俵義文事務局長は自由社版を「戦争美化・正当化の色が濃い」と懸念。「つくる会」教科書の採択率は全国で0・4%(二〇〇五年九月)だったが、政令市初のこの採択で1%超になるため「インパクトは大きい」と話す。
◇ 4年前同窓区長の杉並で採択
ところで、中田市長は松下政経塾の出身。四年前に「つくる会」教科書を採択した東京都杉並区の山田宏区長も同窓だ。同塾出身の国会議員(衆院解散時)は三十人。集団的自衛権行使に積極的な前原誠司・民主党副代表、靖国神社参拝に熱心な高市早苗・元沖縄北方担当相などがいる。
中田市長も自らのホームページに「(戦後日本は)たった一度の敗戦により、先人たちから受け継いだ素晴らしい財産を捨て去ってしまいました」と”自虐批判”を記す。衆院議員時代の〇一年には「つくる会」を支援する超党派国会議員の会の発足に加わった。
政経塾には「つくる会」に通じるタカ派傾向が顕著なのか。
「松下政経塾とは何か」の著書があるジャーナリストの出井康博氏は「中田氏は山田区長の後追いをしたにすぎない」と否定的だ。「国会議員から首長への転身も、住民基本台帳ネットワーク反対の姿勢も、そして今回も後追いばかり。政経塾出身者は政治家になる手段に塾を使っている人が多い。むしろ、思想信条がない点に危うさを感じる」
一方、ノンフィクション作家の斎藤貴男さんは「政経塾はグローバルビジネス、つまり、新自由主義を信奉する。その強引な展開には、国家のパワーや軍事力が不可欠な現実もあり、その辺りが「つくる会」の国家信奉と相通じるのでは」と分析。今回の採択にも疑問を投げかけている。
『東京新聞』(2009/8/6【ニュースの追跡】)
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